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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4部 それぞれの現状

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(1)クラウンの現状

 考助は管理層の会議室でシュミットとダレスの訪問を受けていた。
 以前考助が提案した魔力供給施設の研究が進み、実用段階に至ったのだ。
 あくまでも考助が提案したのは理論だけだ。
 実用段階に持っていくことが出来たのは、間違いなく今のクラウンの実力だろう。
 しかも考助が思った以上の速さで、実現の目途が立っていた。
 考助は、素直にそのことを告白することにした。
「それにしても驚きましたよ。随分と速く目途が立ちましたね」
 その考助の言葉に、直接の担当者であるダレスが首を左右に振ってシュミットに視線を向けた。
「確かに、研究者の働きは大きかった。だが、ここまで早く予定が進んだのは、間違いなく潤沢な予算があったからだ」
「ははは。計画を立てる見積もりの段階で、より多くの儲けが出ることがわかっていましたからね。商人部門もそのくらいのことはしますよ」
 当然ながら(?)、普段は資金の支払いをもっとも渋るのが商人部門だ。
 だが、今回の件に関しては、その商人部門が研究の段階から豊富な資金を提供したのが大きかったのだ。
 その商人部門が大きな資金を提供することになったのは、初期段階でも研究の成果もあるのだが、それに加えて元が考助の発案だったというのもある。
 今まで数々の魔道具を提供して来た考助だからこその評価だった。

 考助が発案した魔力供給施設は、地脈の力を元に魔力を発生させる大型の施設である。
 もしその施設が完成すれば、これまで個人個人の魔法使いに頼っていた魔力の供給が、その施設から提供されるように変わる。
 当然、その供給量は、今までとは段違いとなる。
 その分魔道具を使ってできることが多くなる。
 やり方によっては、魔道具というよりも大きな施設をいくつも動かせるほどの魔力も供給できるようになるのだ。
 クラウンが立てた最初の計画では、むしろ個人に供給するよりもそうした大きな施設を動かすための魔力の供給施設となる予定だった。
 何しろ、歴史上初めての施設なので、個人に行きわたるようにするには多くの時間と手間がかかる。
 それに加えて、今まで見たことも聞いたこともない施設に、個人が素直にお金を出すとは考えづらい。
 それよりは、商業施設として供給を始めた方が、資金の回収方法として手っ取り早いという結論に至ったのである。

 そうした話を二人から聞いた考助は、ふと思い出したような表情になった。
「そう言えば、結局、魔力供給施設の管理はどっちが主体になるのか、決まったの?」
 考助がそう聞くと、シュミットとダレスの表情が曇った。
「残念ながら今だに結論は出ていませんね。まあ、仕方ないと言えば仕方ないのですが」
「そうか」
 ため息をはいてそう言ったシュミットに、考助は小さく頷いた。
 魔力供給施設は、大きな利益が見込めることがわかっている。
 ただし、物が物だけに、行政の力も大きく関係してくるのだ。
 流石にこれだけの施設を、一組織だけの権限で勝手に建てるわけにもいかない。
 当然、実験を重ねる段階で、ラゼクアマミヤの許可を取って行なっていたのだ。
 魔力供給施設は、単純に大きな儲けが出せる施設というだけではなく、場合によっては軍事的な利用も出来る施設になり兼ねない。
 それもまた国家が関わってくる大きな理由の一つにもなっているのだ。
「まあ、最初が肝心だからね。どっちにしてもメリットもデメリットもあるからね」
 国家が運営の主体を担うのか、それともクラウンが担うのか、どちらに良いという決定的なものはないのだ。
 考助が言った通り、どちらが主導権を握ったとしても問題は発生する。
 こればっかりは、考助が口を出すべきものではないと考えているのである。

