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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4部 塔のあれこれ(その10)

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(2)農作業(スライム)

 考助はフローリアと共に第十四層へと久しぶりに来ていた。
 時折ソルがゴブリンたちの様子を報告に来ているため、考助自身がこの階層に来るのは久しぶりの事だった。
 なぜ今回この階層に来たかというと、考助が何気なくゴブリンたちのことを話したときに、フローリアが興味を持ったためだ。
 フローリアが知っているゴブリンたちの様子は、なんちゃって文化を築いている時だ。
 だが、考助の話では、とてもそんなレベルではないという事が分かったために、ぜひ見たいとなったのである。

 第十四層に着くなり、ソルが出迎えに来た。
 いったいいつ察知したのかというくらい早い対応だった。
 特に前もって連絡していたわけではないのだが、来ることがわかっていたような速さである。
「随分早いね。誰か見張りでも立ててたの?」
 気になった考助がそう聞くと、ソルは首を左右に振った。
「いいえ。何となく、です」
「何となくって?」
 ソルの種族である使天童子に何か特徴的なスキルでもあるかと思ったが、そのようなスキルは無い。
 何となく気になった考助がそう聞くと、ソルは少しだけ考えるような仕草をした。
 だが、やがて首を振って申し訳なさそうな表情になった。
「申し訳ありません。言葉にできない感覚です。コウスケ様が来たと感覚的に分かったとしか・・・・・・」
「そうか」
 考助はそう言って頷いたが、二人の会話を聞いていたフローリアがそれを見て笑っていた。

 それを見咎めた考助が、フローリアの方を見た。
「何?」
「いや、なに。二人とも考え過ぎだと思ってな」
「はい?」
「え?」
 フローリアの言葉に、考助とソルが同時に首を傾げる。
 その様子がおかしかったのか、ひとしきり笑ったフローリアが答えを言った。
「そもそもゴブリンは、人の気配とかそういったものに敏感な種ではないか? そこから進化したソルがコウスケの気配を読み違えるはずがないだろう。
ついでに、コウスケの加護を得ているのだ。ピーチと似たような力を持っていても不思議ではあるまい」
「あ~。なるほど」
 フローリアの納得できる説明に、考助は頷いた。
 確かにそう言われてみれば、不思議に思うようなことではなかった気がする考助なのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ゴブリンたちが住んでいる村に着いたフローリアは、その変わりように目を見張った。
 以前来た時は、農業をやっと覚えたばかりで、それこそ文明に毛が生えた程度の集落、といった感じだったのが大きく様変わりしていた。
 ソルから話を聞いていた考助も、実際に目の当たりにして驚いている。
 掘っ立て小屋の方がまだまし、といった感じだった家は、それなりの法則で建てられているのか、似たような造りの物が並んでいる。
 それだけでもある程度の組織だった集団が作っているという事がわかる。
 考助はともかく、フローリアは一国の女王だったのだ。
 その程度の事はすぐに推測できる。
 何しろ、目の前にある家は基本的に木材が中心に出来ている。
 その一枚一枚を一人のゴブリンだけで運ぶのは至難の業だろう。
 どう考えても二人以上の労働者が建てているという事が、それだけでもわかるのだ。
 ついでに言えば、その木造の家も単純な四角いだけの建物ではなく、随所に工夫がみられる。
 ソルの話では、塔の機能を使って建てた最初の建物を基本にしているそうだ。
 勿論、ゴブリンたちが建てられるように簡易化はされているようだが、それでも十分すぎるほどの発展度だった。

 ソルに案内されている考助とフローリアの二人は、感心しきりでゴブリンの村を見ていた。
 まだまだ文明の度合いでいえば、農業を覚えたばかりでようやく文明が起こり始めたという感じは抜けきっていない。
 だが、考助やフローリアが注目したのはそこではない。
 建物を例にとると、確かに元ある建物を基本に造られてはいるのだが、所々にゴブリンならではの工夫がされていたりする。
 ヒューマンである考助やフローリアには必要ないといえるようなものでも、ゴブリンたちにとっては重要なものもある。
 そして、そうした違いが、文明に影響を与えたりするのだ。

