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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4部 塔のあれこれ(その10)

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(1)その後と意外なつくり手

 ラゼクアマミヤの初の貴族の誕生は、各方面に大きな影響を及ぼしていた。
 場合によっては、トワの国王就任よりも大きなニュースとなっている。
 国の王との接点などほとんどない一般の住人は、トワの国王就任の噂で盛り上がっているのだが、トワに近くにいる者たちにとっては貴族誕生の方がインパクトがあるのだ。
 それもそのはずで、次は自分が、という思惑と野心が入り混じって噂となって駆け巡っているのである。
 もっとも、可能性のあるすべての者にそうした野心を抱かせているのかと思えば、そうではない。
 ドロテオに貴族位と土地が与えられたといっても、そもそもラゼクアマミヤにおける貴族の役割はまだはっきりしていない。
 加えて与えられた土地が塔の中の土地というのも大きい。
 セントラル大陸にある土地に比べてモンスターの発生が抑えられているとはいえ、あくまでも塔の中だ。
 モンスターが全く発生しないわけではないし、他の大陸に比べればモンスターの発生頻度は多い。
 モンスターの襲撃に見合うだけの収入が得られるかというと微妙な所があるのだ。
 そうしたことを理解している者たちの中には、今回のは報酬ではなく左遷ではないかと揶揄する者もいる。
 勿論、そうした話はドロテオに対するやっかみがほとんどだ。
 だが、今まで貴族なしに国として成り立って来たという事実だけを見ればそうとられてもおかしくはないのである。
 地位と土地を与えたトワにはそんなつもりは全くない。
 本来であれば、王の名のもとに自分が開発を手掛けても良かったのだが、折角の機会なのでドロテオに譲り渡したのだ。
 第五層の街もまだまだ発展途上といった感じで広がっている。
 同時に二か所の開発を進めるくらいなら、信頼できる者に任せようという事になったのである。

 そんな話を考助に向かってフローリアが話した。
 彼女の片手にはお酒が入ったグラスが握られている。
 以前は、女王としての役割から夜食やパーティでお酒を口にすることが多かったためか管理層で飲むことは無かったのだが、最近はこうして考助と飲むことが増えていた。
 そのフローリア曰く、「体面と打算を気にしながら飲むお酒は旨くなかったが、こうして考助と飲む楽しさを知ってしまった」ということだった。
 時にはピーチも混ざって酒盛りをすることもあるが、基本的には二人で飲むことが多い。
 別に避けているわけではないが、フローリアが何となくそういう雰囲気を大切にしているのだ。
 これまで大勢の囲まれて飲んでいた反動もあるのかもしれない。

「それで? 政治は上手くいっているの?」
 初めての貴族の誕生に、かなり混乱しているのではないかと予想した考助がフローリアにそう聞いた。
 だが、そんな考助に対して、フローリアは首を傾げた。
「さて? 私のところに助けを求めに来ていないという事は、上手くいっているのではないか?」
 何とも投げやりなその回答に、考助は苦笑するしかなかった。
 ただ、それをフローリアに注意しようとも思わない。
 何かあるたびに一々フローリアに忠言されるようでは、折角王位を譲った意味が無いのだ。
 本当に困ったことがあれば、ちゃんと相談に来るだろうという信頼もある。

 息子の活躍を肴に、ちょっとした晩酌を楽しんでいた二人の元に、シルヴィアがやって来た。
 彼女も最近、フローリアの勇退を機に巫女としての公の職を退いていた。
 勿論、考助の巫女としての役目まで終わらせたわけではない。
「あれ? シルヴィア。何かあった?」
 フローリアもそうだが、シルヴィアには子供がいるため完全にこちらに生活の場を移しているというわけではない。
 あえて意図的に管理層にいることにしているフローリアと違って、シルヴィアはまだ城で寝泊まりをしている方が多い。
 それ故に、こうして顔を見せることは珍しいのだ。
 不思議に思って聞いてきた考助に、シルヴィアは首を左右に振った。
「いいえ。特に何かがあったというわけではありません」
 そういった後、シルヴィアはフローリアに視線を向けた。
「ごめんなさいね。邪魔をするつもりはなかったんだけれど」
「気にするな。今は私のほうが考助と会える時間は多いからな」

