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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5部 第1章 塔同士の戦い

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(12)推論

※昨日上げた話の中で手打ちの説明をしましたが、一カ所ミスがあったので修正しています。
手打ちは五度目(※昨日は六度目となっていました)の申請を上げると同時にその時点で制圧戦は終了となります。
制圧戦についての重要な事なので、この場で報告いたしました。
それでは本編をどうぞ。
 第四戦を終えた後は、すぐに反省会をするのではなく、先にその他の用事を済ませて夕食を終えた。
 それらすべての作業を終えてからフローリアが、考助に問いかけて来た。
「それで? 相手の動きの秘密が分かったのだろう? やはり氾濫の前兆か?」
「うーん。そうであるとも言えるし、そうでないとも言える、かな?」
 その曖昧な考助の返事に、その場にいた全員が微妙な顔になった。
「どういう事だ?」
「うん。まあ、結論から言うと、恐らくだけど意図的に氾濫のようなものを起こそうとしているのではなくて、結果としてそうなっている、というのが一番近いと思うよ?」
 その考助の言葉に、フローリアが納得した顔になった。
「なるほど。向こうは、自分たちがやっていることが氾濫に繋がるとは分かっていない、というわけだな?」
「というよりも、あの現状は厳密には氾濫とは言えないというのが正しいかな?」
 考助は、そう前置きをしてから、昼間に考えた相手側の動きを話し始めた。

 まずは先手を取って相手のフィールドに攻め込むことによって、モンスターたちの成長を促している。
 これは、普段戦闘することがない相手と戦う事によって成長を刺激すると同時に、多くのモンスターと入り乱れて戦う事により普段よりも多くの経験を積ませる。
 そうすることによって、攻撃に参加した多くのモンスターが進化をすることになる。
 ある意味強引な方法といえるが、そもそもこれは、考助が眷属たちの拠点の傍に召喚陣を置いて成長を促しているのと変わらないのだ。
 付け加えると、制圧戦で強制的に集団での戦いを強いられることにより、グループでまとまって戦う事も覚えることが出来る。
 今まで四戦を行ってきたが、サント・エミンゴ王国側が使っているモンスターのほとんどが、基本的に群れでの戦いを得意としているものばかりということからも、そのことが推測できる。
 まるで氾濫が起こっているかのように相手の動きが統率されたように見えたのは、このことからも推測できる。
 一戦目で勝利出来れば、進化を果たしたモンスターを再度投入することが出来る。
 しかも前の戦いで、集団戦になれたモンスターたちだ。
 その集団戦になれたモンスターたちを、あたかも人間同士の戦争で行っているように、要所要所で投入していけば、立派な戦術が成立する。
 同時に、そのことがリーダー種がモンスターの群れを統率しているように見えた、というわけである。

「・・・・・・と、いうわけなんだけれど、何処か間違っていそうな所はあるかな?」
 一通りの説明を終えた考助は、周囲を見回した。
 考助の説明に納得するような顔を見せたり、疑り深いような顔を見せたりするような物がいる中で、ミアが考助に顔を向けた。
「父上は、相手側が意図してモンスターの進化を起こしている、と考えているのですか?」
「うん、そう。制圧戦をしている間に知ったのか、あるいは最初に制圧戦をして気付いたのが言い伝えとして伝わっているのかは分からないけれどね」
 その考助の予想は、実はどちらも正解だった。
 もともと制圧戦で宣戦布告をすると勝ちやすい、という性質にとある国王が気付いてから、積極的に制圧戦を仕掛けるようになっていた。
 そんなことを繰り返している内に、勝てる理由というのが段々わかって来たというのが正解だ。
「だが、モンスターを使って効率的に運用することなど、出来るのか?」
 フローリアはそんなことを言って首を傾げた。
「何を言っているんだよ。前にフローリア自身が出来ると示したんじゃないか」
「なに!?」
 思ってもみなかったことを言われた、といった顔になったフローリアに、考助がため息をはいた。
「大分前になるけれど、ナナたちを使ってちゃんと指示を出しながら効率的に戦っていたよね?」
 考助にそう言われたフローリアは、「あっ」と呟いてからそういえばというような顔になった。
 確かに以前、そのようなことをしたのを思い出したのである。
「使っているのがきちんと言葉が通じる眷属と、単純な指示しかできないモンスターという違いはあるけれど、やってることは変わらないよ」
 フローリアがナナたちにやったように、細かい指示を出すことは出来ないが、大雑把な運用という事はモンスターを使っても出来る。
 相手の弱っている部分にモンスターの大部隊を突き付けるのは、別に細かい指示がなくともそこにモンスターたちが突っ込むようにすればいいだけなのだ、

