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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 エルフの里

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(11)素材集め

 小さな奇跡が起こったエルフの里では、考助を讃える声がより大きくなっていた。
 既に過去にあった微妙な雰囲気など、影をひそめてしまっている。
 見方によっては、ひどい掌返しとも言えなくはないが、悪い方に向かっているわけではないのであえて止めるつもりはない。
 さらに、考助としては過去のことはどうこういうつもりはない。
 それはあくまでコレットの問題だからだ。
 塔にあるエルフの里との交流があるので、変に悪い関係が続くよりもいいことだろうと考えていた。
 ただし、少しばかり過熱気味になっているのが気になるが、そこは里の運営の問題なので、考助は口を出すつもりはなかった。

 そんな里の状況はさておき、シオマラと他数名に対してとある講義が行われていた。
 講師は、考助ではなくシュレインだった。
 既に考助はアマミヤの塔の管理層へと戻っているが、どうしてもと懇願されたためシュレインが残ることになったのである。
 魔法陣に関しては、実は考助の次に理解が深いのがシュレインだったりするので、そう言う意味では適任なのだ。
 今回考助が作った魔法陣を維持するためには、長い間の保守が必要となる。
 実際に魔法陣に手を入れるのは、世界樹の麓まで足を運べるシオマラが行うのだが、そのために必要な材料は里のエルフたちが里の外に出て素材を集める必要があるのだ。
 そのための説明でもある。
 そして、シュレインやシオマラからその概要を聞いたエルフたちは、若干冷や汗を流していた。

「ほ、本当にこれだけのものが必要なのですか?」
 手元にある紙に書かれた内容を見て、ひとりのエルフがそう聞いてきた。
 その表情は明らかにやばいという文字が書いてある。
 予想以上に森から採取する必要があるものが多いために、焦りを覚えているのだ。
 それは、言葉を発したエルフだけではなく、他のエルフたちも同じような顔になっていた。
 その様子を見たシオマラが、ちらりと視線をシュレインへと向けた。
 自分が説明するよりも、考助により近い位置にいると認識されているシュレインが説明したほうが良いと考えたのだ。

 シオマラからの視線を受けたシュレインは、一つ頷いてから言葉を発した。
「そこに書かれている量は、年に一度に必要となる分になるの。其方らエルフにとっては、さほど難しい量ではあるまい?」
 確かにシュレインの言う通り、二・三人のエルフで一年中採取をしていれば、採れない量ではない。
 人員的にも負担としてはさほど大きいというわけではないのだが、問題なのは、採るように指定されている素材だった。
「た、確かにその通りだが、これらのものを結界の維持に回すと、他に必要なものが・・・・・・」
「その必要なものというのが、なにかはわからんが、森の結界の維持と比較してどちらが大事か、という話になるの。ちなみに、魔法陣の維持には、一度でも欠けると意味がなくるからの。まあその辺は其方らにも分かるであろうが」
 考助が森の結界の為に作った魔法陣ではなく、ごく普通の魔法陣の場合でも維持をしていくには、頻繁にメンテナンスが必要になる。
 逆にそこから考えれば、一年に一度で済んでいる今回の魔法陣があり得ないほどなのだ。
 ちなみに、メンテナンスをサボって一度魔法陣の質が落ちてしまうと、元の状態に戻すのは不可能である。
 それをする位なら最初から作り直した方がいい、というのが魔法陣の性質だった。
「・・・・・・」
「どちらを選ぶのかは其方ら次第だが、こんなことは吾が言わなくともわかっているかの」
 苦悩しているエルフたちを見ながら、シュレインは他人事のようにそう言った。

