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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4部 塔のあれこれ(その10)

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(3)寿命

祝600話目!
いつもお読みいただきありがとうございます。
 一通り村の様子を見た考助たちは、ソルが普段住んでいる建物に入った。
 その建物は塔の機能を使って建てたもので、村にある建物のほとんどがこれを基準にして作られている。
 建物の一室に落ち着いたソルは、何となくそわそわとした感じで考助とフローリアを見ていた。
 村を見て回った感想がどうだったのかを知りたいのだ。
 そのことがわかっている考助が、フローリアに視線を向けた。
 その意図を理解したフローリアも一つ頷いてから、話をしだした。
「ふむ。ソルの心配も分かるがな。なかなか上手くいっているのではないか?」
 そのフローリアの言葉に、ソルはホッとため息をはいた。
 実はソルは以前、考助と共に第五層の街を見に行ったことがある。
 既にヒューマンとして違和感が無いソルなので、頭にある角などを隠して行けば、何かの亜人としてしか見られないのだ。
 その時にかなりの衝撃を受けたらしいソルは、何とか今まで頑張って村を発展させようとしてきたのである。

 フローリアの言葉を聞いて安堵したソルだったが、一度首を振って表情を引き締めた。
「ありがとうございます。ですが、まだまだ発展の余地はありますが・・・・・・」
 そういったソルに、フローリアが小さく笑った。
「フフフ。それはそうだろう」
「え?」
「あのな。我々の文化というのは、それこそ何百年何千年とかけて培ってきたものだ。それを、農業を覚えて十年程度のゴブリンたちが、一気に追いつけると思うか?」
 フローリアのその言葉に、ソルが恥じ入ったように顔を赤くして俯いた。
「は、ハイ・・・・・・」
「ふむ。ソルは何をそんなに焦っているんだ?」
「えっ?!」
 思わず顔を上げたソルは、じっと見てくるフローリアの視線に少しだけたじろいだ。

「・・・・・・焦って、いるのでしょうか?」
 そう言って戸惑った顔になったソルに、二人のやり取りを見ていた考助が頷いた。
「うん。そうだね。フローリアの言う通り少し焦っているように見えるよ?」
「そんなつもりはないのですが・・・・・・」
 ソルはそう呟いて、首をひねった。
 ソル自身には自覚が無いようだが、彼女の様子は考助とフローリアには明らかに焦っているように見える。
「うーん。もしかして、ゴブリンの寿命とか気にしている?」
「ああ、なるほど」
 考助の唐突な言葉に、フローリアが頷きソルがドキッとしたように視線を考助へと向けた。

 それを見て確信した考助は、ソルを安心させるように笑って言った。
「心配しなくても、ソルの寿命はゴブリンたちとは違って遥かに伸びているはずだよ」
「え? そうなんですか?」
 初めて聞くその情報に、ソルが驚いたような表情になった。
 通常、この世界のゴブリンは平均すると十年ほどの寿命になる。
 勿論、野生のゴブリンは、という注釈が付くので、安定した生活を手に入れているこの階層にいるゴブリンはさらに伸びると考助は読んでいる。
 ただし、それはあくまでも平均であって、残念ながら十年程度で亡くなってしまっているゴブリンもいるのだ。
 そうした現実を見て、ソルの心のどこかにそうした不安があったのだろう。
 そうした微妙な心情を察したフローリアが、代わりに考助に聞いた。
「ふむ。ソルだけか?」
「いや。進化している種は、バラバラだけど伸びていると思うな。具体的にどれくらいかまでは分からないけれど」
「ソルは確か四段階くらい上がっていただろう? それを考えるとかなり伸びるのではないか?」
「ああ、うん。少なくとも普通のヒューマン以上の寿命になっているのは間違いないだろうね」
 考助がそう断言すると、ソルは茫然とした表情になった。

