挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 塔のあれこれ(その13)

676/1174

(1)種族の違い

 スミット王国での仕事を終えたピーチは、管理層に戻ってすぐ皆に懐妊の報告をした。
 まだ確定ではないが、ほぼ間違いないだろうと里で確認した上でのことだった。
 コレットはエルフの里にいるのでその場にはいなかったが、他の者たちは盛大にピーチを祝福していた。
 そんな中で考助がシュレインへと視線を向けると、何故か意味ありげな表情になった。
「コウスケ。吾が一番最後になったことを気にしているとか考えておらんか?」
「う、え? い、いや、そんなことはないけれど?」
 唐突なその言葉に、幸助は若干驚きながら答えた。
 そんな考助を見て、シュレインは小さく首を傾げた。
「そうかの? まあ、それならそれでいいんじゃがの。その顔はどう見ても気にしているように見えるぞ?」
「うえっ!?」
 そんなつもりは全くなかった考助は、思わず右手で口元を押えた。
「嘘じゃ」
 慌てた様子を見せた考助を見ながらシュレインは、笑いながら続けた。
「せっかくじゃから言っておくが、そもそもヴァンパイアは、ヒューマンのように子を残すということにはおいてはさほど重きを置いていないからの」
「そうなの?」
「うむ。そもそも吾らは性行為だけに限らず眷属を増やす方法があるからの。さらに自身が長寿というのも大きいかの」
 本来、子供を作るというのには、自らの家族を増やすという意味合いがある。
 吸血行為によって眷属を増やすことができるヴァンパイアは、本来の生物にあるはずの性行為によって一族を増やすという感覚が少ないのだ。
「あれ? てことはシュレインは?」
「ああ、吾はちゃんと(?)両親から生まれてきておる」
 シュレインはミツキに召喚された存在ではあるが、元はきちんと男性と女性のヴァンパイアの間に生まれてきていた。
 両親がともにヴァンパイアから生まれた場合は「純血のヴァンパイア」といったりもするが、一部の例外を除いて、ヴァンパイアは血の濃さはあまり重視していない。
 というのも、吸血行為によってできる眷属との間に生まれる子供が、時に両親よりも強い力を持って生まれてくることもあるためだ。
 他の種族の血を吸うヴァンパイアが、種族としての血筋に重きを置いていないというのは矛盾を感じるが、むしろ眷属を作ることによって他の種族の血を取り入れることに進化した種族といえるかもしれない。

 シュレインからその話を聞いた考助は、ふと首を傾げた。
「あれ? でもシュレインも他の人と混じって、子供が産めるように頑張ってなかったっけ?」
 シュレインたちが管理層に来たばかりの頃、考助が現人神という存在になってしまって子供が作れなくなると、彼女たちが色々と奔走していた時期がある。
 シュレインはしっかりその話に乗っかって、色々と調べてたり、実際に子供が産めるように進化できるように努力(?)をしていた。
「それはそうじゃろう? 子供が全く出来ないと分かっているよりも、いつかは出来ると思っていた方が遥かに安心できるからの」
「そんなもんかな?」
「そんなもんじゃよ」
 首を傾げた考助に、シュレインは軽く笑った。

 笑うシュレインを見たまま首を傾げている考助に、フローリアが近寄って来た。
「私には立場というものがあったから早く子をなしたいと考えたが、それが無ければもしかしたらまだ子は作っていなかったかもしれんな」
「そうなの?」
 意外なフローリアの言葉に、考助は少しだけ驚いた顔になった。
「うむ。ハイヒューマンになったせいかどうかは分からんが、ヒューマンの時よりも子が欲しいという欲求は少なくなっていたな」
「ああ、それは私も同じですわ」
 フローリアの話に乗っかるように、シルヴィアまでそんなことを言い出して来た。
「か、勘違いしないでくださいね。そういった行為をしたくはないという事ではないですから」
 顔を赤くしながらそう言ったシルヴィアをみて、笑いながらフローリアが続けた。
「もっとも、こんなことを考えていられるのも、既に子供が出来て大きくなっているからかもしれないがな。今思えばそんな気がする、といった感じだ」
「そうですわね」
「ふーん。何か理由でもあるのかな?」
「あるのかもしれないが、今となってはどうでもいいことだと思わないか?」
 既にフローリアにもシルヴィアにも子供がいる。
 今更理由を調べようにも、無かったことには出来ないのだ。