 首を振りながらそういったフローリアは、グラスに入ったお酒を一口飲んだ。
「・・・・・・それにしてもこのワインは旨いな。どこが産地だ?」
 王家のパーティで上等なワインを飲んでいるフローリアがそう言うのを聞いて、考助は首を傾げた。
「あれ? フローリアもまだ飲んだことなかったの?」
 考助にそう言われたフローリアは、その味を思い出すように一度目を閉じた。
 だが、記憶を探っても今目の前にあるワインは飲んだ記憶が無かった。
「うむ。飲んだ記憶は無いな」
「そうなのか」
 そう言って納得だけした考助に、フローリアは不満そうな視線を向けた。
「こら。一人で納得していないで、教えてくれ」
「ハハハ。分かったよ。・・・・・・といっても、普通に教えるのは面白くないからな。どこが産地が当ててみたら?」
 考助がそう言うと、フローリアも面白そうな顔になった。
 ちなみに、普通は産地や銘柄が書かれたラベルが酒瓶に貼られているのだが、今彼らの目の前にある瓶には何も貼られていないのだ。
 そのことからも特殊な経路で入手したというのがわかる。

 ワインの味を確かめながらフローリアは、色々な産地を思い出していくが、今まで飲んだことのある物とは微妙に違っているように感じる。
 勿論フローリアにソムリエの感覚などあるわけがないので、正確にピタリと当てることなど出来るはずもないのだが。
 それがわかっていてこんなことをやっているのは、勿論ただの余興だ。
 首をひねっているフローリアに、ヒントなしで辛いと判断した考助は、助け舟を出すことにした。
「もしかしたら、シルヴィアなら分かるかもね」
「えっ!? 私が、ですか?」
 考助に水を向けられたシルヴィアが、驚いた表情になった。
 ほとんどお酒を口にしないシルヴィアは、当然ながらフローリア以上にお酒のことなどわかるはずもない。
 だが、考助に言われて少しだけ考える様子をみせたシルヴィアは、やがてあることに思い当たって口に手を当てた。
「えっ? まさか、あそこですか!?」
「うん。多分、当たっていると思うよ」
 フローリアに分からず自分に分かる、という事から消去法で考えたシルヴィアだったが、それでもかなり予想外だったために驚いたのだ。
「そうですか。作るという話は聞いていましたが、まさかフローリアを驚かせるほどの味になるとは思っていませんでした」
「だよね」
 何やら二人だけで納得しているのを見て、ついにフローリアが降参した。
「参ったよ。全く分からん」
 そう言って首を振ったフローリアに、考助が答えを言った。

「これね。北の塔で作られたんだ」
「北の・・・・・・ということは?!」
 意外な場所を聞いたフローリアは、改めて視線をグラスに入ったワインへと向けた。
「イグリッドたちは、こんなものも作る技術があるのか」
 当然と言えば当然の答えを出したフローリアに、考助は首を左右に振ってさらに驚くことを言った。
「いいや、それがね。これ、ヴァンパイアたちが作ったそうだよ」
「なに!?」
 完全に予想外の答えに、ついにフローリアは驚いて声を上げてしまった。
 シルヴィアがこのことを知っていたのは、シュレインに頼まれて作物の育成に祈りを捧げに行ったことがあるからだ。
 あくまでもヴァンパイアたちの趣味の範囲として聞いていたので、フローリアの感想を知って驚いたのだ。

「ひどいのう。フローリアまでそんな感想か?」
 驚くフローリアの耳に、また別の者の声が聞こえて来た。
 この場合はまさしく当事者といえるシュレインだった。
「いや。普通は意外に思うだろう?」
「・・・・・・まあ、否定はしないがの。ワインに関しては、我らの趣味に近いからの」
「そうか。しかし勿体ないな。売りに出せるどころか、確実に名産になるだろうに」
 残念そうに言ったフローリアに、シュレインは首を振った。
「売り物にするには、どうしても数が少なくての。もう少し人手が増えんと、無理だろう」
 シュレインはそう言って、考助の手からグラスを奪って中に入っているワインを飲みほして、満足そうに頷くのであった。
前の部分がその後の話でした。
国内で安定した身分制度が出来るまで、しばらくトワの苦労は続くかと思います。

後半のワインの話は、何となく思いついて書きましたw
実際に市場に出すことになるかはまだ決めていません><
ちなみに、ワイン造りだけは一切イグリッドの手を借りていないヴァンパイアです。

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第4部の構成をようやく決めました。
第3部が長い話が続いてきたので、第四部は細かい話を書いていました。
ですが、代わりに部の構成をどうするかさんざん悩んだ挙句、結局細かく分けることに><

・・・・・・という言い訳でした。
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