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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(48)結論

 淡々と語る考助を、他の者たちは黙って聞いていた。
 考助もあえて余計な感情が入らないように、事実だけを述べているのだ。
 考助の説明が不足しているところや、誤解が入りそうなところは、コウヒやミツキがフォローを入れつつ話は進んだ。
 まずはガゼンランの塔の神殿に出ている四番目の女性のことについてから始まり、聖法と魔法が生まれるきっかけになった事、それにより多くの種族が失われることになったことなど全て包み隠さず話した。
 最後に、アースガルドの世界についてを話したところで、考助は話を締めた。
「これが神域で確認して来たこと全てになる」
 考助がそう言って話すのを止めると、会議室はシンと静まり返った。
 考助はそれを黙って見ている。
 話の内容が内容だけに、それぞれが考える時間が必要だろう。
 もっともワーヒド達召喚組は、さほど反応は大きくはない。
 そもそもコウヒとミツキが召喚した六人は、過去の記憶を持って召喚されたわけではないのだ。
 そう言う意味では、コウヒやミツキに近い考えを持っているといっても良い。
 だが、この世界に根差して生まれ育った者たちは、話の大きさにしばらく呆然としている。
 召喚組は、彼女たちに気を使って言葉を発していないのである。

 やがて長い沈黙を破ったのはシュレインだった。
「正直に言えば、信じられん、というところかの。・・・・・・だが、事実なのだろう?」
「ああ。間違いなく事実だよ」
 真っ直ぐ自分を見て来たシュレインに、考助はゆっくりと頷いた。
 シュレインは、今いるメンバーの中では一番古い記憶を持っている存在だ。
 その彼女をしても、考助の話は荒唐無稽といって良い内容だったのだ。
 ただし、考助も今回の件に触れてから気付いたのだが、神という存在があるのに、考助の常識ではあって当たり前の話がこの世界には無かった。
 それが何かというと、創世神話である。
 いったい誰が、この世界を作ったのか。
 元いた世界では、地域による違いはあってもごく普通に存在してたそういった類の話が、一切存在していなかったのだ。
 それはあくまでも別の世界の常識を持っている考助だからこそ抱ける疑問であって、最初からこの世界にある者たちにとっては無いのが普通なので、疑問にすら思わないのだろう。
 彼ら彼女らにとっては、世界があって当たり前、神も存在するのが当たり前なのだから。

「コウスケさんは、どうされたいのでしょうか?」
 シュレインに続いて聞いてきたのがシルヴィアだった。
 彼女は巫女だ。
 今この場に集まっているメンバーの中では、一番神話に触れて来ていた。
 だからこそ、考助から聞いた話に一番衝撃を受けていたし、逆に立ち直りも一番早かった。
 神々が普通に存在しているこの世界では、神の神託によってこれまで常識とされてきたことが覆されることはよくあるのだ。
 もっとも、よくあるといっても、神々の感覚で言えば、という注釈はつくのだが。
 神話に触れれば触れるほどそう言う事例は多い。一番最近では、それこそ現人神の出現という身近な例があるのだ。
 シルヴィアにとってみれば、今更という感覚もあるのだろう。
 そんなシルヴィアに、考助は首を左右に振った。
「正直に言えば、この話を表に出したとしてどんな影響があるのか、僕には全く予想が付かないんだ。今のみんなの反応も予想以上だったしね」
 勿論考助としても、かなりの衝撃を与えることになるだろうとは予想していたが、今の反応は予想以上だった。
 考えてみれば、自分自身の根本を支える世界の成り立ちの話なのだから当然と言えば当然かもしれない。
 考助自身がそういった意識が薄い世界から来ているから、なおさら予想しがたかったのだ。
「だからこそ、今回の件はどこまで開示するのかあるいはここだけの話で終わらせるのか、みんなの意見をきちんと聞きたかったんだよ」
「・・・・・・そう言う事でしたか」
 考助が此方の世界と感覚がずれている所があるのは、ここにいる全員が把握していることだ。
 その納得できる理由に、シルヴィアが頷くと同時に他の者たちも納得の表情を浮かべるのであった。

