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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4部 魔力供給施設

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(4)反省会

 魔力供給施設が正式稼働してから数日たった日のこと。
 一部の者たちを除いて、第五層の街では今まで通りの生活が営まれていた。
 というのも、魔力を効率的に発生させる施設が出来たからといって、一気に一般の人の生活が変わるわけではない。
 今回稼働したのは、主に城やクラウンの組織で魔力を多量に必要とする部署に与えられる分だけだ。
 ここから数か月、安定して使う事が出来るかどうかを確認したうえで段階的に普及させていく、というのがクラウンの今後の計画になる。
 そのため、今回の施設の稼働は、ごく一部の者たちにだけ衝撃をもって伝わっているのだ。

 そんな中、施設の運営・管理をしている職員たちだけは、忙しく動いていた。
 特に、魔法陣の稼働、修復部分を担当している者たちは、先日の稼働の時からほとんど休みなしの状況だった。
「どうだ? まだ把握できないのか?」
「あ、主任。も、申し訳ありません。どう解析しても意味不明な部分が・・・・・・」
「ばっかもん!」
 主任と呼ばれた者が、その職員を一喝したところで、他の者たちもびくりと身を動かした。
 職員たちにしてみれば、正式稼働から今までひたすらに考助が改変した魔法陣の解析に励んでいたのだ。
 その解析がほとんど進んでいない、という自覚はある。
 それ故に、上司の怒りも身を震わせて受けるしかない状況だった。
 ところが、主任が次に言った言葉は、彼らの予想とは全く違っていた。
「陣の解析よりもまず先にすることがあるだろうが! 真っ先にするべき、陣の保全は進んでいるのか?! 下手に解析なんぞして、現人神様が折角組んでくださった魔法陣を壊したりはしていないだろうな!?」
 いくら主任とて、たった数日で現人神が手を加えた魔法陣の解析が進むとは考えていなかった。
 それよりも、いざ魔法陣に何かあった時のために、すぐに保全できるように分析を進めて修復が出来るようにしなければならない。
 そうしないと、先日起動しなかったように、施設自体が動かなくなってしまうこともあり得る。
 主任にとっては、それだけは避けなくてはならないことなのである。

 ようやく主任が求めていることがわかったその担当者は、慌てたようすで話し出した。
「も、申し訳ありません! そちらでしたら、大方の分析は終わっています。あとは、肝心の中枢部と繋がる部分になります」
 担当者のその言葉を聞いて、ようやく主任の吊り上がった眉が若干落ちた。
「そうか。ご苦労だったな。後もうひと頑張りしてくれ。そうすれば、休みも回せるようになるだろう」
 主任がそう言うと、それを聞いた職員たちの空気が若干和らいだ。
 その言葉が、主任なりの気遣いだという事に気付いたのである。
 自分たちの役割を考えれば、それだけで休みが貰えるようになるなんてことは、ここにいる誰もが考えていない。
 その雰囲気に気付いたのか、主任は首を左右に振ってから口元に苦笑を浮かべた。
「いや、これは気休めとかではなくてな。先ほどの打ち合わせで、取りあえず今は保全することを最優先に考えればいいという事になった。解析したうえで改良していくのは、先延ばしという事だな」
 その主任の言葉に、職員たちは何が言われたのか分からずに、ポカンとした表情になった。
 今主任が言ったことは、本来与えられた一部の役割を放棄していいと言っているのに等しい。
「どうもうちの上層部も、現人神様が改変するのは全くの想定外だったようでな。その部分を加味してくれたようだ」
 相変わらず苦笑したままの主任と同じように、その場の職員たちの間にも苦笑が広がって行った。
 神の行い(?)に、人の理解が及ばせることは非常に難しいことだ、というのはこの世界に住まう人々の共通の認識なのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 施設の職員たちが考助が行った行為に奔走しているその頃。
 当の本人(本神?)は、トワと一緒に反省会を開いていた。
「つい口と手を出しちゃったけど、やりすぎたかな?」
「・・・・・・微妙な所ですね。女神たちは何か言ってきていますか?」
「ああ、そっちは心配しなくても大丈夫だよ。一応後で確認はするけど、なにか不具合があればとっくに言ってきているだろうしね」
 考助の言葉に、トワはホッとした表情になった。
 トワが一番心配していたのは、その事だったのだ。
「それならよかったです。現人神が干渉しすぎといわれるのが、一番怖いですからね」
「そこは前から言っている通り、余り心配しなくていいと思うよ。むしろ、そこまで良いのかってくらい認められるみたいだから」
 考助の感覚では、自分自身が一番世界に対しての干渉を嫌っている感じがする。
 逆に女神たちと話しをすると、もっと干渉すればいいのに、とさえ言われることがある。

