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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4部 魔力供給施設

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(2)稼働失敗!

 本来であればトワは考助の実の息子なので、へりくだる必要はない。
 それどころか、トワはラゼクアマミヤの国王なのだ。
 普通であれば、国王であるトワが畏まる相手などいるはずがないのだが、ラゼクアマミヤという国の特殊性が二人の関係をややこしくしている。
 ラゼクアマミヤは、もとはといえば塔の攻略者である考助が作った村が元になって発展して来た国だ。
 さらに言えば、その考助自体が現人神というどの国の国王でさえも畏まる相手となれば、トワが今のような態度をとるのはむしろ当然なのだ。
 あるいは、この時点でトワが普通の態度を取っていれば、今後の国王も同じような態度に出たかもしれない。
 だが、この時のトワの態度がこの後に出てくるラゼクアマミヤの王たちの立場を決定づけたといってもいいだろう。
 もっとも、この時にトワの周囲にいた者たちが、トワの態度を咎めるようなことはしなかった。
 ラゼクアマミヤとアマミヤの塔における考助は、最も重要な存在である。
 この場にそのことを疑うような者は、一人もいないのだ。

 正式稼働前とはいえ、既に施設には多くの者が働いている。
 だが、一同が移動する先には、人影はほとんどなかった。
 国王であるトワが来るという事で、警備の関係上、余計な者は動かないようにしているのだ。
 元々はトワのために敷いた警備だったが、今となっては考助の為になっている。
 もっとも、コウヒとミツキがいる以上、不意打ちを食らわせたとしても考助自身には何も起こらないだろうが。
 国王であるトワが先導して考助を案内するという奇妙な状態が続いていたが、一同でそれを不思議に思う者はいなかった。
 皆がそれを当然だと考えている。
 しばらく歩いていると、やがて目的の場所へと到着した。
「ここになります」
「分かった」
 考助が頷くと、トワの傍にいた一人が扉を開けた。
 流石にトワが一番最初に開けるわけにはいかない。
 中にはトワを害そうとする者はいないはずだが、それでも何があるかわからない。

 あくまでも念のための措置であるため、何事もなくその扉は開いた。
 中には既に、クラウンの面々が揃っている。
 部門長の三人は考助がこの日に来ることを知っていたが、最高機密の為他の者たちには知らされていない。
 そのため、本来一番上の立場になるはずのトワではなく、考助をメインに話をしているのを訝しげに見ていた。
 ちなみに、施設には全く関係することが無い生産部門の部門長はこの場には来ていない。
「・・・・・・という造りになっています。なにかご質問はございますか?」
 施設についての説明をダレスから受けた考助は首を左右に振った。
「いや。ないよ。・・・・・・思った以上に大規模になっていて、驚いたくらいかな」
「ハハ。そこは、将来を見越して、という事になります。最初の生産量の目標は、この施設の半分にも満たないですから」
「それはそれで無駄じゃないか?」
「今の状態で需要を完全に予想するのは難しいのです」
 考助の疑問に、シュミットが答えた。
 ある程度の余裕を持つのは当然ではあるが、流石に半分も能力を発揮していない施設は考助には無駄に思えた。
 もっともそれは、ある程度の需要が決まってしまっていて、予測が立てられる世界から来た人間ならではの感覚だ。
 これから需要が増大することがわかっている場合は、余裕を持って作っても完全に無駄とは言えないのである。
 魔力供給施設の運営は世界でも初めてのことになるので、どれくらいの需要が出るか、完全に予測するのは難しいのだ。

 今となっては街の現状もよくわかっていない考助が、そのことに対して口を出すつもりは毛頭ない。
 そもそも今日この場に来たのは、施設が正常に稼働するかどうかを確認しに来たのである。
 運営や運用に関しては、国から委託されているクラウンに任せるのが一番なのだ。
 考助が質問を終えた後は、トワを始めとした国の関係者が次々と質問を出していく。
 彼らの質問はより具体的になっていた。
 施設の運営が税で賄われている以上、当然の事だろう。
 彼らの質問が一通り終えると、後はいよいよ施設を稼働するという事になった。
 実際の予定よりも時間が余っていたため一旦この場は解散となり、考助はトワと共に設けられた別室へと向かうのであった。

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 用意された別室には考助といつもの二人、それにトワだけが残った。
 普通であれば親衛隊がトワの傍を離れることなどありえないのだが、代弁者二人がいるので必要ない、と言われれば引き下がるしかなかったのだ。
 お陰でトワは落ちついて昼食にありつくことが出来た。
 もっとも、毒見が終わっているので、冷えているのは致し方のないことではある。
 一方で考助はというと、恐縮しきった様子で部屋を出て行く者たちを見て、苦笑しながら一言つぶやいていた。
「そこまで緊張しなくてもいいのに」
「無茶を言わないでください、父上。彼らにとって、貴方は崇めるべく存在なんですよ?」
 考助の苦笑が移ったように、トワもまた苦笑しながらそう返した。
 この場合は、トワの言っている事が全面的に正しい。
 考助もそれがわかっているため、肩を竦めるだけでその話は終わったのである。

 用意された食事をしながら、考助とトワは施設についての話をしていた。
「それで、この施設はいかがでしたか?」
「取りあえず話を聞く分には問題なさそうだね」
 考助がそう返すと、明らかにトワはホッとした表情になった。
 施設の建設、運営費用に多額の税金が投入されている。
 万が一にも失敗すると、そのしわ寄せはトワに押し寄せることになるのだ。
「それはよかった」
「ただ・・・・・・」
「?」
「動かしてみないと、正常に稼働するかは分からないけれどね」
 考助はそう言って悪戯っぽく笑みを浮かべた。
 その表情から冗談だと察したトワは、顰め面になった。
「止めてください。父上がそんなことを言うと、本当にそうなりそうです」
 トワがそう返すと、今度は考助が顰め面になった。
「いやいや。いくらなんでもそれはないから」
 慌ててそういった考助だったが、トワは疑わし気な表情になった。
「本当ですか?」
「本当だよ。・・・・・・タブン」
 横を見ながらそういう考助には、どう見ても説得力は無かったのであった。

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 それぞれが食事を終えて、いよいよ施設の稼働をする時間になった。
 考助たちがいるのは、中央のコントロールセンターのような場所だ。
 なにか不具合があれば、ここにいればわかるようになっている。
 全員が集まって準備が出来たところで、施設が動き始めた。
 だが、最初は順調だったはずなのだが、途中から動かしている職員の顔が青くなり始めて来た。
 特等席で見ていた考助もその理由がすぐに分かった。
 ある場所を境に、施設同士の連携が上手くいっていないのだ。
 そのために供給されるはずの魔力が伝わっていない。
「おいおい。いくらなんでもそのフラグは回収しなくていいから」
 考助は思わずそうぼやいてしまったが、周囲の者たちは意味が分からず首を傾げると同時に、顔を青くした。
 よりにもよって、考助が来ているのに失敗してしまったという思いなのだろう。
 唯一、トワだけは笑いをこらえるような顔だったが。
 考助がこの程度で怒ったりしないことはよくわかっているのである。

 国のお偉いさんたちが青くなったり、それを見た施設を管理する職員がさらに青くなったりして、最初の施設稼働は考助が助け舟を出すまで不穏な雰囲気に包まれることになるのであった。
というわけで、最初の稼働は失敗しています。
考助も実際に稼働するまでは、失敗するとは思っていませんでした。
何が原因で失敗しているかは、また次回。
ちなみに、考助は最後の時点で原因がわかっていますが、敢えて口出しはしていません。
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