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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 エルフの里

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(10)奇跡の目撃者

 最近セウリの森に入っている冒険者は、数パーティで組んで探索を行っている。
 冒険者が森の奥まで入り込んでいくことにより、エルフの警告が厳しくなってきたため、万が一に備えてのことだ。
 そこまでして森に入らなければならないのか、ということは考えていない。
 セウリの森がエルフのものであるという事は、勝手に彼らが主張していることだ、というのが周辺国の見解なのだ。
 当然、森で素材が取れるようになるのであれば、取りに行くべきだというのが基本的な考え方なのである。
 森に住んでいるエルフたちに配慮して森への侵入を止めるなんてことは、周辺国にいる誰も考えていないだろう。
 そしてそれがごく当たり前の考え方なのだ。
 ただし、エルフたちの生活圏に入って行っているのは紛れもない事実のため、防衛のために数に頼るというのが冒険者としての対応だった。
 さらにいえば、最近の冒険者の活動で、ある程度のまとまった数で森に入れることが確認出来たため、いずれはどこかの軍が動くだろうという噂もあった。
 真偽のほどはまだわかっていないが、エルフはどこかで妥協せざるを得ないだろうというのが、周辺地域の見方である。
 まさか、裏では着々と各国の思惑を覆すような事態が進んでいるとも知らず、今日もまた冒険者はセウリの森に入るのであった。

 最初にそれ(・・)に気付いたのは、魔法を扱える者たちだった。
 今回森の中に入っていた冒険者の中には、魔法使いといえるほど魔法を専門にしている者はいなかったが、併用して魔法を使える者はいた。
 そうした者たちが突然立ち止まって、森の奥の方を注視した。
「おい? どうしたんだ?」
 突然のその行為に、仲間が不振がるが魔法を使える者たちはそれどころではなかった。
「ば、馬鹿な・・・・・・。一体どれほどの・・・・・・?」
「あ、ありえん」
 口々に、ありえないと呟く者たちをみて、流石に他の者たちも何か異常事態が発生したのだと理解した。
 さらにいえば、つい先ほどまでいつもならうるさいほどエルフが姿を見せるはずなのに、今日は全く来ないという会話をしていたばかりだった。
 エルフたちが何かを仕掛けて来たと考えるのが当然の流れだろう。
「おい。呆然としていないで、何が起こっているか早く話せ! どうすればいいのか、対処が出来ないだろうが!」
 集団の取りまとめ役が、慌ててそう怒鳴る。
 その声に反応して、一人が森の様子を話始めた。
「あ、ああ。森の奥であり得ない程の魔力が動いているんだ」
「なんだそりゃ? もっと具体的に言え!」
「そんなのわかるかよ! それに、何が起こっているかは、もうすぐ・・・・・・」
 説明をしていた者は、わかるはず、と続けようとしたが、そこまでいう事は無かった。
 その言葉通りに、目て見て分かるほどの変化が森の中心部で起こったのである。

 まずは、一人の冒険者がその異変に気が付いた。
「お、おい。何だよ、あれは!?」
 その場にいた全員が、その冒険者の指さした方向を見て、ほぼ同時にあり得ない物を見たような表情になる。
 彼らの視線の先には、見たこともないような巨木がその姿を現していたのだ。
 距離から考えてもあり得ない程の太さの幹は、上空に浮かぶ雲さえ越えてなおさらに上に伸びている。
 見るだけで圧倒されるその姿は、だれもがただの一本の樹だとは考えないだろう。
「・・・・・・・・・・・・まさか、世界樹・・・・・・?」
 誰がそう呟いたのかは分からない。
 だが、その言葉が冒険者たちの間に広がると同時に、間違いなく目の前にある巨木が世界樹であると理解させられた。
 そのものを見たことはなくとも言葉は知っている。
 それがこの世界における世界樹のあり方だった。
 それが、今実際に目の前にその姿を見せているのだ。

