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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4部 貴族

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(3)監視者

 ミアは盛大にため息を吐きたいのをこらえながら目の前の男と対峙していた。
 これもトワの為だと内心で考えながら、取り繕った返事を返す。
「では、今ここにいるのが貴方の言う仲間の全てということですか?」
 そういったミアに男は大袈裟に両手を広げた。
「それこそまさかですよ! 貴方の味方に回ろうという者は、他に大勢います」
「・・・・・・そうですか。では、その方たちにも会わせてください。返事はそれからです」
「は? いえ、ですが」
 ミアの言葉に戸惑う様子を見せる男だったが、ミアは気にせずに続けた。
「申し訳ありませんが、ことが事ですので、貴方の言葉だけでは信用できません」
 突き放しているように聞こえる言葉だが、その内容はもっともなので男はグッと言葉に詰まった。
 今のミアの態度は勿論演技だ。
 既に噂で出来のいい王女として知られているミアなので、今からお馬鹿な演技をしても仕方ない。
 ある程度頭が良いという所も見せておかないといけないのだ。

 そんなミアを見定めるように、言葉に詰まった男がジッとミアを見て来た。
 お互いに初顔合わせなので、当然のように男もミアの本性(?)を見抜こうとしているのだ。
 もっともミアは内心で、その態度に不合格の印を押していた。
 もっとやり手の者であれば、表ではそのような態度を見せずに笑顔を見せて、裏では計算高く会話を進めているものだ。
 勿論、わざとそうした態度を表に出すという事もあるが、既にミアはこの男がそこまで計算高くないと見抜いている。
 ただし、あくまでもその態度はちょっと頭が良い気取った王女という態度を貫いている。
 ドレスの袖に隠れた腕では鳥肌が立ちそうになっているが、何とか我慢している。
 やがて男はわざとらしくため息を吐いてから頷きつつ言った。
「やれやれ。王女様には敵いませんな。かしこまりました。皆が集まる場を設けましょう」
「・・・・・・そうですか。では、それまでにある程度話を進めておきましょうか?」
「よろしいのですか?」
 疑問の表情を顔に浮かべた男に、ミアは肩を竦めた。
「ある程度、こちらも誠意を見せないと皆が付いてこないでしょう?」
 そういったミアに、男は初めて感心したような表情を浮かべた。
「確かにおっしゃる通りです。では・・・・・・」
「ええ。先ほど貴方が言ったことくらいは進めてもよろしいのでは?」
 ミアがそう言うと、男は大仰な感じで頷いた。
「畏まりました」
「では、今日はここまでにします。あまり長時間話していても怪しまれますからね」
 ミアはそう言って傍にいたミカゲと共にその場を後にするのであった。

 
 城の自室に戻ったミアは、ミカゲ以外誰もいないのを確認してから盛大にため息を吐いた。
 いくら自分の部屋とはいえ、侍女などの目があるのだ。
 子供のころからなので慣れているとはいえ、そうしたこともミアが管理層に入り浸ることになった理由の一つかもしれない。
「大丈夫ですか?」
 滅多に表情を変えることのないミカゲが、ミアを気遣うような表情になって言って来た。
「特に何もありませんが、どうかしましたか?」
「疲れたような表情になっています」
 それを見たミアは、思わず右手で頬を撫でた。
 ミアにはそんなつもりはなかったが、長い付き合いになるミカゲには疲れているように見えたのだ。

 そんなミカゲに対して笑顔を見せようとしたミアだったが、逆にわざとらしく額に手を当てて言った。
「・・・・・・そうですね。会談をしたおかげで疲れが出たのかもしれません。ここはぜひ、管理層に・・・・・・「駄目です」・・・・・・早いですね」
 主の言葉の途中で止めにかかったミカゲを、ミアはジト目で見た。
 もっともミカゲはその程度では表情は変えなかった。
 このくらいの事で怒るようなミアではないことを分かっているのだ。
「トワ様のお力になると決めたのでしょう?」
 そして、急所となる所を的確についてくるのもこれまでの経験でミカゲが得て来たものだ。
 そんなミカゲに対してグッと言葉に詰まったミアは、大きくため息を吐いた。
 こう言った時のミカゲには敵わないとわかっているのだ。
「仕方ありません。真面目に動くことにします」
 そういったミアは、部屋にある机へと向かうのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 北の街にあるとある場所にその集団は集まっていた。
 ここに集まった者たちは、町の者たちに怪しまれることが無いように、慎重に集まっている。
 その場所に、先ほどまでミアと会っていた男が合流した。
 その男が来るのを待っていたのか、集団の中にいた一人が早速質問をして来た。
「どうだった?」
「どうもこうもないな。予想外の事はあったが、ほぼ予定通りに進んでいる」
 その言葉に周囲の者たちがざわめいた。
「予想外だと? 何があった」
 周りの者たちが詰め寄って来そうな雰囲気になるのを感じた男は、右手を軽く振った。
「何。誇張された噂だ思っていたが、噂通りに切れ者の王女なのかもしれん。だが、この話に乗ってきた以上、むしろ歓迎すべきことだろう?」
 その男の言葉に、何人かが頷いた。
「確かに」
「だが、良いのか? 切れ者だとすると、逆に噛みつかれるのでは?」
「どうやって? さっきも言ったとおり、既に王女はこちらに片足を突っ込んでいる。もう逃げられないさ」
 そういった男にさらに追い打ちをかけるように別の者が言葉を加えた。
「例の件に同意したという証拠をこちらが握っている以上、既にこちらの計画を進める意味はあるだろう」
「そうだな。もしこの件が発覚した時は、王女も既に同罪だ」
 何人かの言葉で、それまで不安そうな様子を見せていた者たちも安心したような表情になっていった。

 その後もそこに集まった者たちは、しばらくの間何事かを話し合っていた。
 やがてそれも終わったのか、一人ずつその場所を離れていく。
 勿論、一気に出て行って疑われることが無いようにしているのだ。
 そして、最後に残った一人がその場所から離れていったが、彼らは最後の最後まで気づかなかった。
 自分たちが最後の最後まで監視されていたことに。

 

「・・・・・・警戒しているようで、全く駄目だな」
 呆れたようなその呟きは、今までその場所を監視していた者のものだった。
 幾ら厳重に警戒しているとはいえ、何度も同じ場所を使っては駄目だろう、というのがその監視者の感想だった。
「まあ、お陰でやりやすいからいいが」
 そんなことを呟いた監視者もやがてその場所を離れた。
 監視者が呟いた通り、この場所は既に監視対象になっている。
 例え今いる者が去ったとしてもまた別の者が来ることになっているのだ。
 勿論、この場所が監視対象になっていることは、先ほどの者たちには気づかれていない。
 もし気付かれているのであれば、場所を変えているだろう。

 その場所を離れた監視者は、先ほど得た情報を持って北の街の酒場に入った。
 そこには既に男の仲間が待ち構えていた。
 酒場に来るものとして当り障りのない会話をしながら、先程の得た情報が書かれた紙を手渡した。
 この紙は、さらに別の者が集めた情報を合わせて、他の所に行くのだ。
 これで監視者の仕事は一旦終わりである。
 明日はまた別の場所での監視業務が待っている。
 それが、サキュバスたちの大事な仕事の一つなのであった。
最後の最後までこの話いらないかなー、と思いましたが上げることにしました。
折角なので、サキュバスたちの活躍する所も見てみたいじゃないですか。
・・・・・・あれ? いりませんか?w
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