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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 エルフの里

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(5)歓迎

 考助は目の前で起こっている光景を見て、頬を引き攣らせた。
「・・・・・・過去に囚われて現状を変えられないとか言ってたのは、いったい何だったんだろうね」
「ハハハハハ」
 流石のコレットもあまりの事に、エルフをフォローすることはできなかった。
 二人の傍ではシュレインが首を傾げているが、これは無理もない。
 以前に二人が里を訪ねた時の会話は、シュレインは聞いていないのだ。
 だからこそ、今彼らの目の前で起こっていることと、考助とコレットの会話の意味が結びつかないないのだ。
 もっとも、コレットの過去の事は既に本人から聞いているので、ある程度の予想はついている。
「取りあえず、今目の前で起こっていることを受け入れることから始めてはどうかの?」
 シュレインはそう言いながら、視線を前方へと向けた。

 セウリの森の里を訪ねて来た考助たちは、今多くのエルフたちに迎え入れられていた。
 それも、少なくとも見える範囲では、熱狂的に考助たちを受け入れている。
 以前訪問した時とは、段違いの対応だった。
「何と言うか・・・・・・ここまで違っていると、あっさり手のひらを返して、とかも思わなくなるんだね」
 人の波をかき分けて案内された屋敷の一室で、考助はぐったりとした表情になっていた。
「私もここまでとは予想していなかったわ」
 考助たちの姿を見たエルフたちは、口々に歓迎する言葉を発していた。
 さらに言えば、中には考助とコレットを熱烈に信仰している者の姿も確認できた。
 第五層の街や他の街では現人神として見つからないように行動していた考助だったが、まさかエルフの里でこのような扱いを受けるとは思ってもいなかった。
「それほどまでに、エルフたちは子供を待ち望んでいたということだろうの」
 人々の熱狂に巻き込まれなかったシュレインは、一人涼しい顔で冷静に意見を述べていた。

 そんな考助とコレットの様子を見ながら苦笑していたロマナが、シュレインの言葉に頷いた。
「そうです。長い間続いていた里の閉塞感が、一気に吹き飛びましたから」
「なるほどの。今まであった価値観が、一気に吹き飛ばされた感じかの?」
「そうでしょうね」
 過去から引き継いだ風習や慣習は、それだけで否定出来るものではない。
 ただ、それにとらわれ過ぎるのもいけないということにようやく気が付いた、とロマナが続けた。
「だからといって、それらを完全に捨て去るのも駄目だと思うけれど?」
 二人の会話を聞いていて、ようやく落ち着きを取り戻した考助が、ロマナを見てそういった。
 受け継がれてきた価値観というのは、それだけでも価値がある。
 完全に否定するのではなく、その時々に合わせて変化させるのが重要だと考助は考えている。
 勿論、それは考助の価値観であって、古い物を大切に今まで守って来たエルフとはそぐわない場合だってある。
 何が重要なものなのか、それは個人個人でも違うし、種族としての違いも当然ある。
「勿論です。確かにお二人の前では熱狂的ですが、今のところ急激な変化を望んでいる者は少ないです。ただ、それもいずれ変わっていくのでしょう」
 子供たちが次々に出来た、という意味ではエルフたちは、考助とコレットを受け入れているが、その他の価値観に関してはロマナの指摘通りほとんどのものが今まで通りと変わっていない。
 変化が起こるにしても、ゆっくりとしたものだろうとロマナは考えていた。
 そしてそれは、塔にあるエルフの里でも同じことだった。
 今まで住んでいた場所から塔の中へと移り住んで既に十年以上たつが、子供のことを除けばさほど大きな変化は起きていない。
 もし変わるとしても、それは徐々に時間をかけて変わっていくのだろうと里では考えられていた。
 それは、外から里の変化を見守って来た考助やコレットも同じ考えだった。
 別に考助は、自分の持つ価値観をエルフたちに押し付けるつもりはないのである。

 ロマナが考助たちを里に呼んだのは、エルフたちの認識を見せるためだけではない。
 二組のカップルが妊娠したことの感謝の気持ちを示したかったのだ。
 その日の夜は、里の代表者たちが集まり、歓迎会が開かれた。
 森から採れる食材を元に作られた料理や飲み物は、考助たちの舌を楽しませた。
 エルフらしいといえばエルフらしいのだが、例え酒が入っていてもどんちゃん騒ぎのようなことは起こらなかったが、それでもエルフたちの気持ちは十分に察することが出来た。
 上辺だけではなく、本当の意味で感謝をしているのだという事がよくわかったのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 セウリの森の里にきた考助たちは、一晩里に泊まることになった。
 転移門があるのでそのまま管理層に戻っても良かったのだが、エルフたちに押し切られたのと、シオマラに用があると言われたのだ。
 特別急ぐわけでもないので明日になってから話しますと言われて、シオマラはそのまま宴会の席からいなくなったので、詳しい話はその場では聞けなかったのだ。
 コレットのことがあるので、考助としてはあまり無理はさせたくなかったのだが、コレット自身が「心配ないわよ」と笑われてしまった。
 結局、そのままの勢いで翌日もお世話になることが決定したのである。

 そしてその翌日。
 考助たちは、世界樹のユッタと対面していた。
 場所はシオマラの屋敷だ。
 本来であれば、ユッタはそうそう自由に姿を現したりはしないのだが、名づけの考助がいる場合はその限りではない。
 ただ、流石に今までの歴史(?)もあるため、そうそう簡単に人前に姿を現すにはいかないというわけで、その場所が設定されたのである。
 コレットが身重でなければ世界樹の麓まで足を運んでも良かったのだが、流石にそれは考助とシュレインが止めた。
 「エルフにとっては森の中も平地も変わらないのに」とコレットはいっていたが、そこは考助たちが押し切った。
 最終的にはコレットが折れたため、屋敷での対面となったのである。

 久しぶりに対面したユッタは、一通り挨拶をしてからコレットに視線を向けた。
「コレット、おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
 いきなり妊娠の事をお祝いされて、コレットは慌てて頭を下げた。
 コレットにしてみれば、まさか世界樹本人から個人的なことをお祝いされるとは考えていなかったのである。
 もっともこれはコレットの認識不足でもある。
 コレット自身は、エセナの巫女なので、その彼女が妊娠したことを別の世界樹がお祝いすることは特に不思議なことではなかったりする。
 しかも相手がユッタの名づけである考助なので、ユッタにしてみれば子供が出来たことを祝うのは当然といった感じなのだ。
「・・・・・・その顔は何よ、シオマラ。私だって、お祝いくらいはしますよ?」
「い、いえ。そんなつもりは・・・・・・」
 コレット以上に驚いた表情になっていたシオマラが、ユッタに突っ込まれてそっと視線を外した。
 そんなシオマラをじっと見ていたユッタは、一つため息をはいた。
「そもそも貴方が『私はハイエルフですから』とか言って、子供どころか結婚すらしてこなかったでしょうに。私だって貴方にはお祝い位しましたよ?」
 全然させてくれなかったけれど、とユッタが続けると、シオマラは「ウッ」と詰まったような顔になった。
 二人のそのやり取りを見て、考助たちは口元を押さえて吹き出すのをこらえるのであった。
セウリの森の里での歓迎です。
これでコレットとの関係も改善している・・・・・・というより別の方向に吹っ切れている感じですw
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