挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

567/1254

番外編(1)

この話は、「(18)攻略者?」の後の話になります。
 ロマンたちは現在、ある問題で頭を悩ませていた。
 塔の攻略を始めたのはいいのだが、思ったよりも攻略が進まずにどうすべきか考えていたのだ。
 単純に階層の広さだけでいえば、アマミヤの塔の方が広い。
 しかし、アマミヤの塔の場合は、二層分だけ階層を進めば中級クラスの魔物が出る階層に行けた。
 ところが、ガゼンランの塔は、三十層分進まないと中級クラスのモンスターは出てこない。
 ロマンたちが相手できる適正クラスの魔物は中級クラスなので、第三十一層まで行かないと稼げる階層に行けないという事になる。
 それまでは、赤字覚悟で階層の攻略をして行かないといけない。
 第五層までは攻略したのだが、思った以上に期間がかかってしまったのだ。
 下手をすれば、三か月以上かけても第三十層より上には到達できない計算になる。
 流石にそれほどの期間、今の階層を進むには色々と問題がある。
 主に金銭面で。

「・・・・・・全く。コウたちは、たった半月で第二十層を越えたという話だが、一体どうやって進んだんだ?」
 半分は呆れ、残り半分は悔しそうにロマンが呟いた。
 周りで同じように悩んでいた仲間たちも似たような表情になった。
 すぐに中級層に行けるアマミヤの塔と違って、適正な階層にたどりつくまでは、非常に頭が痛い問題なのだ。
 その後も皆で話し合うが、どうにも良い意見は出てこない。
「・・・・・・仕方ないか。急がば回れともいうしな。突っ切って進むのが一番近道のようだ」
 ロマンがため息を吐きながらそう言うと、仲間たちもしょうがないという表情になるのであった。

 そんな結論を出して、それぞれの部屋に戻ろうとしたロマンたちだったが、ギルドに入って来た二人の女性に止められた。
「あら、ロマン。それから皆も。戻ってきていたのね」
「アリサ先生」
 丁度、依頼を終えたアリサとセシルがギルドに戻って来たのだ。
「ちょうどよかったわ。今からちょっと時間良いかしら?」
「えっ!? 今からですか?」
 唐突なアリサの言葉に、ロマンは目を瞬いた。
 今日のロマンたちは塔の攻略を終えて、昼過ぎには戻ってきていたのだが、アリサたちが戻って来たこの時間は塔の攻略に行けるような時間ではない。
 今から塔に向かうとすれば、日帰りは確実に不可能だ。
「今から行くとなると、夜営の準備とかも必要になりますね」
 ロマンがそういって仲間の一人に目配せをすると、その仲間も頷いた。
 夜営用の荷物は、その仲間の部屋に預けてあるのだ。

 先周りをして準備を進めようとしたロマンだったが、それを見たアリサが申し訳なさそうな顔になった。
「そうね。急ぎでごめんなさい。でも、今のうちにやっておくと便利だからね」
 急な予定変更も冒険者にはよくあることだ。
 アリサが何をしようとしているのかは分からないが、ただロマンたちを振り回すためにそんなことを言いだしたわけではないことは分かる。
「分かりました。長期戦ですか?」
 そういって頷いたロマンに、アリサが手を左右に振った。
「いえいえ。せいぜい三日。順調にいけば二日で済むわよ」
「それだと一層分進むだけで終わりませんか?」
「そうよ。今回は一層分進むだけなのよ」
 そう言ったアリサの言葉に、ロマンたちは首を傾げた。

 その後、ロマンたちを連れてガゼンランの塔へと向かったアリサとセシルは、そのまま転移門を使って第三十層へと転移した。
「じゃあ、このまま次の転移門に向かうから、準備お願いね」
 ギルドにいた時点で、次の転移門を目指して階層を横断することになるのは分かっていた。
 そのため、ロマンたちはアリサの言葉に特に驚くこともなく戦闘に備えてそれぞれが準備を行う。
 次の転移門までの行程は特に大きな問題が起こるわけでもなく、順調に進んだ。
 当然のようにモンスターには襲われたが、ほとんどの敵はアリサとセシルが一蹴していた。
 久しぶりに見るアリサとセシルの戦闘を、ロマンたちは改めて感嘆の想いで見ていた。
 順調に実力を伸ばしているロマンたちだったが、二人の戦闘は自分たちはまだまだ敵わない思わせるほど素晴らしかったのだ。

