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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4部 貴族

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(5)論功行賞

 北の街での騒ぎが収まってから数日たったある日。
 ラゼクアマミヤの城の広間に重鎮たちが集まっていた。
 今回の件で動いた者たちに、褒賞を渡すためだ。
 ちなみに、この時既にミアの処分は決まっていて、内外に通達が行われている。
 ミア以外の騒ぎに関わった者たちの処分も同様である。
 今回の件にミアが関わっていたことに、大抵の者は驚いていた。
 だが、その処分の内容を聞いて、ミアに近しい者たちは表に出さないように納得していた。
 ミアが学生の頃から塔の管理に興味を持っていたことは、周知の事実だったのだ。
 そのことからも、今回の件がトワとミアが手を結んで動いていたことまで推測していた。
 勿論、そうしたことをわざわざ表に出すようなことはしない。
 誰かに話したところで、ミアに対して処分が下されているのは、動かしようのない事実なのである。
 なにより、処分を下された本人が一番喜んでいるという事が想像できるため、敢えて言う必要性も感じていないというわけだった。

 次々と褒賞が渡される中、今回の件で最大の功労を立てたドロテオ・グレヴィリウスの番が来た。
 ドロテオは、前北の街の領主であるルーカス・グレヴィリウスの実の息子だ。
 今回は、ドロテオの持っていた人脈を使って反乱者たちの動きを察知していたのである。
 勿論それ以外にも大きな動きをしたために、最大の功労者という事になったのだ。
 集まった者たち全員の注目を浴びる中、フローリアがドロテオに褒賞を告げた。
「ドロテオ。其方は今回の騒ぎで一番の功労者と認められた。よって、其方には金○○枚を褒賞とする」
「はっ! 謹んでお受けいたします」
 フローリアの言葉にドロテオは一礼をして、目録を受け取った。
 だが、その様子を見ていた周囲の者たちの中には、訝し気な表情をしている者たちがいた。
 女王を前に、表情を隠さないのはこの場にいる者としてはふさわしくないとも言えるが、それを咎める者はほとんどいなかった。
 というのも、ドロテオが受けた褒賞が思ったよりも少なかったのだ。
 犯罪者たちを直接捕らえるための指揮をした親衛隊の隊長よりも少ない。
 フローリアもそのことは十分わかっていたのか、一つ頷いてから続けた。
「そんな顔をするな。ドロテオの褒賞はこれだけではない。だが、それはまた後だ。それよりも今は先にやっておくことがある」
 フローリアがそう言うと、集まった者たちは声を揃えて「はっ!」と応答するのであった。

 その様子を王座から確認したフローリアは、言葉を続けた。
「皆も分かっていると思うが、今回の件での一番の功労者はドロテオになる。だが、彼以上の功労を立てた者がいるであろう?」
 フローリアがそう言うと、その場にいた者たちは訝し気に顔を見合わせた。
「わからぬか? 私の隣に立っているだろう?」
 更に重ねてフローリアが言うと、ようやく視線がフローリアの隣に立っているトワに集まった。
 それを確認したフローリアは一つ頷いた。
「そうだ。我が息子、トワもまた今回の件で最大の働きをした。よって、私はこの功績を以ってトワに王位の座を譲り渡すとする!」
 そのフローリアの宣言に、一同は一瞬驚きの表情を浮かべた者の、すぐに平伏した。
 彼らもそろそろ、という思いはあったのだ。
 北の街の騒ぎで立てた最大の功労を持って王位を譲り受けるというのは、確かにタイミングとしては丁度いいといえる。
 今回の件でトワの能力的にも問題ないことが証明されている。
 勿論それだけでは王として足りない所もあるが、それはこれから補っていけばいい。
 それに、フローリア自体が体に問題があるというわけではないのだ。
 何かあればフローリアを頼ってもいいのだ。
 もっともフローリア自身はそんな心配はかけらもしていないが。
 とにかく、この場に集まった者でトワに王位を移譲するのを反対する者は一人もいなかったのである。
「どうやら反対も出ないようなので、これは決定事項とする。細々とした引継ぎは後ほどとするが、今は略式で儀式を行う」
 フローリアがそう言ってトワを見た。
 そのトワはすぐにフローリアの前に進み出た。
 それを確認したフローリアは、自分の前で頭を下げたトワに今まで自身が被っていた王冠を載せるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 フローリアに代わってトワが玉座に着いた。
 略式とはいえ既にトワが王位に立っているので、それを咎める者は誰もいない。
 玉座に座りながらそれを確認したトワが、言葉を発した。
「前女王により私が次の王として就くことになった。これから先よろしく頼む」
 これがトワの王としての第一声となった。
 それを聞いた者たちが、一斉に姿勢を正して頭を下げる。
「さて、早速だが王としての最初の仕事をしようと思う」
 トワがそう言うと、一同が訝し気な表情になった。
 まだ王位に就いたばかりなので、特に大きな仕事はない、と考えていたのだ。
 そんな状況が手に取るように分かっていたトワは、気にせずに続けた。
「わからないか? ドロテオへの報奨の授与がまだ残っているだろう?」
 集まった者たちは、トワに言われてようやく思い出したという顔になった。
 トワへの王位の移譲があったために、すっかり頭から抜け落ちていたのだ。

