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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 サキュバス

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(18)拠点本部襲撃

「気を付けろ! 矢が飛んでくるぞ!」
「馬鹿野郎! なんで室内なのに、矢が飛んでくるんだよ!」
「知るか! 文句は相手に言え!」
 その状況を一言でいえば、阿鼻叫喚というのが正しいだろう。
 闇ギルド側は、十分に警戒をしていたつもりだったのだろうが、サキュバスたちはあっさりと拠点への侵入していた。
 そして、現在は室内で戦闘が行われている。
 サキュバスたちは、王都では組織員たちを集めて一網打尽にする戦法がとられたのだが、今回はまずは拠点を押えることを優先した。
 王都でのことを考えて一か所に集まらないようにしていたのを逆手に取った形である。
 ただし、人数が少ないとはいっても警戒中だったのは間違いがない。
 それを食い破るようにして、たった五人で攻めてくるとは、まさか誰も思わないだろう。
 というのを計算に入れての襲撃だったので、ピーチたちとしては予定通りだ。
 今回のアマミヤの塔側のサキュバスたちは戦闘の面での実力者ぞろいで、ただのチンピラたちだけでは手におえるはずもない。
 とはいえ、いま襲撃しているのは、仮にも一気に勢力を広げた闇ギルドだ。
 当然だが、手練れも揃っている。
 だからこそ、一気に大人数で囲まれないように狭い空間で戦闘が行えるように状況を整えたのである。
 たとえ強い相手が出て来たとしても、出来るだけ一対一の状況になるように考えてのことだった。

 その頃ピーチはというと、襲撃の様子を少し離れた場所から確認していた。
「うーん。そろそろ頃合いですかね~」
 外から見ているので、中の様子は直接確認できないが時間と表側でどうにか室内に入ろうとしている者たちの様子を見ていれば、何となく状況は分かる。
「動きますか?」
 ピーチの隣で同じように状況を確認していたアイリスが、そう聞いてきた。
 その問いに、ピーチは僅かに首を傾げながら答えた。
「うーん。ここまで状況が整ってしまうと、そうなるでしょうねえ~」
 ピーチらしくのほほんとした雰囲気での言葉だったが、既にアイリスもその雰囲気には騙されないようになっていた。
 王都の拠点襲撃の時にも思っていたが、いざという時のピーチの勘の良さは、ただの『勘』と片づけられない何かがあると。
 ついでにいえば、いま相手の本拠地を襲撃している五人の影たちもアイリスの属する組織の戦闘員をも凌駕するような実力がある。
 アイリスの戦闘能力はさほど高くないために、実力を見誤っている可能性もなくはないが、少なくとも簡単には倒せないということだけは分かる。
 その彼らがほぼ無条件にリーダーと仰いでいるピーチが、どれほどの実力者なのかはアイリスにも分からない。
 王都にある拠点襲撃の時も、結局ピーチは戦闘には参加しなかったためだ。
 もっとも、ピーチの代わりに出たミリーと名乗る女性の実力は嫌というほど知ることが出来たのだが。

 そのミリーも今はピーチの傍に立っている。
 彼女は襲撃そのものには興味がないのか、のんびりと周囲を見回していた。
 ただしそれは普通の人間から見た場合であって、特殊な訓練を受けたアイリスから見れば、周囲を警戒しているのが分かる。
 ミリーの様子を意識の片隅に置きながら、アイリスはピーチの呟きに応えた。
「そうですか。では?」
「はい~。こちらも動きましょうね」
 頷いたピーチは、襲撃が行われている建物から視線を外して、スタスタと目的の場所へと歩き始めた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 目当ての建物の前に着いたピーチたちは、ほどなくして建物の入口から目的の人物が出てくるのを確認した。
「予想通りに動いてくれてありがとうございます~」
 いきなりそう言って来たピーチに、闇ギルドの頭とその周りにいた二人の男は訝し気な表情になった。
 ちなみに、この時のピーチたちは装束を着ているわけではなく、ごく普通の女性が着るような服を着ていた。
 絶世のと形容してもおかしくないピーチやミツキと、その横に並んで歩いていても違和感のないアイリスは、彼らにとってはまさか自分たちの仲間を襲っている襲撃者の仲間とは思わなかったのだ。
「なんだ、お嬢ちゃん。俺らと一緒に付いてきてくれるのか?」
 こんな状況にも関わらず、美女三人を見て男はゲスい笑みを浮かべる。
 それでも周囲の警戒を怠っていないのは、さすがというべきだろう。
 もっとも、ピーチたちのことを見抜けていない時点で、しょせんその程度の頭しかないわけだが。