 そんな感じで戦闘をこなしながら、アリサたちは順調に次の転移門へと向かった。
 ギルドでアリサが予想した通り、次の日の夕方には転移門へと着くことが出来た。
 ここまで早く着くことが出来たのは、稼ぎを無視してひたすら先に進むことだけを目指したからだ。
 普通に塔を攻略していれば、こんなに早く次の転移門に着くことは出来ない。
「じゃあ、行きましょうか」
 転移門を前にしてアリサがそう言って、転移門を起動した。

 一瞬で目の前の風景が変わるのは、ロマンたちにとっては既に見慣れた光景だ。
「はい。着いたわよ。カードを確認してもらってもいいかしら?」
 アリサが次の階層に着くなりそう言った。
 ロマンは、首を傾げつつカードを取り出す。
 流石にこの場面でクラウンカードを出すようなボケはかまさない。
 そして、カードに書かれている内容を見て、ロマンは目を丸くした。
「これは・・・・・・!?」
「最高到達階層、第三十一層になってる?」
「は、はい。でもどうして?」
 アリサの確認に、ロマンが頷いてすぐ首を傾げた。
「それは簡単。ここが第三十一層だからよ」
 アリサのその言葉に、ロマンが納得したような表情になった。
「そう言う事ですか。つまり、既に到達した人がいれば、一気に飛ばして登録することが出来る、と?」
 考助たちが検証で出した結論を、ロマンもすぐに理解したようだった。
 同時に、昨日みんなで悩ませていた問題が解決したことを理解した。
「そうね。貴方たちの実力であれば、もう少し上でもいいのでしょうけれど、この塔には貴方たちが出会ったこともないモンスターも出てくるでしょうからこの階層にしたわ」
「いえ。十分です。おかげでこれからの攻略に弾みが付きそうです」
 金銭的な問題が解決して、ロマンの顔が晴れやかになっている。
 二人の会話を聞いていた仲間たちも同じような感じだ。
 その様子を見たアリサが満足したように頷いた。
「そう。それならよかったわ。これで私達の用事は終わりよ。・・・・・・それじゃあ、ギルドに戻りましょうか」
 アリサのその言葉を合図に、カードを見ていたロマンたちが動き出すのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ロマンはギルドの自室のベッドで寝転がりながら、塔の攻略カードを見ていた。
 何度見ても最高到達階層の数字は変わらない。
 アリサと別れたロマンたちは、念のため自分達だけで第三十層に行けるかどうかを確認した。
 すると、何の問題もなく第三十層へと転移することが出来たのだ。
 アリサの話では、そうしたことをすべて見つけたのは、コウということだった。
 見た目だけで言えば、さほどすごい冒険者というようには見えない。
 もっともそんな印象は、あっさりと覆されてしまった。
 今回の件でもそうだがコウの活動をみていると、一流になるためには戦闘力だけではだめなんだと思い知らされた。
 ただモンスターを倒していくだけなら、フィールドや塔の中で戦闘を繰り返して行けばいい。
 勿論、それだけでもある程度稼ぐことが出来るだろう。
 ただし、そんなのはロマンたちが目指している先ではないのだ。
 あるいはは、ロマンが目指している冒険者とは、コウたちのような存在なのかもしれない。
 そんなことを考えていたロマンだったが、いつの間にか眠りに落ちてしまうのであった。
ここから数話は、「ガゼンランの塔」編の番外編をお送りします。
まあ、ぶっちゃけると、本編にいれると長くなりすぎるので弾いた話ですw
話が前後するかもしれませんが、今回のように前書きにどの時期の話かは書いていきたいと思いますので、そちらでご確認ください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