 フローリアの言葉に考助は頷く仕草を見せていたが、その隣ではシルヴィアが昔を思い出すような顔をしていた。
「もしかしたらあの時は、進化をしたという意識が低くて、ヒューマンだった時の感覚が残っていたかもしれませんね」
「確かに言われてみれば、そうかもしれないな。そもそも私の場合は、女王としての役目でもあったからな」
 フローリアが昔を思い出すような顔になって、シルヴィアに同意した。
「あれ? でも母上、前に私に向かって次の子供をとか言ってませんでしたか?」
「それはそれ、これはこれだ」
 あのときはただ単に、娘との会話の流れで勢いに流されて言っただけだったのだが、フローリアはそんなことはおくびにも出さずに平然とそう答えた。
 もっとも、ミアにはばれているのか、ジト目でそんな母親を見ていたが。

 さらに突込みを入れるべきか悩んでいたミアだったが、ふと思いついたことがあって口を開いた。
「あれ? そうなると、私たちの場合はどうなるのでしょう?」
「それこそ本人でないとそんなことは分からないぞ?」
「と、いうことは、私の結婚に対する意識が低いのは、やっぱり種族のせい・・・・・・」
「いや、それは単にミアが駄目なだけだ」
「ひどっ!」
 その母娘二人の会話に、その場が笑いに包まれた。

 ひとしきり笑ったシルヴィアが、ミアを見ながら言った。
「でも、確かに貴方たちの場合は、色々と特殊だから気になるのであれば、聞いてみますよ?」
 誰に聞くかは言うまでもないだろう。
 そんなシルヴィアに、ミアは首を左右に振った。
「いいえ。いいです。特に切羽詰っているわけではありませんから」
「そう? それならいいけれどね」
 ミアの返答に、シルヴィアも無理強いをするつもりはないのか、あっさりと引き下がった。
 少なくとも恋愛云々でいえば、ミアはともかくトワを見ていれば、問題ないことはわかる。
 下手にその辺を突っ込むと藪蛇になるようなことになりかねないので、ミアは余計な真似はしないと決断するのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 そのあともそれぞれの種族の子供についての考え方を話していたが、突然現れた訪問者によってそれは途切れることとなった。
 その訪問者とは、エルフのシェリルだった。
「コウスケ様! コレットが産気づきました!」
「えっ!? ほ、ほんとに?」
「はい!」
 何とも都合のいいタイミングで産気づいたコレットに、考助は喜んでいいやら驚いていいやら複雑な表情になった。
 ちなみに、考助がエルフの里に行くのは問題ないが、出産が始まっても近づいては駄目だとコレットから厳命されている。
 そのためフローリアやシルヴィアの時と同じように、考助は管理層で落ち着きのない時間を過ごすこととなった。

 シェリルが最初の報告を持ってきてから二十時間ほど経過して、無事に出産を終えたと報告を持って来た。
 コレットは初産だったため、思ったよりも時間がかかったようだった。
 生まれたのは、男の子と女の子の双子とのことだ。
 シェリルからその報告を受けた考助は、早速コレットの様子を見に行った。
 考助が到着した時には、既にコレットも落ち着いていたようで、幸せそうな顔で双子の子供をその両腕に抱いていた。
 それを見ているだけで、考助も幸せな気分になってくる。
 考助にしてみれば、既に六度目の経験となるわけだが、何度経験しても嬉しさがこみあげてくる。
 そんなコレットに、考助は「お疲れ様」と声をかけるのであった。
コレットおめでとう! という回でした。
本来はそちらをメインにするはずだったんですが、何を間違ったか種族による違いを語ってしまいました><
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