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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5部 第1章 塔同士の戦い

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(9)第三戦

 妊娠が発覚したコレットは、話し合いの結果、子供が無事に生まれるまでは里に生活基盤を置くこととなった。
 いくら経験者が二人もいるとはいえ、何かあった時に咄嗟の対処が出来るわけではない。
 さらに言えば、エルフと普通のヒューマンでは身体の構造に大きな違いはないはずだが、ヒューマンと同じ方法で子供を取り上げているかも分からない。
 結局、無難な所に落ち着いたというわけだ。
 ただし、エルフたちの間では、既に考助の事は知れ渡っているので、フローリアやシルヴィアの時のように、全く顔を出せないわけではない。
 コレットのいる所に多少は気楽に顔を出せるという事で、考助も安心して送り出した。
 まだシルヴィアたちが戻ってきていないので、急遽ワンリを呼び出してコレットについてもらう事にした。
 ワンリは子供が出来たフローリアとシルヴィアの傍に長年ついていた実績がある。
 考助としても安心して任せられる、という事での人選だった。

「こら、コウスケ。いい加減集中せんか」
 三回目の制圧戦の真っ最中だというのにまったく画面に集中できていない考助に、シュレインからの叱咤が飛んだ。
 すぐに頭を振って画面に集中しようとして考助だったが、どうしてもコレットの事が気になって集中するのは無理そうだった。
「これは駄目だね。全く集中できないや。それに、相手も色々手を打ってきているし」
 画面を見ながら考助はそう言った。
 三戦目になって初級・中級モンスターを混ぜて配置するようになった考助だが、それでも相手の勢いは止まらなかった。
 理由は簡単なことで、相手が戦略的に攻めてくるようになっているからだ。
 相手が使っているモンスターは、眷属ではなくただの召喚モンスターに見えるのだが、見事に統率されたように動いている。
「どうやって指示を出しているんだろう?」
 不思議な気持ちで考助が画面を見つめるが、どう考えても分からない。
 アマミヤの塔は今は防衛側だが、同じようにモンスターは召喚している。
 だが、細かい指示までは出すことは出来ていない。
 そのために、相手側程に上手くモンスターを統率することが出来ないでいた。

 相手の動きを不思議がる考助と同じように、他の者たちも首を傾げていた。
 そんな中、画面を見ていたフローリアがポツリと呟いた。
「もしかすると・・・・・・いや、考え過ぎか」
 首を振りながらそんなことを言っているフローリアに、考助が視線を向ける。
「何? 何か思いついたんだったら、教えて。少しの可能性でもいいから」
 考助の視線を受けたフローリアは、躊躇いながら今一瞬頭に浮かんだことを口にした。
「いや、まさかと思うんだが、意図的に氾濫を起こしたりしていないかと思ったんだが・・・・・・」
 そのフローリアの言葉に、他の者たちは黙り込んだ。
 まさか、という思いと、あり得るかも、という思いが入り混じっている。
 確かにリーダー種が出ている氾濫が起これば、他のモンスターのただの群れに比べれば、圧倒的に有利になる。
 だが、氾濫が起こることの弊害も大きいはずなのだ。

 皆が皆、同じような思いを抱いていると考えた考助は、首を勢いよく左右に振った。
「駄目だね。材料が少なすぎて、特定するのは危なすぎる」
「ああ、そうだな」
 考助の言葉に同意するように、フローリアが頷いた。
 フローリアも、自分で言葉にしたのは良いが、ただの思い付きでしかないというのは十分理解している。
 少なくとも一戦目はここまで統率された動きはしていなかったはずだ。
 たったの二度ほど制圧戦を行っただけでリーダー種が誕生したというのは、非常に考えずらい。

