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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(47)重大な決断

 神域から管理層へと戻った考助は、誰も来ないようにと言ってコウヒとミツキだけを連れて部屋に入った。
 別に誰かを疑っているわけではないが、念には念を入れて話を聞かれないように結界で情報を遮断までしている。
 その厳重さに、さすがのコウヒとミツキも顔を引き締めていた。
 いつもなら何も言わずに他のメンバーに話をするのだが、まず先に二人に話をすることにしたのは、二人がアスラに創られた存在だからだ。
 そう言う意味ではハクも同じなのだが、考助にとってはハクはやはり「娘または養女」という意識の方が強いので、やはりこういう場合は二人に話をすることになる。

 神域でアスラから聞いた話を二人にし終えると、コウヒもミツキも深々と溜息をついた。
 考助がここまで厳重にした理由と最初に二人だけに話した理由を察したのだ。
「これだけ話せばわかると思うけれど、皆にはどこまで話したらいいか、先に相談したかったんだ」
 三大神を従える存在がいたことは、既にガゼンランの塔の神殿で知られてしまっている。
 考助もその部分を隠すつもりはない。
 一般に広めるかどうかは話し合い次第だが、問題はそれ以外の話だ。
 アスラが神として認められたのが西大陸が初めてだとすると、セントラル大陸を除く他の三つの大陸はどういう事で繋がったのかという話もある。
 その辺りの事は、考助も詳しく聞いてこなかった。
 アスラの口ぶりからして、今あるアースガルドの世界の形になったのが、神話よりも遥かに前の事だというのは分かっている。
 当然、そんな時代の話は、どの大陸にも伝わっていないだろう。
 ただし、その時代でも何かの種族がいたのは確かなのだ。
 あるいは、何かの伝承として話が伝わっている可能性もある。
 そうなると、西大陸が余計な主張をしださないとも限らない。
 そんな面倒なことを起こすつもりは、考助には無い。
 そもそも、アスラの生まれた地が西大陸だったとして、他の三つの大陸に他の種族がいた可能性だってある。
 神であるアスラがいた大陸だからと言って、そこが今の世界の中心であるとは言い難いのだ。

 様々な問題がはらんでいる今回の話に、さすがのコウヒとミツキもどうすべきが悩んでいるようだった。
 しばらく黙っていたミツキが話を切り出した。
「考助様は、どうするつもりなの?」
 そう聞いてきたミツキに、考助はすぐに口を開いた。
「まず、アスラの存在に関しては、皆に話すつもり。これは確定」
 これを聞いたコウヒとミツキもすぐに頷いた。
 これに関しては、既に絵画として見られているので、隠す方がおかしいだろう。
「最初の問題は、その存在を外に広めるか、だね」
「そうですね」
 その問題に、コウヒがそう言ってため息を吐いた。
「というか、アスラの存在も含めて、どこまで外に広めるかどうかが問題なのか」
 二人に話しているうちに、大元も問題がわかって考助が少しだけすっきりした顔になった。
 だからと言って、根本の問題が解決したわけではないのだが。
「確かに、そうね。・・・・・・いっそのこと、皆には全部の話をしてしまったら?」
「・・・・・・というと?」
 考助はミツキの顔を見て、彼女が投げ出してそう言ったわけではなく、きちんと考えた上でそう言ったことを察した。
 だからこそ、そう考えた理由を聞きたかったのだ。
「私達は結局、この世界にとっては『お客様』だからよ」
「・・・・・・そう言う事ですか」
 ミツキの言葉に、隣で聞いていたコウヒがポツリとそう言った。
 考助も聞いた瞬間、納得すると同時に寂しい想いがした。
 ミツキの言う通り、別の世界から転生した考助もアスラによって生み出されたコウヒやミツキもこの世界にとってはお客様でしかない。
 先の事がどうなるかは分からないが、この世界の魂の輪廻の輪に入らない限りは、それは変わることのない事実なのだ。
 それならば、きちんとこの世界の住人として生まれたメンバーたちに全てを話して、どういう判断をするのか聞いた方が良い、というのがミツキの考えなのだ。

 ミツキの提案を聞いて、考助はしばらく腕を組みながら目を閉じて考え込んでいた。
 その間、コウヒもミツキも邪魔をすることは絶対にしない。
 むしろ、他に邪魔する者が出ないようひたすら周囲に気を配っている。
 アマミヤの塔の管理層で、しかも考助自身が張った結界があるのだが、それでも邪魔する者が出てこないわけではない。
 どの世界でも絶対という事はあり得ないのである。
 結局、十分ほどそうしていた考助は、最後に結論を出して皆のいる部屋へと向かうのであった。

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 管理層の会議室は、ちょっとした緊張に包まれていた。
 普段であればちょっとした気楽な雑談でもしているはずが、そんなこともなく考助たちが来るのを待っていた。
 会議室には、ワーヒドを始めとしたコウヒとミツキが召喚した六人と、聖魔の塔と四属性の塔の管理をしている六人が集まっている。
 塔の管理をしている六人とは、シュレイン、シルヴィア、コレット、ピーチ、フローリア、ハクの事だ。
 これだけのメンバーが一堂にそろうこと自体が珍しいが、それ以上なのが考助から直接招集がかかったということだ。
 ごくまれにだが、自然発生的に集まることはある。
 それでも、それはあくまでも自然な流れでそうなるだけで、こうして考助が最初から意図して集めることなど今まで皆無だったのだ。
 ここに集まっているメンバーは、話の内容はある程度予想が付いている。
 ガゼンランの塔にある神殿で、四番目の女性が書かれていたことは既に全員が把握している。
 加えて、その確認のために考助がわざわざ神域にまで足を延ばしたことも知っているのだ。
 それだけで、これから考助が話す事が重要だという事を示していた。

 考助がコウヒとミツキを伴って部屋に入ってくると、更に部屋の空気がさらに緊張感に包まれた。
 その雰囲気を感じ取った考助は、小さく笑みを浮かべて言った。
「緊張感を持つのは悪いことじゃないけれど、そんなに緊張してたら正常な判断も出来なくなるよ?」
 その考助の言葉で部屋の空気感が若干弱まった。
 考助を見る限りでは、いつも通りの雰囲気を感じたのだ。
 少なくとも、今のこの状態を大きく崩すような話ではないと理解したのだ。
 そう。特にシュレインを始めとした女性たちは、考助がこの世界を離れるとかそう言ったことまで心配していたのだ。

 考助の指示でミツキが飲み物を用意する間、考助が前置きを話した。
「これから話すことは、この世界にとってとても重要な事だから、それを気に留めておいてほしい」
 そう言ってから、コウヒと二人で会議室に強力な結界を張った。
 それを見たここに集まった者たちは、気を引き締めた。
 これまで考助とコウヒが力を合わせて結界を張るなんてことは今まで一度もなかったのだ。
 これから話す話が、どれほど重要なのか、それだけでも十分理解できる。

 ミツキが飲み物を配り終えるのを待ってから考助がようやく話を切り出した。
「まず先に言っておくけれど、これから話す話はきちんと神々に確認を取った上で話すことになる。当然、嘘偽りなどないことを分かってほしい」
 そう言って考助は、集まった者たちの顔を見回した。
 全員が思い思いの顔で考助を見て来たが、その誰もが考助の事を信用しているといった表情だった。
 これなら大丈夫と判断して、考助は本題を話し始めるのであった。
前置きだけで一話使ってしまいました。
まあ、必要だと思って書いていますので、楽しんでいただけたらと思います。
次話はいよいよ真実の歴史(?)を話すことになります。
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