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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 エルフの里

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(3)セウリの森の里の現状

 視線を交わしている考助とコレットを見て、ロマナは内心で大きくため息を吐いた。
 過去に、自分も含めた里の者たちが、コレットをどういう扱いをしていたのかは重々承知している。
 先ほど話したことも、あくまでも自分たちの都合でしかない。
 わざわざコレットがそれに付き合う必要はないのである。
 ロマナの本来の予定では、ゆっくりと時間をかけて両者の関係を改善していくつもりだった。
 長い寿命を持つエルフらしく、こうしたことが起こった場合は時間をかけるという手段が取れる。
 急激に変化を望むのではなく、ゆっくり時間をかければまた良い関係が築けるだろうという自信もあった。
 塔の里とセウリの森の里の交流が順調にいっているというのも、その自信の裏付けとなっていた。
 だが、とある事情により、ここひと月ほどで状況が急激に変化した。
 それに加えて、コレットの妊娠の情報がセウリの森の里にも入って来た。
 これに乗らない手はない、とロマナは判断したのである。

 ここは隠しごとしてことを運ぶべきではないと判断したロマナは、今の里の状況を話すことにした。
「お二人のお力添えで、ここの里と私どもの里が繋がり交流が始まったことで、急激な変化が起きました」
「変化?」
「はい。端的に言えば、里で子供が出来たのです」
「はい?」
 何故そんな話をしだしたのか意味が分からず首を傾げる考助に、ロマナは頷きを返した。
「十数年ぶりの子供に、当然里ではその話題で盛り上がりました。ただ、その時はまだ、この里との交流のおかげだとは誰も考えていませんでした」
 ロマナの言葉に、考助はそれはそうだろうと頷く。
 いくらなんでも、転移門で里同士をつなげたくらいで妊娠の確率が上がるなんて都合の良いことが起こるはずもない。
「ところが、その者の妊娠の発覚から一か月も経たずして、別の者の妊娠が発覚したのです」
「えっ!? まさか」
 短く驚きの声を上げたのは、考助の隣で話を聞いていたコレットだった。
 過去の色々あったとはいえ、コレットはその里で生まれ育ったのだ。
 ロマナが話したことのセウリの森の里にとっての異常さは、よくわかっている。

 コレットの驚きを見てから一つ頷いたロマナは、考助に向かって説明を続ける。
「外の方には分かりづらいでしょうが、私どもの里にとっては、はっきり言ってこれは異常事態です。勿論いい意味ですが」
 ロマナの説明によると、セウリの森の里ではここ百年で、一年の間に二人以上の子が生まれることは一度もなかったそうだ。
 ましてやこれほどまでに期間を開けずに妊娠する者が出ることなど、あり得ない事態だった。
 要するに、セウリの森の里でも塔の里と同じようなことが起こったというわけだ。
「当然、妊娠が分かった二組のカップルには、お腹の中の子供に影響が出ない範囲で調査が行われました。その結果分かったのが、二組ともこの里を訪ねてきていたという事だったのです」
 勿論、他の要因が無いか徹底的に調べられたが、他には何も出てこなかった。
 結局、調査に当たった者も、微妙に疑いつつもそれしか考えられないと結論を出すに至ったのだ。
「二つの里を転移門で繋ぐ理由として、子供のことを前面に出していましたが、まさかここまで劇的に変化があるとは思いませんでした」
 ロマナはそんなことを言いながら大きく一つため息を吐いた。
 子供が出来ないという生物としては致命的な欠陥を抱えていて、藁にすがる思いで転移門の設置を決めたのだが、こんな簡単に変化が起こるとは思っていなかった。
 その二組の妊娠が発覚するまでは反対派が声高に転移門の廃止を主張していたのだが、発覚すると同時に一気にその声は小さくなった。
 今では、全くいなくなったというわけではないが、以前に比べると圧倒的に数を減らしてるそうだ。