「父上。リーダー種がいそうな場所を拡大してみることは出来ないのですか?」
 そう聞いてきたミアに、考助は難しい顔になった。
「これだけモンスターがいるからね。ある程度目星は付けられるとしても、それが本当にリーダー種かまでは分からないよ」
 近くに行けば左目の力で確認することは出来るが、流石に画面越しではステータスは見ることは出来ない。
 姿形だけでそのモンスターがリーダー種であるかどうかというのは、見分けるのは難しい。
 モンスターの知識が豊富な斥候とかであれば、遠目でも画面越し判別が出来るだろうが、残念ながら考助はそこまでモンスターに詳しいわけではない。
 あるいは、コウヒであれば画面越しでも見分けることが可能かもしれないが、それも近くまで寄らないと無理だろう。
 コウヒのような者たちは、見た目だけではなく空気感で判別している所も大きいのである。
「・・・・・・でもまあ、確かにそれが確認するための一番の近道かな」
 モンスターの群れの中心らしき場所を、一々近寄って確認していく作業を考えると出来ればやりたくはないが、何だかんだでそれが一番の近道のような気がする。
 とはいえ、全体像も確認しておかないといけないので、全部の画面でその作業をするわけにもいかない。
 結局、作業が出来る端末は複数あるので、そのうちのいくつかを確認作業用にして作業を開始することになった。

 一つの端末だけを残して残りの端末で確認作業をしていたのだが、結局その日の制圧戦が終わるまでリーダー種だと特定できるような発見はできなかった。
 結果の方も惨敗、というわけではないが、中級モンスターを揃えた割には余り振るわなかった。
 元々勝つつもりはなかったが、それでも思った以上に悪い結果になった。
 もう少し様子見という感じで見守ることが出来ると考えていたのだが、そこまで甘くはないと考えを改めさせられた。
「うーん。これはまいったね。流石にわざわざ宣戦布告をしてくるだけの事はある、ってことかな?」
 わざわざシルヴィアに頼んで言伝をするほどなので、格下に見ていたつもりはないが、どう考えても経験の差が出ている感じがする。
 例え今の管理者が初めて宣戦布告するとしても、今までの積み重ねられてきた経験がある感じを受けていた。
「どうするのですか?」
 考助の言葉を聞きとがめたミアが、考助の顔を見ながら聞いていた。
「まあ、特に今まで考えてたのと変わらないよ。取りあえず、次までは負けるよ」
 二回目までのように上手に負けるなんてことを考えている余裕はない。
 相手がどのような戦略を取ってくるのか、それを見るだけでも十分に価値はある。

 そもそも四回負けるというのは元々決めていたことだ。
 これは、制圧戦のルールに基づいている。
 今の状態だとアマミヤの塔側が四回負けて奪われたフィールド分が、丁度塔の一層分の大きさになる。
 その状態になると、今度は相手側も四分割した広さではなく、アマミヤの塔の階層と全く同じ大きさの階層を取る事が出来る。
 今までとは四倍の速さで制圧することが可能になり、さらに今考助が相手に差し出している下層を四回勝てば中層を出すしかなくなる。
 さらに中層を四回勝って、最後に上層部では二回勝てば制圧戦は終了という事になるのだ。
 つまり、今回に限って言えば、相手側は最短であと七回勝てばアマミヤの塔を制圧できるという事になる。
 戦う回数が少なくて済むというのが制圧戦のメリットの一つだろう。
 アマミヤの塔ではできているが、上級モンスターが召喚出来るようになっていなければ、既存の階層だけで勝つのはかなり難しい。
 どうしても相手の上層で勝たなければ相手の塔を制圧できたことにはならないのである。
 とはいえ、考助としてもそこまで負け続けるつもりはない。
 あと一回負けて、相手がどういう戦略を取ってくるのか、そしてこちら側が相手の階層に攻めたらシステム上どういう事になるのか確認をしたい。
 相手の方が戦略に優れているからとはいえ、アマミヤの塔が負けることはないと考えている考助なのであった。
三回戦でした。
最初はコレットの事に気を取られていましたが、流石の考助も今回の負け方にそんな余裕はなくなっています。
もっとも最後に書いたように、最終的に負けるとは思っていないです。
何しろ眷属たちをまだ出していませんからねw
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