挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔のあれこれ(その12)

649/1149

(2)久しぶりの作業

 視界一杯に広がる青空を見ながら、考助は悩まし気な声を上げた。
「う~ん・・・・・・」
 その声に反応したように、ピクリとナナの頭が揺れた。
「あ、ごめんごめん。起こしちゃったかな?」
「ク~ン」
 考助が謝りながら右手で背中を撫でてあげると、ナナが「なんでもない」とばかりに返事を返して来た。
 今考助は、ナナを枕にしながら地面をベッドにしながら寝そべっていた。
 ちなみに、考助が枕代わりに頭を乗せていても、ナナは怒るどころか嬉しそうにしている。
 考助が背中を撫で続けていると、ナナは安心したのか、再び頭を地面に付けて昼寝モードに入ったようだった。

 考助が今いるのは第八十一層の拠点の中心辺りだ。
 拠点には他にも狼たちがうろついているが、ナナと考助の邪魔をするものはいない。
 そもそも第八十一層にいる狼たちは白狼か黒狼以上の進化をしている種のため、賢さが高い。
 そのため、考助とナナが寛いでいることがわかっているので、絶対にその邪魔をしに来ることはない。
 代わりに悩む考助に、ミツキが問いかけて来た。
「なにか悩んでいるみたいだけれど、どうしたの?」
「ん~? いや、悩んでいるってほどじゃないんだけれどね」
 考助はそう答えたが、ミツキに変わって今度はコウヒが横になっている考助を覗き込んできた。
「何をお考えですか?」
 ミツキにしてもコウヒにしても、こうして会話をしてくるのは考助が会話を必要としていることがわかっているからだ。
 逆に考助が本気で悩みたいと思っているときは、この二人の場合、絶対に話しかけてこない。
 これは考助が二人と出会ってから今まで、ずっと変わらないことだった。

 二人に促された考助は、先ほどまで何となく考えていたことを話し始めた。
「ん~。狼たちをこの階層に移してからしばらく経つからね。そろそろ別の階層に分けるのもいいかなと思って」
 考助がそう言うと、自分が関係すると理解したのか、ナナがピクリと耳を動かした。
 もっとも枕代わりにしている考助は、ナナのその仕草には気づいていない。
「分けるいうと、拠点を別の階層に増やすのですか?」
「そう。今度は第八十三層辺りに」
 第八十一層に移したばかりの頃はともかく、最近では召喚陣を使って眷属を増やすことはしていない。
 どの階層でも子を産んだり卵を産んだりして、ごく普通に増えて行っているためだ。
 あえて召喚をして急激に増やさなくても十分だったのだ。
 ちなみに、眷属たちが産む子供たちは、ほとんどが同じ種族になって生まれてくるが、中には違った種族で生まれてくる場合もある。
 ちゃんと確認したわけではないが、この辺りはペアの組合わせによって変わるのだろうと、考助は考えている。
 例えば白狼同士の雄雌だと、きちんと白狼が生まれてくるが、白狼と灰色狼との組み合わせだとどちらになるかはランダムだ。
 この辺は血統とも関係するのかもしれない。
 ブリーダーのようにそうした血統を調べてみるのも面白いのかもしれないが、今のところは実行していない。
 成長次第では進化することがあり得る世界の為、わざわざ血統だけで調整する意味がないと考助は考えている。

 考助の言葉に首をミツキは、小さく傾げた。
「別に良いと思うけれど。むしろ今までなぜやっていなかったのかが疑問ね」
「そうですね」
 顔を見合わせて頷き合うコウヒとミツキに、考助は苦笑を返した。
「いや。特に深い意味はないんだけれどね」
「ぶっちゃけると?」
 ミツキの鋭い突込みに、考助も特に隠すことなくのんびりと答えた。
「ナナもワンリも成長しきったみたいだからと放置した結果こうなった」
「放置するのは置いておくとしても、十年以上それで何もしないというのは、さすがというべきかしらね」
 以前の考助であれば、思いついたことは即試していたはずだ。
「ん~。いや、別に現人神になったからというわけじゃなくて、いや、それもあるのかな? まあ、それはともかく、単に子供たちの成長を見ているのが楽しかったから、かな?」
 考助も内心で首を傾げながら答えた。
 現人神になったからといって特に感覚的に大きく変わったという自覚はないのだが、もしかしたら影響があるのかもしれない。
 もっとも、だからといって嫌悪感があるとか、そういったことでは全くない。
 考助が自分で最後に言ったように、頻繁に会えていたわけではないが、シルヴィアとフローリアの子供たちの成長を見ている間に、いつの間にか年月が経っていたというのが一番正しいだろう。

