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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 エルフの里

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(8)加速

 森の中で作業を終えて里に帰って来た考助は、いつもと違った騒めきに首を傾げた。
「なんだろうね?」
「さあの? いつものとは違っているから、何かあったのかもしれんの」
 シュレインが言った「いつもの」というのは、考助を讃えての騒めきのことだ。
 だが、今の里の喧騒はそれとは違うという印象を受ける。
 首を傾げながらも歩を進めて行くと、シオマラの屋敷へと着いた。
 ここで森の中を案内するエルフとはお別れだった。
 そして、屋敷の中に入った考助たちは、里の騒めきの原因をロマナから聞くことになった。

「冒険者が?」
 考助は、食事をつまみながらロマナへと視線を向けた。
「はい。ここ数日、森へと侵入してくる者が増えているようです」
「なるほどねえ」
 ユッタの結界が緩んでいる隙をついてきて、そこから穴を拡大していくだろうということは予想はしていたのだが、流石にここまで早いとは予想していなかった考助である。
「いや、そもそもあの事件から結構経っているから、組織立って動いているとすれば、むしろ遅い方かな?」
「以前の話では、軍が動いているということではなかったかの?」
 シュレインもこの里で以前に起こったことは、考助たちから聞いている。
 もし軍が動いているのであれば、国主導で話が進んでいてもおかしくはない。
 ただ、それにしては動きが遅すぎる。
「どうかなあ? 軍が正式に動いているのであれば、ちゃんと軍人が来そうな気がするけれど?」
 確認するように考助がロマナへと視線を向けたが、意味を察したロマナは首を左右に振った。
「いえ。巡回をしている者たちの話では、正規の軍の装いのような物ではなかったと言っております。あとは、警告を発するだけですんなり引いたのも、軍にしてはおかしいと」
「それは確かにおかしいの」
 国を背負っている軍人であれば、たかがエルフ数人の警告で引くようなことはしない。
 ましてや森の奥まで入り込めると分かっていれば、なおさらだろう。
 だが、少なくともここ数日の動きでは、巡回のエルフたちが警告を発するだけで、見つかった者たちは引いていた。
 もしそれが軍人であれば考えられないが、冒険者であれば命を大切にして引くこともあるだろう。
 警告されるまでに、素材などの採取が出来ていればなおさらだ。
「たまたま道を見つけて素材を採取に来たのか、あるいは何か目的をもってきているのか。何とも不穏な感じだね」
「そうだの。こういう時のコウスケの勘はよく当たるから、気を付けておいた方がよいぞ?」
 シュレインのその言葉に、ロマナは神妙に頷き、考助は苦笑をするだけにとどめた。
 既に、否定しようにも否定できないだけの経験を積んできているので、考助としても認めざるを得ないのであった。