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 落ち着きを取り戻した一同の話し合いにより、結局全ての話は秘匿されることになった。
 そう決まった決定的な理由が、西大陸にあるガゼンランの塔にだけアスラが存在した証拠があるのがまずい、というフローリアの意見だった。
 三大神を束ねる存在が示された神殿が西大陸にだけ存在していると、どうしたってそこにいる者たちは自分たちが世界の始まりだったと主張しかねない。
 その意見に、神職の立場からシルヴィアが同意したことが決定的になった。
 下手をすれば、宗教戦争さえ起こることさえあり得るのだ。
 そんな事はこの場にいる誰も望んでいない。
 幸いにして、神殿の事を知っているのは、この場にいる者たち以外にはリリカだけだ。
 リリカ自身も全ての話は知らなくても、事の重大さは理解できていた。
 わざわざ口止めを強要しなくても理解できるだろうというのがシルヴィアの考えだった。
 この場にいる者たちで一番リリカの事に詳しいシルヴィアの意見に、全員が納得するのであった。

 ようやく落ち着いた場の空気に、フローリアが悪戯っぽい表情を考助に向けて来た。
「それにしてもコースケは、よくよく面倒事に巻き込まれるな」
「まったくねえ。私の里の時もそうだけれど、普通はこんなに頻繁に重大事には当たらないはずなんだけれど?」
 そのフローリアに同調するように、コレットが頷いた。
 それに対して考助が何かを言うよりも早く、シルヴィアが止めを刺してきた。
「現人神とはいえ、神が世界をうろついているのですから、向こうからトラブルがやってくるのは当然だと思いますわ」
「ぐぐっ・・・・・・!」
 その絶大な説得力を持つシルヴィアの言葉に、考助が唸り、他の全員が納得した表情になった。

 しばらく悔しそうにしていた考助は、落ち込んだ表情になった。
「・・・・・・わかったよ。もう管理層から外には出ない」
 そう言っていじけてしまった。・・・・・・ように見えた。
 というのも、それを見たシルヴィアたちが若干慌てて何かを言おうとしたのだが、それよりも早くコウヒとミツキがこう続けたのだ。
「そうですね。例え、どんなに欲しい素材が見つかっても、ご自分で取りに行こうとしたりもしないですよね」
「・・・・・・え?」
「そうそう。どんなに珍しい場所があっても、見学しに行こうなんて言ったりもしないわよね」
「・・・・・・・・・・・・ゴメンナサイ」
 本気で言ったわけではない考助の言葉を見抜いた二人によって、あっさりと撃沈してしまった。
 そのやり取りを見た他の者たちは、やっぱりコウヒとミツキにはまだまだ敵わないと認識を新たにした。

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 結局考助たちは、ガゼンランの塔に関してこれ以上の攻略を続けるのは止めることになった。
 そもそも攻略を進める理由になっていた「誰かが攻略したのではないか」という疑問は既に解消しているので、進む意味が無くなってしまったのだ。
 ついでに言えば、過去にアスラが攻略した塔を自分が上書をするような真似をしたくないという考助の考えもある。
 アスラ自身は考助がガゼンランの塔を攻略したところで何かを言ったりはしないだろうが、そこは考助の気分の問題だ。
 こうして数か月にわたって行われたセイチュンでの活動も終わりという事になったのであった。
これで長かったガゼンランの塔編は終わりになります。
長かったですが、書きたかったことはきちんとかけたと思います。
ちなみに、アスラの事に関しては、ちゃんと最初から考えていました。
後から考えた設定じゃないですよ?w
※三つの水の名前は、書いている最中に考えました。

さて、次の話はどうしようか。
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