 今はコレットのことがあるが、実際に子供が生まれてくるまでにはもう少しだけ期間がある。
 ついでにいえば、子供が出来たことで何かまた新しいことがしたくなったということもある。
「それで思いついたのが、狼たちの移動というわけですか」
 そういったコウヒの言葉は、いつも通りで特に何かの感情がこもっているわけではなかったが、考助はなぜか心の中で冷汗を流した。
「い、いや別に、コレットの子供と結びつけて考えたわけじゃ・・・・・・」
「考助様、それ以上は墓穴になるので止めた方がいいわ」
「うぐっ・・・・・・!」
 多少の自覚はあった考助は、ミツキの突込みに言葉を詰まらせた。
 二人から生暖かい視線を向けられた考助は、誤魔化すようにして立ち上がった。
「と、とにかく、この階層の狼たちを分けよう!」
「誤魔化したわね」
「主様ですから」
 よくわからない評価をコウヒからもらった考助だったが、聞こえなかったふりをして視線をナナへと向けた。
「よし、ナナ。取りあえず第八十三層へ行ってみるか」
「ウォン!」
 考助が呼びかけると、ナナは勢いよく立ち上がり、早く早く、とばかりに転移門のある方に向かって駆けて行くのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 第八十三層は、先ほどまで考助たちがいた第八十一層と比べて、環境的にはほとんど変わりがない。
 あえて違いを上げるとすれば、出てくるモンスターの種類が違っていることくらいだが、強さはほとんど変わらない。
 その違いに少しは戸惑うこともあるかと思っていたのだが、考助は目の前で繰り広げられる現象を感心して見ていた。
「これは、さすがというべきなのかな?」
「ナナですから」
「これくらいは出来るでしょうね。今のナナなら」
 考助たち三人の目の前で、ナナがモンスターを蹂躙していた。
 三体の大型モンスターに囲まれていたのだが、本来の姿に戻っていたナナは怯むどころか喜び勇んで相手をしていた。
 それぞれの縮尺を小さくすれば、主人の狩を手伝っている飼い犬のように見えなくはないが、いかんせん起こっている規模が違いすぎた。
 少なくともただの狩りで魔法が飛び交うなんてことはないだろう。
「あ~、うん。取りあえず、問題はなさそうだね」
 ナナの戦闘の様子を見ていた考助は、ポツリとそう呟くのであった。

 第八十三層でナナの活躍を見た考助は、早速管理層に戻って狼たちを第八十三層に移す準備をした。
 ただし、準備といっても大層なことをしたわけではない。
 いつものように拠点を作って、神水の泉などを設置したのである。
 その後は、第八十一層に戻って第八十三層に移動させる狼たちを振り分けた。
 勿論、その際にはナナの助言(?)に従っている。
 ナナも流石というべきか、考助がやることはしっかりと理解しているらしく、ナナの次に強い戦力である白狼王や白狼妃を第八十一層に残していた。
 考助としても特に反対する理由もなく、ナナの選んだ狼たちを連れて第八十三層へと移動した。
 今回の分離は特に何か目的があっての事ではなく、単に考助の気まぐれだ。
 そのため、数を減らすような無茶だけはしないようにナナに伝えて、考助たちは管理層へと戻るのであった。
何となく気紛れが発動した考助でした。
特に何か目的があって移したわけではありません。
ちなみに、狐たちは宿の経営に忙しいので、それどころではなかったりしますw
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