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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 エルフの里

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(1)コレットとの会話

 考助は、リトルアマミヤの塔の管理については、基本的に干渉していない。
 この「基本的に」というのは、考助が直接手を出すことはしていないという意味で、当然ながら間接的にミアに手を貸している。
 一番大きな「貸し」は、考助の眷属の貸し出しだ。
 塔の管理をするという事は、場合によっては階層に出て確認しなければならないこともある。
 低階層程度であれば、ミカゲがいれば何とかなるとしても、中階層以上になると流石にミアを守りながら散策するなど不可能に近くなる。
 そのための、眷属の貸し出しだった。
 リトルアマミヤの塔自体で、眷属が成長させることが出来ればそれも必要なくなると考助は考えている。
 ただ、アマミヤの塔を除く他の六つの塔の状況を考えても上級の眷属を生み出すのは容易にはいかない。
 むしろ、ナナとワンリという眷属を早々に生み出した考助が、異常ともいえる。
 本来は、地道に神力を貯めて、眷属たちを増やしていき、そこから進化するモンスターを生み出していくのだが、大抵は最初の神力を貯める所で躓く。
 さらに、神力を貯めて眷属を召喚できたとしても、そこから先の進化が上手くいくとは限らない。
 そもそも塔を上手く攻略できたとしても、小規模な塔であれば溜まっている神力が少なければ、自由に物を設置できない。
 そういう意味では、最初からかなり自由にアイテムを設置できていたアマミヤの塔は、やはり特別な塔だったというわけなのである。
 ちなみに、ミアが管理することになったリトルアマミヤの塔は、初期に使える神力が外部への転移門を一つ設置できるのがやっとという値だったことからも、その差がわかる。
 リトルアマミヤの塔の管理メニューを見て、ミアが頭を抱えていたのもある意味当然のことだった。
 そんなミアを横目に見ながら考助は、アマミヤの塔とリトルアマミヤの塔をつなぐ転移陣を設置することに成功して、無事にアマミヤの塔へと帰還したのである。

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「へー。それで、ミアはまだ向こうで頑張っているの?」
「うん。流石に食事を摂りに戻ってきているけれどね」
「ああ、そうなのね」
 神力を節約するためにも食材とかを出さないと決めたミアは、設置してある転移陣を使って食事時にはアマミヤの塔へと帰ってきている。
 そのため、わざわざ心配して様子を見に行くような事態は今のところは発生していない。
「熱中すると食事も忘れる癖は、どう考えてもコウスケの血よね」
 気を付けて育てないと、と自分のお腹を撫でながらそういったのは、妊娠が発覚したコレットだった。

 考助は今、エルフの里で静養しているコレットの元を訪ねてきていた。
 制圧戦も落ち着き、コレットの容体(?)も安定しているため、ゆっくりと事のあらましをコレットに話にきたのだ。
 シルヴィアなどは頻繁に顔を見せに来ているのだが、敢えてなのか制圧戦については詳しくは語っていなかった。
 コレット自身が考助の口からきちんと聞きたいといっていたこともある。
 考助としては、リトルアマミヤの塔との接続が終わった時点ですぐにでも顔を見せに来たかったのだが、色々な要因で顔を見せに来ることが出来なかった。
 その要因の一つに、コレットが落ち着くまで駄目、というシルヴィアの有難い言葉もあった。
 そのシルヴィアは、現在エルフの里の助産師の元を訪ねている。
 自身の経験を元に、助産師と話を重ねているのだ。

 塔に里を移すまでは、ほとんど活躍する場が無くなっていたエルフの助産師も最近では忙しくなったと悲鳴を上げている。
 里では一人しかいない助産師だったため、里の中で急激に増えた出産に慌てて対応している状態だった。
 もっとも、今では弟子も出来て技術の継承も上手くいっているようだった。
 本当に妊娠・出産に関しては、エルフの里は限界ギリギリまで来ていたといえるだろう。
 考助やコレットが里の中で救世主(?)と讃えられるのもある意味当然の流れといえるだろう。
 もっとも、コレットはともかく、考助自身はそっちの属性(?)は無いといって、そう呼ばれるのは今でも固辞していた。
 ただし、コレットやシルヴィアは、考助がいつかはその圧力に負けるだろうと予想していたりするのだが。

