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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 サキュバス

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(13)定例会議

 クラウン本部で行われている定期会議は、既に予定の内容を終えてまったりとした雰囲気に包まれていた。
 会議と銘打っている以上、きちんとした内容の話もしているのだが、この会議の本来の目的は、幹部クラスの顔合わせと交流という意味合いを多分に含んでいる。
 セントラル大陸以外の大陸にも既に二十以上の支部が出来ているため、こうした交流もかなり重要になっていた。
 大陸が異なっている場合、習慣や常識が違っていることもある。
 基本的にクラウンには共通のルールがあるのだが、それぞれの地域で独自に運営している部分もある。
 クラウンが定めている共通のルールからはみ出さないのであれば、各支部長での裁量で運営が行われているのだ。
 見方によっては支部長の権限がかなり大きいようにも見えるが、当初のセントラル大陸だけで運営していた頃と違い、各大陸にまたがって運営するようになったための措置だった。
 そうした状況で、どのようにクラウンを運営していけばいいのか、それぞれの支部長クラス同士で話すことで解決することがあったりする。
 そのため、各支部長にとっては、この会議はかなり有意義な時間となっているのである。

 各支部長たちが思い思いに話をしているのを見ていたガゼランは、ふと扉付近で騒ぎが起きていることに気が付いた。
 偶々扉近くにいたのがガゼランだけで、他の者たちは気付いていない。
 丁度誰とも話していなかったガゼランは、扉を開けた。
「どうした? 何があった・・・・・・って、コウじゃないか。ここへ顔を出すとは珍しいな」
 扉を警備していた冒険者とやり取りをしていたのが考助であることを確認したガゼランは、視線で冒険者を押えて室内へと考助を招き入れた。
 考助の傍にはコウヒとナナも付いてきている。
「ああ、ガゼランさん。突然すみません」
 他の目があるため、考助も普段とは違ったよそよそしい態度を取っていた。
 集まっているのが支部長以上とはいえ、考助の正体を知っているのはほとんどいないのだ。
「それはいいんだが、どうしたんだ?」
 自分たちのところに視線が集まって来たのを感じつつ、ガゼランはそれを無視して考助へと問いかけた。
 考助がこんなところにわざわざ姿を見せた以上、何かあったのかと思うのは当然のことだ。
「今、私が滞在している所でちょっとした騒ぎが起こっていまして・・・・・・」
「ああ、スミット王国にいるんだろう? 何があった?」
「支部の前で、クラウンメンバー以外の者たちが集まって、騒ぎを起こしています」
 その考助の言葉に、ガゼランは眉を顰めた。
「なんだと?」
 冒険者同士が騒ぎが起こすことなど日常茶飯事とはいえないが、それなりにあることだ。
 わざわざそれだけの理由でこの場に来たわけではないと察したガゼランは、すぐにスミット王国支部の支部長を呼んだ。
「ハイノ! ちょっとこっちへ来てくれ!」

 未だに現役として通じるガゼランの声は良く響く。
 ガゼランに呼ばれたハイノは離れた場所にいたが、すぐに気が付いて駆け寄って来た。
「どうかなさいましたか、部門長」
 ガゼランに呼ばれたハイノは、少しだけ考助に視線を向けて首を傾けたあとに問いかけた。
 ハイノ自身はほとんど戦闘能力は皆無と言って良い。
 そもそもスミット王国の支部は、交易を始めるために作られたので、選ばれた支部長も商人部門よりの人材だった。
 勿論、ハイノが商人寄りといっても支部長を務めている以上、冒険者を取りまとめるだけの器も兼ね揃えている。
「ああ。少しコウの話を聞いて・・・・・・ああ、シュミットも呼んだほうが良いか?」
 考助に視線を向けたガゼランは、思い出したように考助にそう聞いてきた。
 だが、考助は首を左右に振った。
「いえ、必要ないです」
 考助はそう言ってから、ハイノに向かって今スミット王国の支部で起こっていることを話し始めた。