 考助も確証があって言っているわけではないが、それでも仮にも現人神になっているのだ。
 その程度の事は勘でわかる。
 もっと具体的に知りたければ、過去の経験からそれぞれの種族の寿命を知っている女神たちに聞けばわかるだろうが、今すぐにそこまで必要というわけではない。
 今は、勘違いしているソルを理解させればいいだけなのだ。
「気付いていなかったのか。もっと先に言っておけばよかったのかな?」
「その辺は微妙だろうな。だが、ソルもソルだぞ。肉体的にも精神的にも自分が元の種より遥かに強靭になっているのは分かっているのだろう?」
 フローリアの言葉に、ソルがコクリと頷いた。
「だったら、当然寿命も延びていると考えるべきだったな」
 フローリアの言う通りだったのだが、そもそもソル自身が寿命の事は意識して気にしていたことではないのだ。
 あくまでも無意識のうちに、そうした裏の感情があったに過ぎない。
 そのため、冷静に考える時間などなかったのも気付かなかった原因の一つとなっているのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「まあ、とにかくこれで急ぐ必要が無いという事は分かったかな?」
 考助のその言葉に、ソルが再び頷いた。
 その顔が最初の頃よりも明るくなっているように見えるのは、考助の見間違いではないだろう。
「それだったらよかった。経験じゃなくて、知識で知っていることだけど、こういったことは急ぎすぎても碌な結果にならないからね」
「そうだな。歴史からもそれは明らかだ」
 考助とフローリアの念を押されてソルが神妙な顔になった。
「・・・・・・気を付けます」
 だが、そんな懸念を吹き飛ばすように、フローリアが笑った。
「といっても、急激に発展するときはあっという間だ。そういうときに限って為政者が調整しようとすると逆効果になるからたまったものではないんだ」
 文明が急速に変化を見せるときに為政者が手を出すと、下手をすれば国そのものが吹き飛んでしまう事もある。
 そうした事実は、何処の世界でも同じなのだ。

 雰囲気が部屋に入った時と同じような感じに戻ったところで、フローリアがふと何かを思いついたような表情になった。
「そう言えば、ソル。村を見て回った時から考えていたんだが、大鬼人とか鬼人頭とかを何人か借りられないか?」
 唐突なフローリアのその言葉に、ソルが首を傾げた。
「可能か不可能かで言えば可能ですが、どうされるのですか?」
「なに。彼らの手を借りて、南西の塔に住むゴブリンたちの集落を管理してもらえないかと思ってな」
「ああ、なるほど。それは面白いね」
 フローリアのその提案に、考助が興味を示した。
 南西の塔にもゴブリンの眷属たちが集落をつくっている。
 別の塔で召喚されたゴブリンたちが、ここのゴブリンたちと同じように発展することが出来るのか、なかなか興味深い。
 そもそも眷属たちは、それぞれの塔で独自の進化をすることがあるのだ。
 それを考えれば、ゴブリンたちも全く違った種に進化してもおかしくはない。

 考助が興味を示したことで、ソルも真面目に考え込む表情になった。
「そういう事でしたら構いませんが、今おっしゃった者たちはここでも重要な役割を果たしています。長期間いなくなるのは・・・・・・」
 困る、と続けようとしたソルだったが、フローリアが右手を上げたことによって言葉を止めた。
「心配いらん。そもそも最初のうちはここの村と集落を転移門で繋ぐつもりだからな」
 塔の階層同士が転移門で繋がっていれば、それぞれの階層を自由に行き来できるようになる。
 ゴブリンたちが専用で使う転移門を設置すればいいだけの話だ。
「そういう事でしたら、問題ないと思います」
 フローリアの話を聞いて、ソルもそう断言した。
 これにより、第十四層で進展したゴブリンの文化もどきは、南西の塔にも広がることになるのであった。
というわけで、ゴブリンたちの寿命の話でした。
・・・・・・メインは、南西の塔にゴブリンの文化を広げる話のはずだったんだけどなあ。
どうしてこうなった!?
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