 そんなエルフたちに混じって紙を見ていたロマナが首を傾げながら聞いていた。
「逆にお聞きしたいのだが、本当のこれだけの材料で、あれほどの魔法陣の維持が出来るのですかな?」
 里にいるほとんどのエルフを驚愕させたほどの魔法陣だ。
 想像するだけで莫大なコストがかかっていることは分かる。
 ロマナには、今手元にある資料にある材料だけでは、どう考えても足りないように思えた。
 その思いは、他のエルフたちも同じだったようで、ほとんど全員がシュレインへと視線を向けて来た。
「その辺は心配いらぬ。其方らにとっては違うのかもしれないが、そもそもコウスケはこちら方面の神だからの。本当に信じられないことをやってのけるよ」
 シュレインはそう言いながら、先日浮かび上がった魔法陣を思いだしていた。
 あの魔法陣は、あらゆる要素が詰まっていながら、最小限のコストで済むように考えられたものだった。
 考助は、そうした魔法陣の数々を何気なく作っているが、普通であれば思いつかないような発想で創られている。
 シュレイン自身も多少魔法陣に関しては自信があるが、とてもではないが考助には足元にも及ばないと思っていた。
 ただし、他人から見ればシュレインもまた才気にあふれるといわれるほどの実力があるのだが、この場合は比べる相手が悪すぎると言うべきだろう。

 そのシュレインの言葉を聞いたロマナは、ため息を吐きながら周囲を見回した。
「毎年ここに書かれている素材は確保すること。これは里としての決定だ」
「しかし、長! それでは秘薬が・・・・・・」
 一人のエルフの言葉に、ロマナは首を左右に振った。
「確かに秘薬も我らにとっては大切だが、それよりもはるかに結界の維持の方が大事だ。それこそ比べるような物でもあるまい」
 そのロマナの言葉に、半数以上のエルフが呻きながらも同意するように頷いた。
 そして、残りのエルフたちも渋々という感じでそれに続いた。
 結局、その場に集まったエルフ全員が、結界の維持のためには仕方ないという結論に達したのである。

「時に、これらの素材を集めた後は、巫女殿が加工を行うのですかな?」
 そのロマナの問いかけに、シュレインとシオマラが顔を見合わせてお互いに苦笑した。
「最初はその予定でしたけれどね。どうにも私が不安で、しばらくコウスケ様かシュレイン様にこちらに来てもらうことにしてもらいました」
「薬草の調合が得意なエルフであれば、失敗するとは思えんのだがの」
 苦笑したシオマラに対して、シュレインが肩を竦めた。
 貴重な素材を使っているとはいえ、そもそも森で取れる素材の扱いに関しては、エルフは非常に長けている。
 勿論、エルフの上位種族であるハイエルフもまた、同じなのだ。
 というよりも、ハイエルフであるシオマラの方が遥かに技術的には上だったりする。
 そのことを知っているエルフたちは、どういう反応していいのか分からずに、微妙な表情になっていた。
「そういうわけだから、加工の方はあまり心配しないでくださいね」
 微妙な空気になったことを察したシオマラが、強引な感じでそう言ってその場を締めるのであった。

 部屋にいたエルフたちが去り、その場にシュレインとシオマラ、ロマナが残った。
 そして、他のエルフがいなくなったとほぼ同時に、ロマナがシュレインへと頭を下げた。
「申し訳ありません。折角あそこまで尽力していただいたのに、あのようなことで揉めてしまうとは・・・・・・」
「ああ、何。気にする必要はない。それぞれの種族で大事にしているものがあることくらい、吾も考助も理解しておるからの」
 平謝りといった態度になったロマナに、シュレインはひらひらと手を振った。
 ヴァンパイアにもそういった大切な物はあるので、わざわざ謝られることではないと考えているのだ。
「それに、それぞれどう思っているかはともかく、最終的には魔法陣の維持の方を選んだからの」
 考助にしてもシュレインにしても、エルフたちが例え魔法陣の維持を選ばなくてもそれはそれで構わなかった。
 それはあくまでもエルフたちの問題だからだ。
 エルフたちがきちんと魔法陣を維持していくことを選んだからには、きちんとサポートしていくつもりだ。
 そういう意味では、この場に集まったエルフたちは、最善の結果を選んだといえるのであった。
必要ないかと思いましたが、何となくまとめっぽい話を書きたかったので入れました。
秘薬に関してはエルフたちにとっては重要なアイテムの一つです。
ただ、絶対に必要なものというわけでもないので、魔法陣の維持の方を選んだ、ということになります。
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