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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その12)

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(6)かくれんぼ再び

 執務室で書き物をしていたアスラは、女神たちが部屋の前に来たのを感じて首を上げた。
 彼女たちもその場所がアスラの執務室の前であることは分かっている。
 女性(?)としてのおしとやかさは失っていないが、それでも賑やかなのは抑えきれていないのは分かった。
 アスラが首を上げてすぐに、ドアがノックされた。
「いるわよ。入りなさい」
「はい。失礼します」
 アスラが入るように促すと、ドアを開けて五柱の女神たちが部屋に入って来た。
「どうしたの?」
「い、いえ。少し探し物をしていまして・・・・・・」
 中央にいた女神がアスラと対話していたが、他の女神たちは鋭く部屋の中を見回している。
 場合によっては無礼な態度といわれかねない行為だが、アスラは事情を知っている・・・・・・・・ので、注意をしたりはしなかった。
「探し物? そう。それがここにあると?」
「そう思ったのですが、どうやらいな・・・・・・いえ、無いようですね。失礼いたしました」
 中央の女神がそう言いながら静かに頭を下げると、他の女神たちも同じように頭を下げた。
 そのあとは、静々とした動作で部屋を出て行くと、女神たちは再び騒がしい様子でドアの前を離れて行った。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 女神たちが部屋から出て行って数分経ってから、執務室の天井の一部が少しだけ動いた。
「・・・・・・もう行った?」
「そうね。もう大丈夫でしょう」
 アスラがそう言うと、天井の隙間から顔をのぞかせた考助が、ため息を吐いた。
 それを見たアスラは、クスリと笑った。
「貴方も懲りないわね。皆が集まる場所で、不用意なことを言ったらダメだって何度も経験しているでしょうね」
「うっ! い、いや、その・・・・・・つ、つい?」
 考助がこの場所に身を隠すのは、既に何度も経験している。
 いづれも考助が不用意な発言をして女神たちが追い掛け回すことになったためなので、一番最初のときはともかく今となっては自業自得といえる。
「つい、ね。それで? 今回は何を言ったの?」
「久しぶりに眷属たちを増やすために、新しく階層に眷属を移したことをぽろっと・・・・・・」
 第八十三層に狼と狐を移したあとに、元の階層に減った分の眷属たちを召喚していた。
 その召喚が久しぶりだったので、是非とも加護を、と一人の女神が言ったのがきっかけだった。
 そのあとは、あっという間に周囲を囲まれることになったのである。
 三姉妹の手助けで何とか囲いを抜け出した考助は、すぐにこの天井裏(?)に逃げ込んできた、というわけである。

 相変わらず笑ったままのアスラは、小さく首を振った。
「貴方も相変わらずよね。現人神になったのに、その辺の危機意識は全く成長していないんだから」
「うぐっ・・・・・・!?」
 アスラの容赦ない突込みに、考助は言葉を詰まらせた。
 全く以て反論できない事実である。
 そもそも本人が成長させようという意識が薄いので当然といえば当然なのだが、現人神となった以上、きちんと意識さえすればそうした危機管理能力は成長するはずなのである。
 それが一向に改善の兆しが無いというのは、どう考えても考助の危機意識の薄さとしかいいようがない。
「まあ、それはそれで貴方らしくていいのかしら?」
 小さく首を傾げたアスラは本気でそういったのだが、考助にはお小言のように聞こえた。
 そう聞き取るということは、本人がこのままでは駄目だと意識していることになる。
 そのことを自覚した考助は、ガクリを首を落とした。
「うう・・・・・・。か、改善するように、善処します」
「あら。別に皮肉でもなんでもないのよ?」
「い、いや。それはそれで、少し情けなさすぎるというか・・・・・・」
「そう? それなら別にいいのだけれど。貴方の好きにしたらいいわ」
 そういったアスラは、別に突き放したというわけではない。
 アスラの考助の態度は、考助がこの場所に来てからずっと一貫している。
 それは、今の最後の言葉に現れていた。

