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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 塔のあれこれ(その13)

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(3)ドラゴンの長

 ルカと一緒に北西の塔へと向かおうとした考助だったが、その途中でミアに捕まった。
「ハクのところに行くのですか?」
「うん、そうだけれど?」
「一緒に連れて行って!」
 ハクが管理している北西の塔は、ドラゴンが多く生息する塔として、既にメンバーたちに危険地帯とされている。
 いくら考助の眷属とはいえ、他の者たちになにか危害を加えないとは言えない。
 勿論、考助が一緒に行って襲っては駄目だと教えられれば、襲う事はない。
 だが、特に北西の塔は、眷属の入れ替えが激しく行われているので、常に考助の仲間だと教えられるわけではない。
 そうした事情により、ミアが考助の同伴なしに出入りすることは禁止されている。
 ほぼドラゴンだけで運営されている北西の塔は、ミアにとって塔を管理するうえでとても参考になるため、チャンスがあればいつかは行きたいと考えていたのである。

 こうしてミアとミカゲを加えた一同は、転移門を使って北西の塔へと向かった。
 アマミヤの塔の管理層にある転移門から北西の塔へと繋がっている転移門は、北西の塔の第二十層へつながっている。
 本来他の塔の階層には転移門を設置することは出来ないが、同じ管理長に管理されている場合は例外となり、転移門を設置することができるようになっている。
 転移門から出て来た考助たちを、一体のドラゴンが出迎えた。
 ただし、出迎えたといっても考助たちが来るのが分かっていたわけではなく、もともと転移門を見張っているドラゴンだ。
 いわゆる一般的なドラゴンと同じ姿形をしているそのドラゴンは、転移門から現れた考助たちを発見するなり威嚇をしようとしてきた。
 だが、すぐに考助の姿に気が付いて、頭を下げて来た。
『これはコウスケ様。何かありましたか?』
 ドラゴンは言葉を話すことが出来ないが、こうして念話のようなものを利用して会話を行う事ができる。
 ちなみに、他のスキル持ちの眷属と同じように、考助の言葉は普通に理解することが可能だ。
「いいや。特に何かあったわけじゃないよ。単にハクに会いに来ただけ。後はついでに塔の様子を見に来た」
『なるほど、そうでしたか。ハク様へ連絡は?』
「出来ればしておいてもらえると助かるかな」
『かしこまりました』
 ドラゴンたちは種族の固有能力で、お互いに意思の疎通ができる念話のようなものを使うことができる。
 それは、階層を越えて利用できるため、塔の中の連絡手段としては最適な方法だった。
 勿論、その方法を使えるのは、一定の知能と能力があるドラゴンに限ってのことなのだが、いま目の前にいるドラゴンは問題なく使用できる。
 ハクが来るまで考助たちは、取りあえずこの階層にあるドラゴンたちの里を訪ねることになった。

 ドラゴンたちの里は、ヒューマンのように建物が建っているわけではない。
 里には子供たちを守れるように、他のモンスターが侵入してこないよう大きめの結界が張られている。
 あるのはそれくらいで、あとは野ざらしの中で生活するのがほとんどである。
 場合によっては、地下ダンジョンよろしく穴を掘って生活する者もいるが、全てのドラゴンがそういうことをしているわけではない。
 むしろ、そうしたドラゴンは少数派といえる。
 そんな大小さまざまなドラゴンに囲まれていた考助たちだったが、すぐに周りにいたドラゴンたちが畏まるような態度を取り始めた。
 勿論人のように跪いているわけではないのだが、何となく雰囲気が変わったのが分かる。
 考助は既に何度も体験しているので何が起こっているのか分かったが、初体験のミアたちはキョトンとした顔になった。
 だがその表情もやがて驚愕へと変わっていった。
 考助たちが来た方角とは別のところから、一体の巨大な白竜が現れたのだ。
 その白竜は、それまで考助たちの周囲にいたどのドラゴンよりも圧倒的な存在感を放っている。
 他のドラゴンたちに畏まられるその姿は、生物の頂点に立つといわれている竜そのものだった。
 その白竜は、悠然と空を飛んで里に近づいてきて、考助たちの目の前でその巨体を地面へと下すのであった。