 考助の筋が通った説明にほとんどのメンバーが納得して頷く中、シュレインが手を上げて聞いてきた。
「コウスケの説明には納得できるが、一つだけ分からないことがあるんだがの」
「何?」
「制圧戦が宣戦布告した方が勝ちやすいというのは分かるが、必ずしも勝てるとは限らないだろう? 負けた場合はどうするのだ?」
 今回、考助は制圧戦の事を調べるために、わざと負けるという選択肢を取ったのだが、そうではなく、最初から勝つ気になっていれば余裕で勝つことは出来ただろう。
 それは、相手の投入してきているモンスターを見ても分かる。
 ナナたちを始めとして、アマミヤの塔にいる眷属たちは、多少の進化をしたモンスターを揃えたところで蹴散らすことが出来るような戦力が揃っている。
 さらに言えば、そこまで極端ではなくとも勝つのが難しい場合もないわけではない。
 その場合は、折角戦いで進化したモンスターを差し出したフィールドと一緒に奪われかねないのである。
「それは簡単だよ。進化したモンスターをある一定数だけ確保できるように、一部のモンスターを転移門を使って確保しておけばいい」
 モンスターの進化が塔にとって重要だと分かっていれば、一部のフィールドや階層を取られたからといってさほど大騒ぎするほどではない。
 勿論塔の全てを取られればそんなことは言っていられないのだが、そこは制圧戦の特殊なルールが関係している。

 五回の「手打ち」で強制的に終了できることもそうだが、今回サント・エミンゴ王国が使って来た「宣戦布告」もまたその内の一つだ。
 これは今回初めて使われて考助も理解したことなのだが、一度宣戦布告が実行されると、使った側も使われた側も再度「宣戦布告」が出来るのは、実に十年後という厄介なルールがある。
 更にモンスターは、一度進化してしまえば、通常の繁殖で同じ種のモンスターが生まれてくる。
 これは、既に考助たちも眷属の出産で分かっている。
 気の長い話だが、ある程度の進化したモンスターを確保しておけば、繁殖で数を増やすことも不可能ではないのである。
「あくまでも推測でしかないけれどね。長い年月の間、きちんと複数の塔を国として継承して来たことを考えれば、これくらいの事は出来ては不思議ではないかな、と思う」
 考助はそんなことを言いながら、感嘆の表情を浮かべていた。
 明らかに考助とは方向性は違っているが、サント・エミンゴ王国が長い年月をかけて行って来たことは、間違いなく塔を上手く管理していく一つの方法といえるだろう。
 最初の気づきはただの偶然なのかもしれないが、サント・エミンゴ王国は月日をかけてしっかりとその方法を継承して来た。
 それに気付いたからこそ、考助はそんな表情を浮かべているのだ。

 考助が今まではなしたことは、あくまでも推論の上に成り立っているが、話を聞いた者たちは恐らく間違っていないだろうと思っていた。
 現人神としての勘、というのもあるが、それと同時にピーチが同意しているのもある。
 考助の加護を得ている上に、真幻夢魔族となっているピーチは、考助が大きく間違えそうなときに勘を働かせて修正を行う。
 全員が氾濫を疑っていた時に、疑問を投げかけたのもピーチだった。
 そのピーチが今回は何も言ってきていない。
 それだけでも今度の考助の推論を肯定できる材料になる。
 そしてそれは、事実、大筋では間違っていないのであった。
というわけで、考助の推論でした。
証拠を得ているわけではないので、あくまでも推論という形で進めましたが、最後に書いたように、サント・エミンゴ王国がこれまでやってきたこととほとんど外れていません。
長い間塔を支配して来た一族の執念と言って良いかもしれませんね。
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