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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 エルフの里

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(12)ラゼクアマミヤの対応

 セウリの森で起こった小さな奇跡は、遠く離れたアマミヤの塔にも噂が届いていた。
 森のすぐ傍にあるセイチュンの街には、クラウンの支部があるため冒険者を通してその噂が伝わったのである。
 あれだけ大規模な魔法陣が、いきなり上空に現れたのだ。
 噂にならないほうがおかしい。
 魔法陣によって結界が強化されたことも合わせて伝えられ、様々な憶測と共にラゼクアマミヤにも流れ込むことになった。
 魔法陣の規模が規模だけに、国家としてもその噂は無視できるものではない。
 結果として、魔法陣を行使したのがエルフなのかどうか、そうじゃない場合は一体誰が行ったのか、官僚たちは右往左往することになった。
 となると当然、その話は国王であるトワの耳にも入ることとなった。
 そして、部下の一人からその話を聞いたトワは、特に表情を変えずに聞いていたが、内心ではため息を吐いていた。
 国王である以上、そうそう簡単に心情を顔に出したりはしないが、それでも一言いいたいことはある。
 なにをやっているんだあの人(父上)は、と。
 もっとも、何か言いたげに自分を見てくる部下に、トワは首を左右に振った。
 言葉にすれば、自分は何も知らないといったところだが、それを見た部下はあからさまにため息を吐いた。
 この部下もトワと同様に、セウリの森で起こった奇跡は、現人神が起こしたのではないかと推測していたのだ。
 というよりも、噂を聞いた官僚たちが右往左往することになったことのほとんどは、現人神が起こしたのではないかという問い合わせの対応の為だった。
 ラゼクアマミヤとしても実際のところは知らないので、「うちは何も知らない」と返すだけなのだが、その量が量だけに混乱する羽目になっている。
 この時点で答えを持っていなかったトワの答えに、報告をしに来たその部下は、肩を落として自分の持ち場へと帰るのであった。

 一方、その報告を受けたトワは、数日たってから管理層を訪ねていた。
「あら、兄上。珍しいですね。何かありましたか?」
 転移門を使うなりミアがそう言ってきて、トワは若干驚きの表情を浮かべた。
「ああ。父上にちょっとした質問があったから来たんだけれど・・・・・・ミアはこんな時間に何処に行くんだい?」
 父上に質問と言ったときに、若干ミアの目が揺らいだのに気付いたトワだったが、それには気づかなかったふりをして問いかけた。
 トワは、既に夕食も終えて、ちょっとした合間に管理層に来ていたので、ミアがこんな時間に何処に行くのかが気になったのだ。
「え、えーと・・・・・」
 視線をうろつかせたミアに、トワはジト目をむける。
「今のうちに言っておけば、父上たちにはしばらく黙っておくからさっさと言いなさい」
「うう・・・・・・。ちょっと、リトルアマミヤまで」
 観念したようにそう白状したミアに、トワはため息を吐いた。
 最近ミアがリトルアマミヤに入りびたりになりすぎて、寝食も忘れて管理を行っているために、管理層にいるメンバー全員からミアにちょっとした制限が加えられていた。
 そのことを知っていたトワは、それでもミアを止めようとはせずに、もう一度ため息を吐いた。
「全く。・・・・・・二時間で戻って来るように」
「えっ!? あ、ありがとうございます、兄様!」
 トワが許可を出すと、ミアは笑顔を浮かべて転移門へと駆けだした。
 それに慌てたようにミカゲが付いて行く。
 その様子を苦笑ながら見送ったトワは、居住スペースへ向かって歩き出した。

 ミアの脱走の事はまだ誰も気が付いていないのか、くつろぎスペースにいた管理者メンバーたちは、まったりとした雰囲気で寛いでいた。
 その中に、父親である考助もいたので、トワはそちらに向かって歩き出した。
「あれ、トワ? 珍しいね。どうかした?」
「はい。父上に質問があって来ました」
「質問?」
 首を傾げた考助に、トワはズバッと聞くことにした。
「はい。セウリの森のことについてです」
「あ、あ~。ええと・・・・・・」
 そう言って視線をうろつかせた考助を見たトワは、自分もそうであるにもかかわらず、似た者父娘おやこだなと変なところで感心していた。
 先ほどの誤魔化そうとしていたミアの仕草とそっくり同じだったのだ。
 さらに加えて、考助は助けを求めるように周囲に視線を彷徨わせたが、誰もが考助と視線を合わせないようにしていた。
 それを確認したトワは、考助に詰め寄った。
「ち・ち・う・え?」
「あ、うーんと、はい。私がやりました」
 別に隠す必要などないはずなのに、なぜか犯罪を白状させられた犯人のように項垂れる考助を見たトワは、内心で面白いと思いながらも厳しい表情は崩さないのであった。