「わざわざごめんね、ハク」
 ルカたちが唖然とする中、考助がそう呼びかけると、白竜は一瞬でその姿を人のものへと変えた。
 ちなみに、ワンリたち狐と違って、人型に変化したあともどういう理屈なのか服はきちんと着ている。
「いいけれど、何かあった?」
「いいや。単にルカがハクに会いたがったのと、ミアが塔の様子を見たいって言ったから来たんだ」
「ルカが? ・・・・・・そう」
 考助は、そっけなくそう言ったハクの白磁のような白い肌が、ほんのりと赤くなったのを見逃さなかった。
 もっともその変化に気付けたのは、考助とミツキだけで、他の者たちは気付けていなかった。

 考助とミツキの視線に気が付いたハクは、誤魔化すようにミアに視線を向けて何かを言おうとして、別の存在に阻まれることとなった。
 ルカである。
「すっごいや! あれが、ハクの竜のときの姿なんだ!」
「えっ!? あ、うん。そうだけれど・・・・・・?」
 ルカの勢いに戸惑いつつも、ハクはコクリと頷いた。
 管理層にいるときは、そもそも竜に変化できるほどのスペースがないため、ハクは人の姿でいる。
 そのため、ルカもミアも今までハクが竜の姿になったところを見たことが無かったのだ。
「ね、ね。もう一回ちゃんと見せて! ・・・・・・ダメ?」
「い、いや。別にいいけれど・・・・・・」
 ルカの勢いに思わず了承してしまったハクだったが、ハッとした様子でニヤニヤしている考助たちを見た。
 その考助たちの視線から逃げ出すように、ハクは少し離れた場所に移動して再び竜の姿になった。

 感激したようにハクの周りをグルグルと回っているルカを見ながら、ミアは楽しそうな顔になっていた。
「なんというか・・・・・・微笑ましいですね」
「ミア。他人事のように言っているけれど、本当はミアもあっち側にいないといけない年齢だと思うんだけれど?」
 考助の珍しい突込みに、ミアはついと視線をそらした。
「キ、キノセイデスヨ。そ、それに、私にはミカゲがいますし」
「それは、何の答えにもなっていなからね。それに、聞いた話だと、ミカゲには既に相手がいるらしいぞ?」
「えっ!? き、聞いていませんよ!?」
 考助からの思わぬ情報に、ミアは驚いた表情になってミカゲを見た。
 そのミカゲは、表情を変えずに小首を傾げる。
「・・・・・・言っていませんでしたか?」
「言っていませんよ! あー、なんだか裏切られた気分!」
 そんなことを喚くミアだったが、そもそも今の彼女の年齢は別に行き遅れとかそういった感じの歳ではない。
 あくまでもそれをネタに、相手を探すように言われるのを防いでいるだけだ。
 もっともそんなミアの思惑は周囲にバレているので、ほとんど意味がない。

 ハクの姿をじっくり観察したルカは、満足気な表情で考助のところへと戻って来た。
「満足できた?」
「うん! すっごい綺麗だった!」
「そうか。あれを見て綺麗だという感想が出てくるか」
 考助もルカと同じ意見なのだが、そもそも普通の人間であれば恐怖の方が先に来てしまって、そんな感想は持てない。
 不思議そうな顔をして首を傾げるルカを見た考助は、視線を人の姿へと戻ったハクへと移して、
「ルカが、竜の姿のハクはとっても綺麗だったってさ。良かったね」
「ありがとう」
 ほとんど表情が変わらないように見えるハクだが、考助にはお礼を言う前に一瞬だけ照れたような表情になったのを見逃さなかった。

 その後は、ハクと一緒に各階層を見て回り、ミアが妙にテンションを上げていたのが印象深かった考助なのであった。
というわけで、久しぶりのミア回でした。
ちなみに、別にミアはツンはしていないので、俗にいう○○○○ではありません。タブン。
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