「ところで、正式稼働前に施設は訪問されますか?」
 シュミットのその問いかけに、考助は首を傾げた。
「うーん。したいといえばしたいけれど、無理でしょう?」
 苦笑しながら答えた考助に、シュミットは首を左右に振った。
「いえ。こちらとしてもコウスケ様には是非とも訪問していただきたいです。勿論、人払いと口止めは厳重に致します」
「そうですな」
 シュミットの言葉に同意するように、ダレスも大きく頷いた。
 小さな魔道具から始まって、今回の大型の施設に至るまで、クラウンの工芸部門では既に考助の存在は無くてはならないものになっている。
 今回のような大型のプロジェクトの場合は、例え大きな手間がかかったとしても、クラウン側としては是非とも考助の訪問はお願いしたいところなのだ。
 そうした雰囲気を感じ取った考助は、ちょっとだけ首を傾げて答えた。
「まあ、無理をしない範囲で行った方が良いと言うなら、ちゃんと行くよ」
 考助のその返事に、シュミットとダレスは安堵したように息を吐くのであった。

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 魔力供給施設に関しての話がひと段落したところで、ダレスが別の話を持ち出して来た。
「実は、魔力供給施設は順調なのですが、通信装置が壁にぶつかっておりましてな」
「ん? どういう事?」
 小さく首を傾げた考助に、ダレスが一度頷いて続けた。
「あくまでも理論の段階ですが、塔の外の町同士ではあの理論で上手く通信は行えるそうですが、塔と外の町での通信は上手くいかないようです」
「ああ!?」
 ダレスがそういった瞬間、考助は思いっきり立ち上がった。
 それをみたダレスとシュミットが驚いた表情になった。
「コウスケ様?」
 不思議そうな顔になったダレスに、考助が目の前で両手を合わせながら言った。
「ご、ゴメン! ダレスに渡した理論だと塔と外の間での通信は無理なんだよ」
 申し訳なさそうな表情でそういった考助に、ダレスは納得したような表情になって頷き、続いて首を左右に振った。
「いや。コウスケ様が謝られることではないですな。そもそもそれに気づかない方が悪いのですから」
「それはそうなんだけど・・・・・・って、あれ? イスナーニには見てもらわなかったの? 見てもらっていれば一発でわかっただろうに」
 塔の中から外に通信するためには、魔力や聖力だけで行う事は出来ない。
 どうしても神力を使う必要があるのだが、そのことはイスナーニであればすぐに分かるはずだ。
 そのため考助はそういったのだが、ダレスは首を左右に振った。
「イスナーニ様は、最近ゴーレムの開発にかかりっきりでそれ以外には、ほとんど顔を出されておりませんでな」
「それだけゴーレムも佳境に入っていると言えますが、やはり手は足りていませんね」
 ダレスに続いてシュミットが現在の状況を説明した。
 考助やイスナーニが初期のころに蒔いた種が、色々な所で実り始めているために、各所で手が足りなくなっているというのがクラウンの今なのだ。
 だが、これを乗り越えることが出来れば、一気に花開くことになることも分かっている。
 今が踏ん張りどころなのだというのは、全員がわかっているのだ。
 特に、ゴーレムの開発に関しては、イスナーニの手を借りなくてもある程度の物が作れるようになってきている。
 彼女がゴーレム部門だけに留まることが無くなれば、それだけでかなりの余裕が生まれるはずなのだ。

 クラウンの生産部門の現状を聞いた考助は、何とも渋い表情になって腕を組んだ。
「うーん。今がそんな状態なんだとしたら、僕が手を貸してもいいんだけど・・・・・・」
 そういった考助だったが、これにはシュミットもダレスも賛同しなかった。
 イスナーニは、一部の者たちには現人神の代弁者に近い存在だと知られている。
 それだけでもかなり反則の状態なのだ。
 現人神自ら一組織に肩入れするのは、世界の常識で考えてあまりよろしい状態とは言えない。
 それ故に二人が揃って遠慮したのだが、これには考助も同意せざるを得なかった。
「まあ、そうだよね。生産部門にはもう少し踏ん張ってもらうしかないか」
「勿論です」
 諦めたような表情で言った考助に、ダレスは力強く頷くのであった。
魔力供給施設に関しては、実稼働一歩手前、という所まで来ました。
通信機器に関しては、ダレスが聞いたこと以外は順調に進んでいます。
そして、久しぶりに登場したイスナーニ(名前のみw)。
彼女が育てている弟子たちが、もう少しで満足の行ける所まで育つので、管理層に顔を出せるようになるのにもう少し、と言ったところです。
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