 狼狽える考助に対して厳しい表情を崩さないトワだったが、クツクツという笑い声の後に続いた声に中断させられた。
「トワ。それくらいにしておけ。コウスケの場合、本気にするぞ?」
 そう言ったのはフローリアだった。
 考助は見抜けていなかったが、フローリアはしっかりとトワの演技を見抜いていたのだ。
 トワとしても別に厳しい態度で接するつもりはなかったので、母親の言葉に便乗してすぐに穏やかな表情に戻した。
「すみません。ですが、こうでもしないと父上の場合、逃げたでしょう?」
「違いない」
「うっ・・・・・・」
 その母子おやこの会話に、考助は言葉を詰まらせた。
 まったくもって反論の余地がない事実であった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 そんなやり取りを経たためか、考助はすっかりトワに全ての事情を話していた。
 もっとも、考助としてはやましいことは何もしていないので、最初から隠すつもりはない。
 ただ、少しだけやりすぎたかなという思いがあっただけである。
 そんな考助から全ての話を聞いたトワは、大きくため息を吐いた。
「なんというか・・・・・・父上の場合、なぜこうもやることが大きくなるのでしょうか?」
 呆れたようにそう言ったトワに、フローリアが今度は小さく笑った。
「諦めろ。考助は元々こういう人間だ。それこそ、現人神になる前から」
「そうなのですか?」
「そうでなければ、三柱の神を同時に現世に召喚しようなどとは考えるはずもあるまい?」
 さくっとそう宣ったフローリアに、考助は「うっ」と小さく呻き、トワは大きく頷いた。
「そういえばそうでしたね」
 第五層にある神殿に考助が三大神を召喚した事実は、いまでも第五層内での語り草になっている。
 考助が現人神になるきっかけのひとつなのだから、それも当然といえば当然である。

 頷いているトワに、今度はフローリアが問いかけて来た。
「それで? 魔法陣の仕業がコウスケだとして、其方はどうする?」
「どうもしませんよ。ただ事実を確認したかっただけです。官僚の皆さんには気の毒ですが、しばらく苦労してもらいます」
 肩を竦めてそう答えたトワに、フローリアが興味深げな表情になった。
「ほう? なぜだ?」
「此方から公表しても特に利点はありませんしね。これから先のことを考えれば、むしろ知らないふりをした方がましです」
「なるほどな」
 トワの答えに納得したように、フローリアが頷いた。
 ラゼクアマミヤとしては、何か起こるたびに現人神の仕業かと各方面から問いかけられることは、勘弁してほしい。
 それならいっそのこと、現人神のことは知らぬ存ぜぬで通した方が良い、というのがトワの判断だった。
 トワが話さなければ、少なくとも今回の事に関しては、考助がやったことだと知ることは出来ないのだ。
 エルフの口から考助の仕業だという話が外に漏れる可能性もゼロではないが、現状を考える限りエルフたちが外部の者と接触するのは、限りなくゼロに近い。
 そうしたトワの判断に、フローリアも同意している。
 フローリアが王位についていた時も、似たようなことは何度も起こっていた。
 実際には考助が起こしていない騒ぎまで、問い合わせがあったのだから、その煩わしさはよくわかっていた。

 結局、今回の事件も、表向きには現人神が起こしたかどうか、疑わしいが本当にそうかどうかは分からないとして、噂のみが広がっていくのであった。
考「・・・・・・ところで、ミアは?(話題逸らし)」
ト「・・・・・・(あ、やばい)」
考「うーん。トワはなにか知ってそうだね」
ト「・・・・・・(なんで、こういう時だけ鋭いのかな!?)」
フ「ミアの居場所など考えなくともわかっているだろう?」
考「そうなんだけれどね」
ト「・・・・・・(ミア、早く帰ってきておくれ~)」
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