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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4部 ミアの挑戦

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(4)大失敗

 自然に阻まれて階層を見回るのを断念したミアは、しっかりと準備をしたうえで再び第十五層にきていた。
 雪と寒さの対策は、ミアが自分自身で魔法を使う事によって解決した。
 元々はそんな魔法を覚えていなかったミアだが、第十五層から諦めて戻ったその日のうちに、コウヒから魔法を習ったのだ。
 習ったといってもそもそもコウヒが使っていた魔法は、それなりの難易度がある。
 その魔法をたった一日で習得してしまったミアは、流石は学園の最優秀者と言ったところだ。
 何としても第十五層を自分の目で見たいという執念があったのも、習得を速めた理由の一つではあったのだが。

 そんなこんなで第十五層。
 しっかりと自分で魔法を発動したミアは、感慨深げに雪の世界を見つめていた。
 ちなみに、護衛役のミカゲは、ミアに魔法をかけてもらっている。
「すごく真っ白の世界ですね」
 魔法で寒さが軽減しているとはいえ、完全に防寒できているわけではない。
 それでも、前に来たときよりは遥かにましになっているため、ミアは落ち着いて風景を見ることも出来ていた。
 そんなミアに対して、考助は首を傾げた。
「あれ? ミアは、一面銀世界の景色って、初めてだっけ?」
 もっと小さかったときに、各階層のいろんな場所を見せた時に、高山の雪景色の場所も見たことがあるはずだ。
「いえ。ただ、前に連れて行ってもらった時は、山でしたから。こんな平原に雪が積もっている場所に来たことはありませんでした」
 そもそもセントラル大陸で人が住んでいる場所には、雪が降り積もる場所はほとんどない。
 降らないわけではないのだが、積もることが少ないのだ。
 勿論、セントラル大陸全域で見れば、雪が降る場所もあるので危険域に行く冒険者用にそうした防寒グッズは売られているのだ。
 そもそもアースガルドの世界は、考助が元いた世界と違って、緯度によって寒さの基準が変わるというわけではない。
 考助からすれば、おかしな世界になるのだが、元から住んでいる者たちにとってはそれが当たり前だったりする。

 白い雪景色を十分に堪能したミアは、前もって設置した拠点へと向かった。
 そして、その拠点の様子を見て、愕然とすることになる。
「・・・・・・埋まってますね」
「見事に雪の中に埋もれてるねえ」
 彼らの目の前には、高さ二メートルほどの雪の中に埋もれている厩舎があった。
 厩舎への出入り口は見事に雪で塞がれている。
「こ、これでは、折角置いた建物も意味がないじゃないですか!」
「そうだねえ」
 厩舎をみて慌てているミアに対して、考助はのんびりしていた。
 先日、雪景色に変わっている第十五層をみて、何となくこんな状態になっているのではないかと予想していた。
 あえてその時に言わなかったのは、身をもってミアに体験してほしかったからだ。
 こうした失敗も、必ずミアの経験になると考えての事だ。
 考助も似たような失敗を過去に何度も繰り返している。

 そんな考助の様子を見て、ミアがため息をはいた。
「・・・・・・父上は、こうなっていると予想していましたね?」
「まあねえ。雪が積もるってことが実感できないと、こんなことも予想できないだろう?」
 ミアの問いかけとは微妙にずれた回答をした考助だったが、これはわざとだ。
 考助の口から説明させるのではなく、自分で一つ一つ体験していきなさいと言外に示しているのだ。
 そのことをきちんと察したミアは、もう一度ため息をついて目の前の光景を見た。
 厩舎が全く使えない状態だという事は分かったので、代わりの物を建てないといけないのだ。
 ちゃんと周りの状況を見て、どう言ったものを建てればいいのか考える気になったようだ。
「・・・・・・そもそもこの建物をそのまま使うのは・・・・・・。ああ、駄目ね。外からはともかく、中から外には出ることが出来ないですね」
 埋もれている厩舎を見ながら、そんなことをぶつぶつと呟きながら、ミアが色々な角度から検討を始めた。
 その姿を考助の横に立って見ていたミツキは、ミアは間違いなく考助の子供だと考えていたが、それを口にすることは無かった。