 森に侵入してきている者たちはともかくとして、考助としては里の反応の方も気になっているので、そのことも聞いた。
「里が騒がしかったのは、侵入者が来るようになったから? なんかそれとは微妙に視線が違ってた気がするんだけれど?」
「ああ、それですか。それは恐らく、ここ数日コウスケ様がやっていらっしゃることと関係しているかと思います」
「へ?」
 意味が分からず考助が首を傾げたが、その微妙ないいようで何かを察したシュレインが、ロマナへと視線を向けた。
「ふむ。加速したかの?」
「まず間違いなく」
「それはまた難儀なことよの」
 ロマナの答えに、シュレインが真顔で頷いた。
 その回答は、考助のことを思ってのことだ。
 何ともいえないシュレインの表情を見て、考助は不穏な空気を感じた。
「どういう事?」
「相変わらず妙な所で鋭いの。まあ、鈍いのも変わっていないが」
「うっ。そ、それは良いから、教えてよ」
 考助の様子を見てひとしきり笑ってから、シュレインは現状の里の様子を話した。
「よいか? 元々、コウスケとコレットが来たことで、この里は盛り上がっておった」
「・・・・・・だね」
「そんな中で、結界の不意を突いて森に侵入してくる者が出て来た。結界はエルフたちが崇める世界樹が創っているにもかかわらず、だ」
 そこまでシュレインが話をした段階で、考助にも彼女が何を言いたいのか分かって来た。
「あ~・・・・・・うん。何となくわかって来たけれど、続けて」
「そうか? エルフたちにとっては、衝撃的な所にダメージを受けているところに、実はコウスケがその対策を取るために動き出しているという話がでると、さてどうなるかの?」
 楽し気な表情で見て来たシュレインに対して、考助は大きくため息を吐いた。
 考助がちらりと見ると、ロマナは大きく頷いた。
「シュレイン殿のおっしゃる通りですな」
「やっぱりか」
 ロマナの答えに、右手を顔に当ててしばらく身もだえていた考助だったが、やがてため息を吐いて諦めてような顔になった。
「まあ、それはもういいや。とにかく、過信だけはさせないように気を付けてね」
 世界樹の結界でもそうだったが、行き過ぎた信仰は下手をすれば里自体が危なくなってしまう。
 もし、考助が事前に対応を取ろうとしていなければ、エルフたちはパニック状態になっていた可能性もある。
 今回の件で、身に染みてそのことが理解できているロマナは、考助の言葉に重々しく頷くのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 森に侵入してきている者がいると分かっていても、考助がやることは変わらない。
 もし変わったことがあったとすれば、若干作業をするペースが速くなったということくらいだろう。
 だからといって手を抜くわけではない。
 里の外に出てする作業は、森全体を覆うための魔法陣の準備もあるのだが、基本的には森の中から素材を採取するのが主になっている。
 あくまでも森にある結界は、ユッタが張っているものがメインになっていて、今回考助が作るのはあくまでも補助になる。
 更に、考助の作る結界は、どうしても維持するために素材が必要になるので、エルフたちが採取できる森の中で材料を集めなければならない。
 そうした理由から、セウリの森での採取を行っているというわけだ。
 結界の魔法陣の補修のたびに考助が里に来れるとは限らないので、ある程度の知識を持つ者に補修は任せるつもりなのである。
 もっとも、その知識を持つ者というのはシオマラだ。
 そのシオマラは、現在ユッタの指導の下、必死に考助が作ろうとしている結界の魔法陣の勉学に励んでいる。
 魔法陣を作ろうとしている場所が世界樹の麓になるので、立ち入れるのがシオマラしかいないというのが大きな理由だった。

 考助たちが里の外に出て作業をするのは一週間ほどで終わったが、その後はシオマラに結界について教えることに時間を費やした。
 その間、当然のように森の外から冒険者が来ていたが、あくまでも争いをするつもりはないのか、エルフたちの警告だけで引いていたようである。
 ただそれは時間の問題という感じで、冒険者も次第に森の奥まで立ち入ってくるようになっていた。
 その分エルフたちが殺気立って行くため、いつ暴発してもおかしくはない状態にまで来ていた。
 もっとも、エルフたちは、裏で考助が動いていることを知っているため、冒険者に挑発されてもこちらから手を出すことはしていない。
 ただし、冒険者もそれを見越しているのか、連日のエルフの警告にもかかわらず、更に森の奥へと侵入してくるというのを繰り返していた。
 一応エルフたちも、手を出さない限界のラインというのを決めていて、いよいよ冒険者がそのラインを超えるかどうか、といったところで、遂に考助はセウリの森の結界を補強するための魔法陣を完成させるのであった。
いろんな意味で加速しましたw
考助も状況を読んで、なるべく早く完成させようとした結果がこれです。
ちなみに、考助にしてみれば時間がかかったように感じるかもしれませんが、森の中に色々と魔法陣の為の種をまいたりするのに時間がかかっております。
元々ユッタが張っている結界を補強するためのものですしね。
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