「そういえば、ここにいるのってどうして他の女神たちには気づかれないの?」
 先ほども食い入るように女神たちは、この部屋をくまなく探していた。
 だが、天井に注目されることはついぞなかった。
 考助は、その様子をちょっとした隙間からドキドキしながらいつも覗いているが、これまで一度も見つかったことはない。
「どうしても何も、私自身が隠ぺいの細工をしているもの。彼女たちには見つけられないわよ」
「そうなんだ。どうしてわざわざそんなことを?」
 この隠しスペースは、考助が女神たちからの逃げ場所として使う前から存在していた。
 何のために作ってあるのか、考助は以前から不思議だったのだ。
「あら。勿論いろんな物を隠すために決まっているじゃない」
「えっ!? ・・・・・・あ、ほんとだ。いっぱいある」
 基本的に今考助が収まっている場所は、光が届いているわけではないため真っ暗である。
 そのため気づきにくいということもあるのだが、それ以外にもそこに物があると意識させないような術を使ってあるので、言われるまで気づかなかった。
 改めてアスラに言われて周囲を見ると、雑然と物が詰め込まれていることがわかった。

 考助がごそごそと狭いスペースで周囲を見回していると、アスラから注意の言葉が来た。
「見るくらいだったり気づかないうちに触れるくらいならいいけれど、下手に意識して触ろうとしないほうが良いわよ? そこから出したら影響力がありすぎるものばかりだから」
 その言葉に考助は体をビクッとさせた。
 別に触ろうとしていたわけではないが、アスラの言葉に真剣みがあったので、警戒してしまったのだ。
「えーと・・・・・・。影響力って、どの程度の?」
 恐る恐る聞いた考助に、アスラは真面目な顔で答えた。
「暴走したら割と世界がやばいとか?」
「げっ!」
「封印が解けたらやばめのウイルスが蔓延するとか」
「うげっ!?」
「他にもいろいろあるけれど、分かりやすいところでそんな感じかしらね?」
「・・・・・・ゼッタイニ、サワリマセン」
 アスラが本気で言っていることを察した考助は、出来るだけ身を縮めながらガクブルし始めた。
 その雰囲気を察したアスラは、クスリと笑った。
「大丈夫よ。その辺りにあるのは比較的穏やかなのばかりだから。例えに出したものは、もっと奥の方に置かれているわ」
「ソ、ソーデスカ」
 余り安心できないアスラの言葉に、考助は思わず棒読みになって返答をするのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 しばらくしてからアスラの部屋に三姉妹が入って来た。
「あら。もう静まったのかしら?」
 いつもならもう少し時間がかかるのだが、今回はそれよりも早い。
 アスラのその問いかけに、エリスが首を左右に振った。
「いえ。どうも今日は長引きそうなので、早めに報告に来ました」
「そう」
 考助が天井裏でがっくりしている姿を思い浮かべたアスラは、小さく笑ってから頷いた。
 見るとエリスやジャルも同じような顔になっている。
「ここ最近は、同じような騒ぎが無かったからフラストレーションが溜まっているかもしれませんね」
「発散できるいい機会」
 考助にとっては全く安心できないことをジャルがいい、スピカがさらに追撃をした。
「そおねえ。余り溜め込むのも駄目でしょうから丁度いい機会ね。・・・・・・というわけだから考助。もうしばらくそこに隠れててね」
 アスラの無慈悲な言葉を聞いて、考助は諦めたような表情になるしかない。
 その考助の姿を思い浮かべて笑みを浮かべる四人をひどいと思わなくもなかったが、元はといえば自業自得なので何も言えない考助なのであった。
第八十三層に新たに進出したのを喜ばれている、ということを書きたかったのになぜかかくれんぼの話になってしまいました。
ついでに隠れている場所の話も。
この場所については、また後ほど出てくるかも?
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