 ミツキがそんなことを考えているとも露知らず、考助がふとミアに疑問に思ったことを聞いた。
「そう言えば、神水は置いたの?」
「ええ、勿論です・・・・・・って、ああ!?」
 当然だと頷いたミアだったが、神水に変わっているはずの小さな泉は、ものの見事に雪の下に埋もれていた。
 それを見たミアが、流石に落ち込んだように肩を落とした。
「なんか、全然だめですね・・・・・・」
 そんなミアの肩を考助がポンとたたいた。
「何を言っているんだ。お陰で色々なことがわかっただろう?」
「えっ!?」
 何を言っているのかと考助を見たミアだったが、その顔が真面目だったので茶化していったわけではないのだと察した。
 だが、どういう意味で言ったのかが分からない。

 悔しそうな表情で周囲を見ているミアに、考助は助言することにした。
 最初から考助の成功している所しか見ていないミアは、こういったときにどういう考え方をすればいいのか分かっていないのだと理解できたのだ。
「そうだね・・・・・・。例えば、これは僕も知らなかったけれど、塔の設置物はきちんと『地面』を基準にして置かれるんだ、とか」
 厩舎や泉があるはずの場所を示して考助が言うと、ミアは「え?」という表情になった。
「あれ? 分からない? この階層は、最初から雪の世界になるように設定されているんだろう? だったら、最初から雪が積もっていることが前提になっていてもおかしくはないと思わない?」
「あっ! そうか、そうですね。だとしたら、泉はともかくとして、厩舎は地面が雪になっていないとおかしいはずです!」
 先ほど厩舎の中を窓から覗いたときは、剥き出しの地面は雪ではなく土だった。
 それから考えれば、設置物は環境に合わせて設置されるのではなく、地面を基準に置かれていることがわかる。

 こうして考助が塔を管理するうえでのヒントを一つ与えたのだが、そこは優秀なミアの事。
 あとは湧き出る水のように、次々と疑問点が出てきているようだった。
 一人で何か考えるように、色々と周囲を見ていた。
 そんなミアの様子を見ていたミツキが、クスリと笑って考助に言った。
「流石に、蛙の子は蛙、と言ったところかしら?」
「そうなのかな?」
「あの言葉一つで分かってしまうのもそうですが、たったそれだけで思考の先が考助様と同じような感じになっていますよ?」
 呆れるわけではなく、むしろ感心するように言ったミツキに、考助は何となく照れくさそうな表情になった。
「なんか、そう言われるとくすぐったい気がするんだけど」
 そんな考助に対して、ミツキはクスリと小さく笑うだけで、それ以上は何も言ってこなかった。
 代わりに別のことを聞いてきた。
「それよりも・・・・・・」
「ん?」
「今回のこれで、何か新しいことでも思いついたのでしょう? 早速試すの?」
 この世界に来て早十数年。
 最初からこんな感じだったが、相変わらず隠しごとは出来ないようだった。
 ピンポイントで考えてきたことを聞いてきたミツキに、考助は苦笑をしながら首を振った。
「いや。今はまだやらないよ」
 そんな考助に、ミツキは意外なものを見たような顔になった。
 今までの考助であれば、思い立ったが吉日とばかりに、すぐに試していたはずだ。
 そんなミツキの表情で、考助にも彼女が何を言いたいのか分かった。
「僕がやりたいと思っていることが、ミアと被るかも知れないからね。当分様子を見ることにするよ」
 もし、全く同じことを考えているのであれば、やる気になっているミアの気がそがれる可能性がある。
 初めての塔の管理で上向きになっている気分に、冷や水を浴びせる気はない。
 考助の普通の感覚で考えれば、子供と触れて来た時間は短い考助である
 だが、こんな風に考えるとは既に自分が親としての思考を持っているんだと実感する考助なのであった。
雪に埋もれてしまった拠点でした。
ちなみに、家が雪に埋もれることは知っている考助ですが、塔で設置物を設置した場合にどうなるのかは分かっていませんでした。
今まで雪の中に拠点を作ったことは無いですからね。
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