 考助から話を聞いたハイノは、若干顔を青褪めさせていた。
「す、すぐに戻って・・・・・・!」
「まあ、待て」
 ガゼランは、慌てた様子を見せるハイノをとめて、考助へと視線を向けた。
「その顔は他にも言いたいことがあるのだろう?」
「ええ。おふたり共、今スミット国内で起こっていることはご存知ですよね?」
 ガゼランもハイノも、闇ギルドに関する情報は手に入れている。
 その考助の言葉を聞いたガゼランは、眉を顰めた。
「まさか、陽動を疑っているのか?」
 考助がわざわざこの場所に来たのは、今ガゼランが言ったことを考えたからだ。
 もし、闇ギルドの陽動が全くないと確信していれば、ここまで来たりはしなかっただろう。
 冒険者同士のいざこざなど、それくらい頻繁に起きているものだ。
 勿論、今回は騒ぎの内容が内容なので、ある程度クラウンも関与はしないといけないだろうが、それは今の諍いがもっと本格的になってからでも構わない。
 だが、この騒ぎが闇ギルドが関わっていると話は変わってくる。

 ガゼランの問いかけに、考助は首を左右に振った。
「わかりません。ですが、可能性が無いわけではないと思っています」
 その考助の言葉を聞いたガゼランは「うーん」と唸ったあと、ハイノをみた。
「確かに考えられなくはないな。どう思う?」
 話を聞いて顔を青くしていたハイノは、すぐに表情を引き締めて答えた。
「おっしゃる通りだと思います。むしろ、そちらの確率の方が高いでしょう」
「ほう? その根拠は?」
 断言するように言ったハイノに、ガゼランが問いかけた。
「もともと転移門の扱いに関する不満はありましたが、特に闇ギルドの者たちがその傾向が強かったからです」
「なるほどな」
「王国の影たちと敵対している者たちが起こしているのか、それ以外の勢力が起こしているのかは分かりませんが、陽動をされているというのはかなり信憑性があります」
 ハイノはそう言ったあと、ガゼランへと視線を向けてさらに続けた。
「申し訳ありませんが、すぐに支部に戻ります」
「ああ、その方が良いだろうな。他のメンバーには俺から伝えておく。・・・・・・ああ、それから!」
 返事を聞いてすぐに歩き出そうとしたハイノを、ガゼランは呼び止めた。
「何でしょう?」
「いざとなったら、例の機能を使っても構わん」
「・・・・・・畏まりました」
 ガゼランの言葉を聞いて一度息を飲んだハイノだったが、すぐに頷いて部屋を出て行った。

 慌ただしくハイノが出て行くのを見送ったガゼランは、視線を考助へと向けた。
「それで? お前さんはどうする?」
「さて、どうしましょうか。一冒険者としては、依頼もなしにこれ以上の介入は控えた方が良いと思いますが・・・・・・」
 考助がそう言うと、ガゼランはこのやろうという視線を向けた。
「わかったわかった。俺から依頼を出しておくよ。せめて、王国の影たちには話を伝えておいてくれ」
「了解しました」
 ため息をはきながら言ったガゼランを見て、考助はニマリと笑った。
 これで部門長からの直接依頼ということで、大手を振って今回の件に介入することができる。
 先ほどは冗談のように言ったのだが、ただの冒険者として活動している以上は、依頼が無いと自由に動けないことも間違っていない。
 そのためにも、ガゼランからの依頼という建前は、どうしても必要になる。
 ガゼランもそれが分かっているからこそ、あっさり依頼を出すことにしたのだ。
 もっとも、クラウンもここまで組織として大きくなった以上、部門長からの直接の依頼が出ることなどほとんどないことについては、考助もガゼランも考えないのであった。
三人で会話をさせたら思ったよりも長くなってしまいました。
ハイノが騒ぎにどう対処するかは、次話で書きます。
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