 流石に頭ともう一人は、自分たちに近づいてくる女性に警戒心を持ったようだった。
「馬鹿野郎! 不用意に近づくな!」
 そう警告が飛んだが、既に遅かった。
「というわけですから、ミリーお願いしますね~」
「はいはい」
 激しい運動(?)を周囲から禁止されているピーチが指示を出して、ミツキはそれに軽く返事を返した。
 それと同時に、ピーチたちに声をかけて来た男がバタリと倒れ込んだ。
「なっ!? き、貴様!?」
「遅いわよ」
 すぐに迎撃態勢を取った二人目の男は、頭が逃亡に連れてくるだけの実力があったようだが、ミツキに敵うはずもなく最初の男と同じように崩れ落ちる。
「ち、畜生! ぐはっ!?」
 その状況を見て真っ先に逃げ出そうとしていた頭は、流石というべきか逃げ足が速いというべきか、さっさと手下を切り捨てて逃げ出す体勢になっていたが、ミツキから逃げられるはずもない。
 あっさりと追い付かれて、足を引っかけられて転ばされていた。

 ピーチは、転んだところをミツキに抑えられてジタバタと足掻いている頭の所に近づいて行く。
「ハイハイ、お疲れさま~。出来ればこのまま大人しくしていただけると嬉しいです。・・・・・・っと、やっぱり無理ですね」
 寝転んでいる頭に合わせてしゃがみ込んだピーチだったが、自由になっている頭の右手が向かって来るのをあっさりと躱した。
「く、くそ!」
「やっぱり無理そうなので、気持ちよく眠ってください」
 ピーチはそれだけを頭に向かって言い、視線をミツキへと向けた。
 その視線の意味を理解したミツキは、さっさと頭の首筋に手刀を落としてあっさりと気絶させた。
 それを確認したピーチは、視線をアイリスへと向けた。
「というわけですが、後はお任せしても大丈夫ですか~?」
「ええ。大丈夫です」
 ピーチの確認に、アイリスは動揺を見せずに頷いた。
 頭を殺すのではなく、出来る限り生け捕りにするのは、当初から予定していたことだ。
 そのための人員は用意してある。
 戦闘では役に立てなくとも、そうした裏方で動ける人材はこの町に来ている。
 あとは、その者たちに輸送を任せて王都まで運べば任務は完了となる。

 運搬要員はすぐにやって来た。
 夜の闇にもかかわらず、三人をしっかりと縛り上げてさっさと背中に乗せてしまった手際は流石といったところだろう。
 もっとも、あまりにもあっさりと三人を倒してしまったピーチたちを、その者たちは驚いて見ていたのでお互い様といえる。
 人の背中に乗せているのは、台車だと音がするためだ。
 全ての人の視線が防げているとは考えていないが、それでも余計な注目を集めるのはなるべく避けたい。
 そういったときは、人の足で歩いた方が遥かにマシなのである。
 見ようによっては、病人を運んでいると思わせることもできる。
 ただし、注意深く見れば、手足が縛られているのはすぐにわかるため、あくまでもその場しのぎの対策でしかない。
 要はこの場を片付けてすぐに離れればいいだけなので、今回のこの方法が取られた。
 こうして、スミット王国内の一部を賑わせたとある闇ギルドの勢力拡大は、拠点本部の襲撃成功で終わることとなった。
 けれどもそれは、あくまで外から見ている者たちの見方であって、この件に関わっていた者たちにとっては、もう少しだけ話が続くのである。
というわけで、頭は囚われの身となりました。
最後に書いたように、もう少しだけ続きます。ちなみに、わざわざ捕らえた理由は単に頭から詳しく情報を得るためですw
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