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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4部 貴族

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(1)北の街再び

 城の執務室でとある報告書を眺めていたフローリアが、ポツリと呟いた。
「やれやれ、やっと動いたか。そろそろ待ちくたびれる所だったな」
「こら。そんなことを言うと、誤解されるぞ?」
 フローリアの呟きを聞いたアレクが、苦笑しながら答えた。
 そんなアレクにフローリアが肩を竦めた。
「分かっているさ。ここだから言っているんだ」
 今執務室にいるのは、フローリアとアレクの二人だけなのだ。
 だからこそ、フローリアも取り繕うことなく先ほどのようなことを呟いたのだ。
 ちなみに、この時点ではアレクはフローリアが何の報告を見ていたのか知らない。
 そんなアレクに、フローリアがその報告書を渡した。
 しばらくアレクは同じように報告書を見ていたが、やがて顔を上げてフローリアを見た。
「・・・・・・なるほどな。確かにそう言いたくなるのも分かる」
「そうだろう? まあ、これで計画が進められる。そっちも準備は出来ているんだろう?」
「勿論だ」
 強く頷いたアレクに、フローリアは視線をそらしながら言った。
「まあ、父上にはもうしばらく働いてもらうが」
「フローリア!?」
「仕方なかろう? 私にはコウスケの傍にいるという重要な役目がある」
 ぬけぬけとそう言い放ったフローリアに、アレクは苦笑を返すしかなかった。
 完全にフローリアの私的な希望しかない言葉だったのだが、重要な役目であることは確かなのだ。
 もっとも、フローリア以外にも同じような役目を担っている者たちがいることはアレクも知っている。
「・・・・・・まあ、これ以上他の者に離されないように付いて行かないといけないからな」
「父上!!」
 冗談のように言い放たれたアレクの言葉に、フローリアは思いっきり反応をしてしまうのであった。

 

 ごく一部の側近と重鎮が集められたその部屋に、フローリアがアレクと王太子であるトワを伴って入って来た。
 自分の座るべき位置に着いたフローリアは、集まった顔ぶれを見て一つ頷いてから話し始めた。
 既にアレクもトワも位置についている。
「さて。集まってもらったのは他でもない。ついに北が動く気配が出て来たようだ」
 フローリアのその第一声に、集まった者たちは驚きよりもやはり、という顔をしている方が多かった。
 ここにいる者たちは、既にこうなることを予想していたのだ。
 その反応を見て満足そうに頷いたフローリアだった。
 だが、次のフローリアの言葉で、集まった者たちの反応は驚く者と納得する者の二つに見事に分かれた。
「そこでだが、この件に関しては、全ての権限をトワに渡そうと思う」
 ここに集まった者で、その言葉の意味を取り違えるようなことをする者はいない。
 フローリアは、次の王位の移譲の準備として今回の件を使うと宣言したのだ。
 このことが公になれば、内外に次の王位はトワだと示すことになる。
 次の王位がトワだというのは周知の事実にはなっているのだが、噂レベルの話と実際の実務を行うことは全く違うのだ。
 今までもトワはフローリアの後継として色々な実務を行ってきたが、今回のこの宣言でこれまでの仕事とは全く重みが変わってくる。

 フローリアの宣言を聞いて反対を申し出る者は一人もいなかった。
 もともとここに集まっている者たちは、最初からそうなることを見越して行動している者たちばかりだからだ。
 それを満足気に確認したフローリアは、一つ頷いてから話を続けた。
「そういうわけだから、この件に関して私の所に話を持ってきても意味がないから心しておくように」
 最後にフローリアはそう釘を刺した。
 この言葉は、場合によってはトワに対する反逆と取ることもあると言っているのだ。
 ここに集まった者でその意味を取り違える者は誰もいなかった。
 きちんと意味を理解しているがゆえに、喉を鳴らしている者がいたくらいだ。
 それらを確認したフローリアは、視線をトワに向けて話をするように促した。
 それを受けて一つ頷いたトワは、一同に視線を向けて話を始めた。
「今女王から話があった通り、この件に関しては私が全てにおいて権限を持つことになる。そのつもりで皆も動くように」
「はっ!!」
 トワがそう言うと、集まった者たちは一堂に頭を下げた。
 その光景は、まさしく次代の王に対するものであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 トワは部屋に入って来たミアの顔を見るなり苦笑した。
「ミア、そんな顔をしないでくれ」
「そんなことを言われましても、お兄様。折角、階層の管理をして楽しんでいましたのに」
 周囲の目があるのでそれ以上は何も言わなかったが、表情を見れば不満を持っているのはよくわかる。
「すまんな。だが、今回はどうしても手伝ってほしくてね」
 本当に申し訳なさそうな顔になっているトワに、ミアは表情を崩した。
 勿論呼び出されたのは残念なのだが、トワが本気で困っているときに我が儘を言うほどでもないのだ。
 トワの本気度が分かったミアが、まじめな表情になって聞いた。
「そういう事でしたら構いません。・・・・・・ですが、何があったのですか?」
 普段のトワであれば、わざわざミアの手を借りずとも自らの手と采配だけで何とかしようとするだろう。
 ミアを呼び出したという事は、それだけの事が起こっているということになる。

 そもそもの起こりは、北の街で反乱の兆しがあるという報告をフローリアが受け取ったことだ。
 もともと北の街を支配していた貴族たちは、追放なり逃亡なりしていなくなっている。
 だが、彼らの下で利益を得ていた一部の者たちは、その恩恵を得られなくなり不満を蓄積していたのである。
 ラゼクアマミヤからすれば逆恨みもいい所なのだが、そんな感情を持った者に理屈を言っても通じるものではない。
 ついでに言えば、そういったものに限って元々持っていた資産があったりするのでたちが悪い。
 中にはその資産を使って、上手く立ち回り力を付けた者もいたりするのだ。
 そうした者が集まって、以前のような権力を持とうとしている、というのが報告の内容だった。
 ついでにとばかりに、そうした者たちの大半が、自分での稼ぎだけではなく別のところ(・・・・・)からのバックアップを得ていることも書かれていた。
 それがどこであるかは言うまでもないだろう。
 トワは、折角の機会なので、今回の件を機にそうした勢力を一網打尽にしようと考えているのだった。

 一通りトワから説明を受けたミアは、納得したように頷いた。
「要するに、私は彼らにとっての餌になればいいのですね?」
 身もふたもないミアの言い方に、トワは苦笑を返した。
 間違ってはいないのだが、その言い方はあまりに直接的すぎる。
 この場にいるのは側近だったり信頼できる者ばかりなので大丈夫なのだが、もしそうでない場合は噂で聞くミアとの違いに盛大に戸惑う事になるだろう。
 勿論、ミアもきちんとそのことを分かった上で、今の態度になっているのだが。
「まあ、そういう事だね。彼らにとっては、ミア以上の餌は無いからね」
 トワの次に王位を継ぐ可能性のあるミアなのだ。
 詳しい実情を知らない者からすれば、間違いなく極上の餌に見えるだろう。
 まさか王家に生まれた者が、王位に欠片も興味を持っていないなんてことは、これから罠をかける者たちにとっては想像の埒外なのだ。
「わかりました。これからは、しっかり餌として振る舞うようにいたします」
「ああ、頼むよ」
 冗談めかして言ったミアに、トワは真面目な顔をして頷くのであった。
北の街で再び動乱の兆しが見えました。
とはいえ、今度はさっさとラゼクアマミヤも動いています。
既に北の街は国家に属していることになっているので、今回は容赦しません。
ただし、メインで動くのはフローリアではなくトワですが。
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