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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 塔のメンバーと仲良くしよう

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(5) シュレインの悩み

シュレインの様子が・・・?

本日2話更新のうちの1話目です。
 シュレインは、ヴァミリニア城の玉座で、一人悩んでいた。
 他でもないヴァミリニア宝玉のことである。
 ヴァミリニア宝玉は、そもそもシュレインの一族が持っていた宝玉だった。
 持っていたというよりも、吸血一族であるヴァミリニア一族と共に存在する物なのだ。
 正確には、一族の長となる者と共に存在する物なのである。
 現在の一族の長は、シュレインなので、シュレインがこの世からいなくなれば、宝玉もなくなる。
 ただ、宝玉が壊されても、シュレインがいる限りは、すぐに復活することが出来る。
 いわばヴァミリニア宝玉は、一族の長となる者が引き継いでいく力の塊のような物なのである。
 ちなみに城は、宝玉に付随している物だ。
 宝玉があれば、どの場所でも城を創ることが出来るのだ。
 もっとも、ゼロから城を創るには、膨大な魔力が必要になるのだが。

 ヴァミリニアの一族は、一度滅んでいる。
 正確に言えば、国家として存在できていた勢力を、戦乱で失ってしまった。
 戦乱で数が激減した一族は、散り散りになって生き延びることを選んだ。
 いずれは数を増やして、再び国家としてやっていく予定であったのだが、そうはうまくいかなかった。
 戦乱で城(宝玉)を失った際には、当時の一族の王も失っていた。
 本来、次の王となるべき者が、宝玉を受け継ぐのだが、生き延びた者の中で宝玉に選ばれるものがいなかったのだ。
 それがなぜ、塔の設置物として出てきたのかは、シュレインにもここに集まった者達にも答えられる者はいなかった。
 そもそも世界を放浪していたシュレインが、なぜミツキの召喚で呼ばれたのかもよくわからない。
 或は、考助の血に魅かれたのかもしれない。
 シュレインとシュレインの召喚で呼ばれた者達が、その召喚で一族の者を呼べたのは、五十名程だった。
 そもそも召喚もそうそう便利な物ではなく、この世に存在している者を呼ぶときは、所在や生死がはっきりしている者でないと呼べないのだ。
 では、ミツキはなぜシュレインを呼べたのかという疑問があるが、彼女は別次元だから、と今のシュレインだったら答えられる。
 コウヒにしてもミツキにしても、反則級の強さと術を持っている。
 それ故に、そうそう簡単に使えるわけでもなく、少なくとも吸血一族の召喚が出来るのは、シュレインだけだったというわけだ。
 というわけで、散り散りになった一族を呼ぼうにもこれ以上召喚という方法に頼れず、一族の数に関しては頭打ちになっている。
 勿論、吸血鬼として血を吸うことで、数を増やすこともできるが、そのような方法を取って増やしたとしても、反感を買うだけで、結局のところ自身で首を絞めるだけだ。
 それに、吸血行為での同族の創造は、どうしても吸血鬼としての格が落ちてしまう。
 結局のところ、自然な(?)性行為で増やしていくのが一番なのである。