 考助のその言葉に、トワが苦笑を返してきた。
「それはそれで問題が大きくなりそうな気がしますが?」
「だよねえ」
 神が直接人の世界に口を出したりすると、歯止めが効かなくなる可能性がある。
 そのためにも、考助としては変に口出しをするのは控えていた・・・・・・のだが、今回はついつい手まで出してしまった。
 とはいえ、今回の件に関しては考助にも言い分はある。
「ただねえ。あの場合は、僕が手を出さないといつまでたっても改善できなかっただろうからねえ」
 ため息をはきながらそういった考助に、トワが疑問の視線を向けた。
「というと?」
「ああ、連携が上手くいっていなかったのが、神力に関わる部分だったからね。多分、あの場を諦めて後日にしたとしても、解決しなかった可能性があるからねえ」
「なるほど」
 考助の説明に、トワが思いっきり頷いた。
 未だ人の世界では、神力に関しては未知の力であることは変わっていない。
 それを普通に扱っているクラウンがおかしいのだ。
 ただし、扱っているといっても、考助が与えた物を利用しているという事はずっと変わっていない。
 そのため、詳しく調査したところで、ほとんど分からないと言う結果しか出ないというのが考助の結論だった。
 だからこそあの場で、直接自分が動くことにしたのである。

 考助の説明を聞いて納得した顔になったトワだったが、次の瞬間難しそうな顔になった。
「となると、保守はともかく改良は難しいという事でしょうか?」
「さて、それはどうかな?」
 ニヤリと笑った考助に、トワは首を傾げた。
 トワにしてみれば、わざわざ考助自身が動かなければならなかった状況なのに、今後その状況がすぐに改善するとは思えなかったのだ。
「何か方策があるのですか?」
「こらこら。長男が兄弟の事を忘れてどうする」
「あ! そうか、ルカか」
 考助に突っ込まれて、トワはようやく一番下の兄弟の存在を思い出した。
 別にルカのこと自体を忘れていたわけではない。
 魔法陣に異様に強いというルカの特技(?)を忘れていたのだ。
「まあ、ルカがそこまで成長できるかどうかはまだ分からないけれど、中々いい線まで行くんじゃないかな?」
「そうですね」
 親子で頷き合った二人は、同時にルカの顔を思い浮かべた。
 小さなときから魔法陣に興味を示していたルカは、成長した今でも魔法陣に関してだけは爆走している状態なのだ。
 既にその知識は、トップレベルまでたどり着いている。
 ついでに、管理層に来ては考助の魔道具や神具にも触れているので、考助が言った通りの活躍をすることは決して不可能ではない。
 親や兄としての欲目が全くないとは言わないが、それを差し引いたとしても十分に可能性のある話なのだ。

 そんなルカの遠くない将来に期待しつつ、魔力供給施設に関する考助とトワの話は終わることとなったのであった。
保守を担当している部署はこれから大変です。
魔法陣というなれたものでありながら、全く意味の分からない物を保守していかなければならないのですから。

というわけで、満を持してルカの出番! ・・・・・・となればいいですね(棒)
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