 誰もが世界樹の姿に圧倒されている中、また別の者が他の異変に気が付いた。
「おい。あっち見てみろよ!」
 その言葉に、集団の視線が別のほうへと向き、そのばかげた光景に全員が絶句することとなった。
「な、何だよ、あれは!?」
 思わずついて出た言葉だろうが、全員が同じ気持ちだったのだろう。
 誰からも反論が起きず、更には世界樹を見た衝撃さえ吹き飛んでしまった。
 そこには、ばかげたほどの巨大な魔法陣が浮かび上がっていた。
 すぐ横にある世界樹にさえ負けていない程の大きさだった。
 通常魔法陣というのは、大きくなればなるほど魔力を使うものになる。
 勿論、中に描かれている文様の緻密さでも影響はあるのだが、大体はその考え方で間違っていない。
 そこから考えれば、いま彼らの目の前にある魔法陣にどれほどの莫大な力が使われているのかがわかる。
 もしこの場に専門職としている魔法使いがいれば、余りの事態に卒倒していたかもしれない。
 幸いにして、この場には魔法を専門とする者がいなかったため、驚愕するという事だけで済んでいた。
 だが、それと目の前で起こっている事態とはまた別問題だ。
「お、おい。これ、やばくねーか?」
 そう呟いたのは誰だったのか、そんなことはその場にいる全員が気にしている暇はなかった。
「おい! 急いでこの場を離脱! 森の出口まで戻るぞ!」
「戻るって、間に合うのかよ?!」
「知るか! 文句を言っている暇があるなら、さっさと走れ!!」
 そこからは、もはや目の前の異常な現象をまともに見ていることもできなかった。
 冒険者たちは、ただただひたすら足を前に動かすだけに集中していた。
 ただ、結局努力もむなしく、彼らは魔法陣の力に巻き込まれることになる。
 とはいえ、なにか重大な魔法に攻撃されるといったわけではなく、単に森の外に勝手に放り出されることになる。
 一生懸命走っていたと思ったら、いきなり目の前の光景が森の外のものになったのだから、彼らは面を食らう事になった。
 結局、この日同時刻に森に入っていた冒険者たちは、皆が同じような経験をすることになるのである。

 その現象は森から離れた町や村でも確認することが出来た。
 突然現れた世界樹に驚き、その後に現れた魔法陣にさらに驚き、そして世界樹を包み込むように放たれた光に人々の目が奪われた。
 魔法の素養が全くないあるいはほとんどない者にとってはそれはとても神秘的なものであり、目が奪われる光景であった。
 現象が起こっているのは遥か遠くにもかかわらず、世界樹の姿とその周りをまとわりつくような光の乱舞は、たとえようがないほど美しかった。
 一部魔法使いたちが、卒倒するような表情を見せていたが、多くの者たちは、その光景にしばらく酔いしれていたのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「なに・・・・・・!?」
 その報告に、主は眉をひそめて報告者を見た。
 主が理解したくなかったのか、それとも理解できなかったのかはわからなかったが、報告者は同じ報告を繰り返えした。
「先日起こった現象により、それまであったほころびが完全に無くなりました。一応、打開に向けて動いていますが、今のところは全く目途が立っていません」
「馬鹿な・・・・・・」
 聞き間違いではなかったその報告に、主はしばらく絶句した。
 これで今まで行ってきたことの全てが無駄になったということになる。
 セウリの森全体を覆うほどの結界だ。
 そうそう簡単に手は打てないだろうと、たとえ打てても部分的な対処に留まるだろうと考えていたその打算は、ものの見事に崩れてしまった。
 だれが、たった一度の現象で、これまでの状況をひっくり返すような事態になると予想できるだろう。
 森の周辺にある街や村では、セウリの奇跡として讃えられているが、主にとっては奇跡どころか悪魔の一手にも思えた。
「そうか。わかった・・・・・・。取りあえず、調査は続けるように」
「かしこまりました」
 主の言葉に報告者は一礼をして部屋を出て行く。
 そしてそのあと、主は握った拳を机に叩き付けるのだが、その音を聞いた者は誰もないのであった。
冒険者&主から見た奇跡でした。
コレットの妊娠に付いて書くつもりが、メインがいつの間にか移ってしまいました。
まあ、いつかは書かなきゃなと思っていたので、これはこれで良しとします。
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