 とはいえ、考助と相談したうえで、世界中に散ってしまった一族の者達を、どうにかして塔に呼び込む術も考えてはいる。
 城の管理もしなくてはいけないので、数人しか出せないが、その者達を使って噂を流そうと思っている。
 すなわち、ヴァミリニア城が塔の中に復活した、という噂だ。
 その噂は、塔の中に城が復活したことを直接的に教えるものではない。
 だが、聞くものが聞けばわかるような符帳を仕込ませておくことにする。
 それでも余計な者まで塔に招くこともあり得るが、考助にこの話をしたときは、それはそれで構わないと言ってくれた。
 結局塔にとっては、その中で活動する者達が増えれば、それだけ聖力・魔力・神力を回収できるのである。
 戦乱が起きた時はともかく、現在は吸血鬼を忌避するものは少なくなっているので、吸血鬼だからと言って無差別に攻撃する者は、少数派なのである。
 というわけで、六名程を選んでその者達をクラウン登録して、冒険者として活動させることにしたのである。
 彼らに上手く噂をばらまいてもらえば、時間はかかるが、他の大陸にもその噂は広まるだろう。
 現在ホットな話題というわけで、冒険者の間では、アマミヤの塔に関しての噂は、非常に広まりやすいのである。
 それを利用することにした。
 とは言え、どうしても時間はかかるだろうが、それはしょうがないと割り切るしかない。
 何もしないよりは、はるかに確実性があるのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 そんなことを考えながらも、今一番シュレインの頭を悩ませているのは、別のことだ。
 そんなシュレインの様子を見て、側近の一人として重用している者、ゼネットが近づいてきた。
「ずいぶんと悩まれてますね」
「・・・ゼネットか・・・」
 ゼネットの姿を一瞥して、すぐに思考の渦に入り込もうとしたシュレインを見て、ゼネットは何故か含み笑いを浮かべた。
「・・・何がおかしい?」
「いえ。幼少のころより知っているシュレイン様が、まさか恋煩いにかかるとは、思ってもみませんでした」
 そう。先ほどからシュレインの頭を悩ませているのは、考助とのことである。
 反射的に否定しようと思ったシュレインは、すぐに思い直して黙り込んだ。
 どう考えてもゼネットの言葉が正しいのである。
「・・・・・・言うな。・・・吾が一番、実感しておるわ」
 いつから、と問われれば、血を飲んだ時からと即答するだろう。
 それほどまでに考助の血に魅かれてしまった。
 だが、今はそれだけではない。蓼食う虫も好き好きというべきか、どうしようもない程に彼の全てを想っている。
 とはいえ、その想いが一番伝わってほしい人物に、一番伝わっていないのだ。
「やはり、最初の血を飲んだ時の様子がまずかったかの・・・」
 考助としては、シュレインが好意を寄せていることは分かっているのだが、それはあくまで血に関してのみだと思い込んでいる節がある。
「それほどだったのですか・・・」
 ゼネットは考助の血を口にしたことは無い。
 とはいえ、考助の血がシュレインほどに影響を与えるとは限らない。
「はっきり言えば、もはやコウスケ殿以外は、伴侶として迎えることなどありえないわ。それほどの物だった」
 吸血鬼、特にシュレインのように吸血姫と呼ばれるものは、自らの伴侶となるべき者を血からも判別する時がある。
 とは言え、そのようなことはヒューマンである考助にとっては、何の意味もない。
 卵が先か鶏が先か、という議論になってしまうのだ。
「まあ、我々としては、時間がかかっても特に問題ないですがね」
 その言葉でシュレインも、ゼネットが何を言いたいのか察して、苦虫を噛み潰した様な表情になる。
「・・・・・・そういうわけにもいかんわ。コウスケ殿は、宝玉の格が上がることを望んでおる」
 正確には、ヴァミリニア宝玉から発生する神力が上がることを期待しているのだが、おそらく同じことである。
 シュレインは、ヴァミリニア宝玉から神力が発生することは知らなかった(もしくは塔に組み込まれてその性質が加わった?)が、宝玉に<格>が存在していることは知っていた。
 過去の経験則からの言い伝えによってである。
 しかしながら、その宝玉の格を上げる条件が、
「・・・全く。なぜ<格>を上げる条件が、契りを結ぶことなのだ・・・」
 シュレインはそう呟いて、肩を落とした。
 シュレイン本人としては、喜ぶべきことなのだが、何分相手があることだ。
 <格>の話をしたうえで求めれば、考助とて拒まないだろうが、そんなことはしたくはなかった。
 シュレインとて、乙女なのである。
 というか、乙女であると無理やりに自覚させられた。
「いっその事、考助様と近しい人に相談してみては如何ですか?」
「そのような者が、どこに・・・」
 ゼネットの提案に、一度は否定しかけたシュレインだが、すぐにある顔が思い浮かんだ。
 ミツキである。

 一人で思い悩んでいても、こういう時はたいてい失敗すると分かっているシュレインは、結局ミツキに相談することにしたのであった。
シュレインのお話は、まだ続きます。

2話目は20時更新です。

2014/6/11 誤字脱字訂正
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