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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4部 塔のあれこれ(その11)

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(5)母と息子

 第五層にあるラゼクアマミヤの城で、大規模な式典が行われていた。
 その式典には、セントラル大陸にある町の有力者は勿論、国外からの賓客も数多く招かれている。
 普段から良い関係を築いている国は当然の事で、ある程度距離を置いている国の者たちも呼ばれていた。
 当たり前だが、ラゼクアマミヤから断っている国もあるが、意外にも多くの国の関係者がその式典に参加することとなった。
 それもそのはずで、その式典というのがラゼクアマミヤに新しい王が誕生することを祝うためのものなのである。
 前女王であるフローリアから現国王であるトワへの王位の移譲は既に済んでいる。
 それ故に、現国王であるトワは実務もこなしているのだが、それはあくまでも内向けのことだ。
 国家というものは、時にこうしたパフォーマンスで内外に周知する必要がある。
 中には式典自体を「金の無駄」という者もいなくはないが、ほとんどの者はそんなことは考えていない。
 それもそのはずだろう。
 確かにこうした式典というのは、国としての見栄を張るという一面はある。
 財力やら戦力やらを見せつけるために、やたらと派手にしたり威圧したりすることだってある。
 だがそれはあくまでも一面でしかない。
 こうした式典を開くそもそもの目的は、国の内外に事の重要性を知らしめたり、国外の者たちと直接会うという事なのである。
 国にとって重要な者たちを迎え入れるのに、寂しいだけの部屋にいれたり、極貧の食事を与えたりするのはどう考えても間違った方向になる。
 勿論、ただひたすらに金を掛ければいいというものでもない。
 結局は、どちらも極端になってしまっては駄目、ということだろう。

 城の大広間にある一番高い玉座の上から集まった者たちを見ながら、トワはそんなことを考えていた。
 勿論考えていることを表に出すようなことはしていない。
 王位に立つ者がそれくらいのことが出来なければ、様々な駆け引きをすることなど不可能だろう。
 もっとも、既に実務についているトワが、その辺りに関して大きな失敗をすることは少ないのだが。
 今回の式典には、多くの国からの参列者が来ている。
 普段から良い関係を築いている国からは、王自ら来ている所もある。
 当然そうした国から順番に並んでいる。
 参加者が決まるたびに、実務を担当している者たちが連日喧々諤々の議論をしたうえでようやく決定した並び順ということになる。
 当然トワも今回の序列は頭に叩き込んでいた。
 こうした順番は、他の国々にラゼクアマミヤが自国をどのように見ているのかと知らせるのと同時に、国内の官僚たちがどのように他国のことを見ているかを知る事ができる重要な要素となっている。
 トワが今後、こうした官僚たちを掌握していくためには、必要なことなのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 トワが玉座から式典の様子を見ている所を、他の参列者とは違った感覚で見ている一角がある。
 それは、ラゼクアマミヤの王家の関係者が集まっている所だった。
 前女王であるフローリアを筆頭に、リクやアレクたちが座っている。
「・・・・・・こうやって見ると、本当にあっという間だったな」
 トワの姿を見ながらそう呟いたフローリアの言葉は、隣にいた考助にしか届かなかった。
 考助は、身バレがしないように魔法や変装(?)で姿を変えてある。
 ちなみに考助の後ろには、謹慎中のはずのミアも同じように姿を変えて座っていた。
 例の件の内実を知っている者たちが協力しているので、ばれることはないだろう。
 この近辺に座っているのは、王家の関係者・・・であって、王家の人間だけが集められているわけではない。

「その意見には同意するけど、過去を振り返るにはまだ早くない?」
 考助は含み笑いをしながらそう言った。
 何となくフローリアの言葉から年を取ったという感情が漏れ出ている感じがした。
「そう言ってくれるな。自分でも言動が年寄臭くなったのは、自覚しているんだ」
 フローリアがしみじみとそう言うのを聞いて、考助は思わず隣に座っているフローリアをまじまじと見た。
 出会ってから十数年以上たっているが、その美しさは変わっていない。
 むしろ年を経ている分、貫録さえついてきているように見える。
 フローリアの姿を見て、成人している子供がいると見抜ける者の方が少ないだろう。
「その台詞、他の女性の前で言ったら恨まれそうだけれど?」
「こんなこと、コウスケにしか言わないさ」
 さらりと言われたその言葉に、考助は小さく笑った。
「それは、また。随分とぶっちゃけたね」
「自分でも似合わないことを言っているという自覚はあるさ。言わせるな。恥ずかしい」
 そんなことを言いながら、さすがのフローリアは表情を全く変えていない。
 自分自身が前女王として注目されていることは分かっている。
 内心ではどんなことを考えていても、それを表に出さないのは為政者としては必須のスキルなのである。

 ちなみに考助は気づいていないが、フローリアの隣に座っている男の存在は、出席者から注目を浴びている。
 前女王の隣の席に座れる男がどういった立場にあるのか、想像できないわけはない。
 出席者の中には、ミクセンの神殿関係者も呼ばれているのだが、彼らはまさかと思いつつ考助を見ていた。
 フローリアの隣に座っている時点で、そうしたことは予想されるのは分かり切っていた。
 姿を変えているのは、現人神だと分からないようにするためではなく、本来の姿を見せないようにするためなのである。
 式典自体は座って参加する形式なので、考助の傍によって来ようとする者はいない。
 ただし、これが自由な形式だったとしても、容易に考助の元には近づいてこれないだろう。
 過去に起こった事件で、不用意に近づいてはいけないという認識が広まっている。
 それ故に、暴走しようとする者が出たとしても、周りにすぐ止められてしまうのである。

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 新たに王位に就いたトワと、現人神である考助の二人が注目をされる中、式典も終盤に近づいてきた。
 あとは、王の座に就いたことを神々に報告するために、王自身が神々へ祈りを捧げることで式典は終わりとなる。
 この儀式自体は、なにか意味があるものではない。
 神々が実在する世界の王国で、昔からある慣例の一つで、どの国でも取り入れている儀式の一つのはずだった。
 そんな儀式に予想外の事が起こったのは、トワが神々に対して祈りを捧げ始めた時からだ。
 玉座から降りて神々に対して傅いたトワに、赤・青・黄色に輝く光が降り注いだのである。
 その神秘的な光景を見た出席者たちが騒めきだす。
 同じようにそれを見たフローリアが、思わず隣にいた考助を見たのも仕方のないことだろう。
 出席者の中には、フローリアのように考助を見てくる者たちもいた。
 流石のそれら視線に気付いた考助は、苦笑しながらゆっくりと首を振った。
 自分はやっていないというアピールだ。
 ついでに、考助にはそれらの光の祝福を誰がやったのかもすぐにわかった。
 考助の後ろの席で座っているシルヴィアにも分かっているだろう。
 何しろその三種の祝福は、三大神がトワに対して行ったのだから。
 恐らく、この式典に出席している神殿関係者の中にも気づいている者はいるはずだと考助は考えていた。
 そして、残念ながら考助の席からは見えないが、その祝福を目にした瞬間に顔を青くしたり赤くしたりする関係者が続出していた。

 結局、三大神が起こした祝福は、出席者たちにトワ国王は三大神に愛されているという話と共に本国に報告されることになるのであった。
トワが内外に国王であることを式典という形で正式に発表しました。
フローリアのしてみれば、ようやくという感情ともうという感情が入り混じっている複雑な感じでしょうね。
最後のおまけは、考助の息子に対する神々からのプレゼントです。

※本日ネット小説大賞ページで特設サイトが公開されました。
是非、ご覧ください。
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