 考助が見た感じ、今のコレットは落ち着いているように見える。
 シルヴィアが安定していると判断したのもそういう変化があったためだろう。
 以前の時のような負の感情よりも、子供が出来たことによる喜びが全身から出ていた。
 以前は、何か分からない変化が自分自身に起こっていたために、感情が不安定になっていたのかもしれない。
 考助がそんなことを考えながら、ジッとコレットを見ていると、それに気づいたのかクスクスと笑い出した。
「何? どうかした?」
「いや。まさかコレットが先に子供が出来るとは思っていなかったからね。ちょっと喜びをかみしめていた」
 そんなことを言った考助に対して、コレットの表情が陰った。
 何かまずいことを言っただろうかと内心で首を傾げた考助に、コレットはため息を吐いた。
「それ、あまり管理層では言わない方が良いわよ」
 その台詞を聞いた考助は、すぐにコレットが何を言いたいのか察した。
「ああ。勿論、言わないよ。特にピーチにはね」
「分かっているんだったらいいけれど。それにしても、私が一番最後だと思っていたから、ちょっと予定が狂ったわね」
「こればかりは、授かりものだからしょうがないよ」
 コレットが懸念しているのは、シュレインとピーチのことだ。
 まだ二人には妊娠の兆候は出ていない。
 管理層で見ている限りでは、そのことに対して焦っていたり、悲しんでいたりはしていない。
 勿論、普段の会話でも特に変わりなくコレットの妊娠の話を出していたりする。
 少なくとも考助を含めたメンバーが、二人の様子が変わったような兆候は見ていないのだ。
「変に気を使うと、それが逆に作用してしまうかもしれないから難しいわね」
「少なくともシュレインは、種族のせいもあってか、今すぐ子供が欲しいという感じでもないけれどね」
「それは分かるわ。ヴァンパイアはエルフと似たような感覚を持っているのでしょうね」
 考助の言葉に、コレットも同意するように頷いた。
 種族的な性質のせいか、シュレイン自身はいずれは出来るだろうと普段から口にして子供が出来ていないことはほとんど気にしていない様子なのだ。
 問題はもう一人残ったピーチだった。

「ピーチーはなあ・・・・・・それこそ種族的なものなのか、訓練のおかげなのか、本心を隠すのが上手いからなあ」
 考助にとっては、一番感情が読みにくかったりするのが、実はピーチだったりする。
 普段穏やかに浮かべている笑みと雰囲気に隠されて、なかなか本心を読みにくかったりするのである。
 それがサキュバスという種族的なものなのか、それとも裏の仕事を請け負うための訓練を受けて身に付いた物なのか、考助には全く判断がつかない。
「そうねえ。それは私も似たようなものね」
「それに、こっちが変に気を使うとピーチの方が敏感にそれを察知するからね」
 はっきりいえば、考助の感情を読み取るのに一番たけているのが、コウヒとミツキを除けばピーチだったりする。
 考助が変に気を遣えば、ピーチはすぐにそれを察してしまうだろう。
「だから、もうそれに関しては気にしないことにした。というより、気になったらすぐに直接聞くことにしたよ」
「そうね。それが良いかもね」
 変に気を使って隠しごとをしようとすると事態が悪化する可能性があるのなら、いっそのこと直接聞くことにした考助である。
 ただし、一度は頷いたコレットだったが、すぐに考助に釘を刺して来た。
「でも、出来ればコウスケだけで話を進めようとしない方が良いわ」
「ん? どういうこと?」
「誰かが傍にいる状態で、一緒に話した方が良いってこと。まあ、コウヒとミツキが必ずついているでしょうから、あまり心配はいらないでしょうけれど」
「ああ、そういう事か。うん、わかったよ」
 考助も自分自身が、変な所で鋭かったり鈍かったりするのは自覚している。
 こういう微妙な話題は、第三者がいる所で話すべきだというコレットの忠告に、素直に頷くのであった。
新章スタートです。
主にエルフ周りの話になります。
今回は単純にコレットとの会話でした。
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