「ドロテオ、其方をラゼクアマミヤの男爵位として任命する。これは王家からの正式な任命である!」

 トワがそう宣言すると、一瞬場が静まり返り、ついで騒めきだした。
 本来であれば王の前であり無礼な態度ととられかねないのだが、トワもフローリアも一切咎めなかった。
 それだけ衝撃が大きかったというのがわかっているのだ。
 それもそのはずで、王家からの爵位の任命はラゼクアマミヤでは初の事なのだ。
 爵位が男爵とはいえ、今のところラゼクアマミヤでは王家を除いて一番の権力者となる。
 今集まっているものたちは、あくまでも爵位のないただの文官や雇われ騎士なのだ。
 そんな中でドロテオが一番抜きんでて出世したという事になる。
「ドロテオがラゼクアマミヤ初の爵位持ちという事になるが、今後は働きによってこうしたこともあると覚えておくといい」
 トワがそう言うと、集まった者たちは頭を下げるのであった。

「さてドロテオ」
「はっ!」
「其方には貴族としての土地を与えようと思う」
 トワがそう言うと、更に場がざわめいた。
 貴族が土地を管理するのは当たり前のことだが、ラゼクアマミヤにはその土地がほとんどないのだ。
 正確に言えば、モンスターばかりで管理できる土地が無いとも言える。
「は、はっ?」
 ドロテオも同じようなことを考えたのか、トワの前にも関わらず思わず、といった感じで目が点になっていた。
「其方に与える土地は、第三層の一部を考えているのだが、どうだ?」
 トワがそう言うと、周囲から「おおー」という声が上がった。
 誰もが思い至っていなかったのだが、塔の階層の土地も王家の物として認識されている。
 しかも第三層であれば、下手にセントラル大陸内にある未開の地を貰うよりも遥かに開発がしやすい。
 第五層という塔の中に普段住んでいながら、誰もがそんなことを思いつかなかったのだ。
 ラゼクアマミヤが出来てから十年以上たっているのに、まだまだ塔の階層が人の住める土地として認識されているのが低いという事なのだろう。
 トワの言葉を受けて、ドロテオが頭を下げて言った。
「謹んでお受けいたします」

 これにより、正式にラゼクアマミヤに貴族位が誕生することになった。
 これが今後の統治にどのように影響があるのかはまだわかっていない。
 何しろ初めて尽くしのことなので先が見通せないのだ。
 だが、初めての爵位が登場したことにより、対外的にも大きな意味を持つことになる。
 トワへの王位の移譲と初の爵位の誕生。
 これによりラゼクアマミヤが王国として、また大きく一歩を踏み出したのは間違いがないことなのであった。
トワへの王位の移譲が書きたかったのに、いつの間にか爵位の誕生まで増えてました。
勢いで書いたら駄目ですね><
ともかく、これでラゼクアマミアも本当の意味の王国として進みだしたといえるのでしょうか?
これがいいことなのか、悪いことなのかはわかりませんが。

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