「ついでに言うと、その反対派にはある共通点がありました」
 そんなことを言って、ロマナはちらりとコレットへと視線を向けた。
 それだけで、ロマナの言いたいことを察したコレットは、ため息を吐いた。
「私に対して色々言っていた人たちなのね?」
「そういうことです」
 コレットの言葉に、ロマナも隠すことなく頷いた。
 ここでむやみに隠しごとをすると、逆に話がこじれてしまう可能性がある。
 今のロマナには、その選択肢はない。
「それから、この里と妊娠の関係についての話が広まるのに加えて、里ではもう一つの噂が同時に広がりました」
「もう一つ?」
「あ~。うん。何となくわかったわ」
 首を傾げた考助に対して、コレットは額に手を当てるポーズを取った。
 ロマナが何を言い出そうとしているのか、それが分かって頭が痛くなったのだ。

 コレットの仕草を見て、考助が訳が分からないという顔になった。
 それを見て、それまで黙って話を聞いていたシルヴィアが、笑いをこらえるような顔になって言った。
「何となく今までの話の流れで、想像はつくでしょう?」
「え? 全然分からないんだけれど?」
「全くもう。・・・・・・こういうアンバランスさが貴方の良い所なのでしょうけれど」
 呆れたように言ったシルヴィアの対して、しっかりとその呟きを聞いたコレットが、ニンマリと悪い笑みを浮かべた。
「シルヴィア、こんな所で堂々と惚気なくても良いと思うよ?」
「えっ? そ、そんなつもりは!」
 シルヴィアとしてはそんなつもりで言ったのではなかったのだが、誰がどう聞いても惚気にしか聞こえない。
 コレットに指摘されてその事実に気付いたシルヴィアは、一気に顔を赤くした。
「子供が二人もいるのに、そういう所は昔と全く変わってないよね、シルヴィアは」
「も、もう! これ以上は勘弁してください!」
 そう言ったシルヴィアの顔を見ながら、コレットはひとしきり笑った。

 コレットにからかわれて顔を赤くしたシルヴィアは、考助を睨みながら言った。
「と、とにかく! セウリの森の里で起こった出来事とここで流れていた噂で結びつくのは、一つしかないですわよね?」
 シルヴィアの視線を受けて、理不尽だよなあ、と内心で思いながらも、考助はようやく何のことかを察して頷いた。
「ああ。さっきまでしていたコレットの神格化の噂だよね」
「はい。そうです。その噂のおかげで、一気にコレットに関する元の噂が、反転しました」
 コレットが里でのけ者にされる原因だったのが、「大いなる変革をもたらす」という占いのせいだった。
 その占いのおかげで実際に関係のない自然災害その他の影響までコレットのせいにされていたのだが、今度はその占いが逆に作用したというわけだ。
「なんというか・・・・・・今更な気もするけれどね」
 呆れたようにそういった考助に対して、コレットが苦笑を返した。
「まあ、占いなんてそんなものでしょう? だからこそピーチだって不用意に言葉にしたりしてないわけだし」
「それもそうだね」
 考助の加護のおかげか、ピーチの占いの能力は飛躍的に上がっている。
 だが、それに比例するようにピーチがそうした占いの結果を直接口にすることは少なくなっていた。
 長年占いを生業にしてきたサキュバスの一族の出身だからこそ、占いがもたらす効果もよくわかっている。
「それに、そもそも私が里を出たからこそ、こうしてコウスケと会う事も出来たわけだし」
 ニコリと笑ってそういったコレットに、思わず考助はどぎまぎしてしまった。
 最近では慣れたおかげで忘れがちになっているが、コレットは十人いれば十人が振り返るほどの美人なのだ。
 特に妊娠が分かってからは、色気も増しているように感じる。
 こうして不意打ちでそんなことを言われると、考助としても穏やかではいられないのであった。
甘々回でした。
こんな話を書くつもりではなかったのですが、何故かシルヴィアが暴走してコレットがそれに拍車をかけてきました。
次こそロマナとの会話を終わらせます。
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