 色々なゴブリンならではの工夫に感心する中、考助とフローリアが一番興味を持ったのは、農場に行った時の事である。
 ゴブリンや鬼人たちが作業をするのを見ながら、考助が一番最初に気付いた。
「・・・・・・ん? あれは、スライム?」
 野菜が育っている畑の中に、数体のスライムがいることに気付いたのだ。
「ん? ああ、そうだな。見張りは何をやっているのだ?」
 考助に指摘に気付いたフローリアが、剣を持ってそのスライムたちを倒しに行こうとしたのだが、ソルがそれを止めた。
「お待ちください」
「ん? 何故とめる?」
 フローリアにとっては、スライムは狩るべき対象であって放置していていいモンスターではないのだ。

 だが、周囲の畑を見回した考助があることに気付いた。
「・・・・・・あれ? あ、あっちにも・・・・・・もしかしてだけど、ゴブリンたちスライムを農作業に使ってる?」
「な、何!?」
 考助のその指摘に、フローリアが驚きの声をあげ、ソルが感心したような顔になった。
「気付かれましたか。流石です」
「いや。何となくそんな気がしただけだから」
 考助はそんなことを言って手を振った。
 だが、それを聞いたフローリアもソルも言葉通りには受け取っていない。
 考助(現人神)の「何となく」は、既に事実といって良い感覚になっているのだ。
 知らぬは本人ばかりなり、といったところだろう。

 そんな二人の様子に気付いているのかいないのか、考助は感心した様子でスライムの様子を見ていた。
 ちなみに正確に言えば、スライムを使っているのはゴブリンではなく鬼人たち以上の種族だ。
 考助が見る限りでは、彼らは上手くスライムを誘導しているように見える。
 まるで水田には放ったカモのようにスライムたちが動き回っているのだ。
「なるほどねえ。スライムも上手く使えば野菜とかを食べずに他の虫とか雑草を取るってことかな?」
「はい。その通りです」
 考助の言葉に、ソルが頷いた。
 最初にゴブリンがやったことは、食べては駄目な物をスライムに教え込むことだ。
 何しろ放っておけば何でも消化してしまうのがスライムだ。
 だからこそモンスターとして駆除される対象になっているのだ。
 そして、そのことを知り尽くしているフローリアが首を傾げた。
「だが、眷属でもないスライムが、ものの区別が出来るのか?」
「当初は苦労していましたが、仲間の中にスライムと意思をやり取りできる者が出てきましたので、その者が教え込みました」
「何と!?」
 あっさりいわれたソルの言葉に、フローリアが驚きの声を上げた。
 もっとも単純な思考さえ持ってないスライムを人の言うままに使うのは難しいとされているのだ。
 当然、意思疎通など出来るはずもない。・・・・・・というのが、人の世界の常識なのだ。
「勿論、意思のやり取りといってもごく単純なことだけを聞くようです。私にはそのような能力はありませんが」
「なんとまあ」
 感心するやらあきれるやらといった表情で、フローリアは農作業をしているゴブリンや鬼人たちを見回した。

 様子を見ている限りでは、スライムたちがゴブリンや鬼人たちを襲うといったことは無かった。
 それどころか、自分たちが他の脅威から守られていると分かったいるのか、おとなしく農作業の手伝いをしているように見える。
 何とも不思議なその光景に、フローリアは思わずうめき声を発するのであった。
発展してきているゴブリンの村でした。
ちなみに、コーたちと意思疎通をした考助ですが、スライムと意思疎通するのは難しいです。
本文にもあるように、思考が単純すぎて上手く双方の想いが伝わらないためです。
(ただし、現人神になった後は除く)
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