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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(42)風呂

 塔攻略ギルドとの話し合いを終えてから三日後には、<神狼の牙>がクラウンの傘下に入ることが正式に発表された。
 同時に今まで<神狼の牙>が使っていた建物は、クラウンの支部となることも併せて公表されている。
 事前に噂として流れていたのが功を奏したのか、その二つの話を聞いたセイチュンの住人たちは特に大きな反発をすることなく受け入れていた。
 勿論、全員がもろ手を上げて賛成しているというわけではなく、中には大きく反対している者たちもいる。
 反対している者たちの多くは、これまで冒険者ギルドとして名をはせていた大手ギルドの者たちがほとんどなのだが。
 公的ギルドは元々私的ギルドに関することは、表だって意見することは無い。
 闘技場ギルドは、新たなヒロインであるコリーが所属している以上、反対することは無い。
 塔攻略ギルドは、表だって反対も賛成も表明していないが、私的ギルドの呼びかけには全く答えないことから、どちらについているかは明白だ。
 何より大きいのが、セイチュンにある大手三つの商人ギルドがクラウン支部の設置に賛成していることだ。
 これだけの条件が揃えば、いかにセイチュンでは冒険者ギルドの力が強いといってもどうしようもないのだ。
 何より、クラウン支部になる前の<神狼の牙>が冒険者ギルドとして名を馳せていたのも大きく影響しているのである。

 クラウン支部として立ち上がった以上、もう考助がセイチュンで出来ることはほとんどなくなった。
 あとの事はシュミット、ガゼランを含めた幹部たちに任せればいいのだ。
 そういうわけで、考助たちは本格的にガゼンランの塔の調査へと乗り出していた。
 今回からは上級モンスターが出てくる第六十一層以上を目指すため、コウヒも同行している。
 既に通いなれた道を通って第一層にある転移門へと向かい、そこから第六十層へと飛んだ。
 第六十層の調査は終わっているので、すぐに第六十一層へと飛び、そこからはくまなく階層を調査することになった。
 今回は第六十一層から第六十五層までをくまなく調査したのだが、ちょっとした変化があった。
 出て来た水は<アエリスの水>と<ラスピカの水>の二種類だったのだが、明らかに遭遇する頻度が多くなっていたのだ。
 第六十層までは二~三階層に一つ泉があればいい感じだったのだが、第六十一層は一階層に一つは特殊な泉があった。
 第六十四層と第六十五層にはそれぞれの水がひとつづつあったのだ。

 第六十五層の泉を前にして、考助が首をひねっていた。
「あからさまに数が増えているね」
「入り込む人が少なくなったからでしょうか?」
 考助の言葉に、リリカがそう呟いた。
「人の出入りが少なくなったからというよりも、泉で水を持っていく存在が少なくなったからとかじゃないですかね~?」
 リリカの言葉に、ピーチも同調するようにさらに予想を付け加えて来た。
「その割には、他の泉がただの水になっているのが気になるんだよなあ」
「月日が経って普通の水に変わったとかじゃないですか?」
「だとすると今度は、なぜここの泉が残っているのか、というのが疑問になるんだよなあ」
「あ! そうか。そうですよね」
 考助の疑問に、リリカが納得したような声を出した。

 ただ、そんなことを言った考助だったが、リリカが言ったことも間違っていないという考えも持っている。
「うーん。なんかどこかでこれと同じような現象を見たか、聞いたことがあるような・・・・・・」
 考助は、答えが出そうで出てこない中途半端な気分になっていた。
 しばらく首を捻りながら考えていたが、どうしても思い出せない。
「駄目だな、これは。全然思い出せないや」
 首を振った考助は、その内思い出せるだろうと、考えるのを諦めるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 第六十五層にある転移門から第六十六層へと越えた考助たちは、一旦支部へと戻ることにした。
 塔攻略ギルドのカードは、きちんと最高到達階層が第六十六層へと到達したことが記されている。
 記録更新したパーティがいれば、クラウン支部の運営にも弾みがつくだろうと考えての事だ。
 ここから先も攻略していく予定だが、これ以上の記録更新は公表するつもりはない。
 今更感があるが、変に目立っても今後に支障があるためだ。
 そんなわけで、第六十五層を攻略し終えたことを塔攻略ギルドできちんと報告して驚かれたあとに、考助たちはクラウン支部へと戻った。

 クラウン支部が出来たと公表された以上、クラウンのメンバーである考助たちは大手を振って転移門を利用することが出来るようになった。
 既にクラウン支部側には、本部から転移して来ている冒険者たちが、かなりの数来ているようだった。
 転移門を利用すれば一瞬で移動できるので、アマミヤの塔に拠点がある冒険者たちも気軽にガゼンランの塔の攻略が出来るようになったのだ。
 そのことを知った冒険者たちが転移門を使ってきているのである。
 考助たちが使う転移門は、そうした一般の者たちが使うものではなく、一部の幹部たちが使うような転移門を利用することになっている。
 セイチュンでは、既に名が知られたパーティとなっているので、その程度の優遇はされていても変な勘繰りはされることが無い。
 転移門でどこに転移したのかは知られることが無いので、普通に管理層へと飛ぶことが出来るのである。

 支部で作業をしていたシュミットとガゼランに、第六十一層から第六十五層の様子を報告した考助は、すぐに管理層へと戻った。
 セイチュンに支部が出来れば管理層に戻ってくることは分かっていたので、今回は管理層にいたメンバーもさほど騒いだりはしなかった。
 転移門が出来ているおかげで、いつでも戻ってこれるか、もしくはセイチュンに行くことが出来ることがわかっているためだ。
 一通りメンバーに挨拶を交わした考助は、早速風呂へと向かった。
 基本的に考助が管理層にいるときは、アイテムを作っているか寛いでいるか、風呂に入っているかだ。
 前回戻ってきたときも真っ先にしたことは風呂に入ることだった。

 管理層にある風呂場は、何度かのカスタマイズを経て、かなり豪華な仕様になっている。
 風呂場でゆったりとくつろいでいた考助だったが、乱入者が来たことに驚いた。
 シュレインだった。
「あれ? どうしたの? 珍しいね」
 風呂には普通に入るシュレインだが、考助と一緒に入ることは珍しい。
 種族的な禁忌とかがあるわけではなく、単に恥ずかしいからと以前に言っていた。
 ちなみに、他のメンバーは都合が合えば結構頻繁に一緒に入ったりしている。
「なに。たまにはいいのではないかと思ってな」
「そう。まあ、僕はいつでも歓迎だけど」
 そんなことを言いながら、考助はジッとシュレインを見た。
「こら。どこを見ておる。・・・・・・まあ、こんなところで、そんなことを言うのも無粋か。それよりも、ほんとにコウスケは風呂が好きだのう」
 考助の視線を感じて、そんなことを言いながらもシュレインはどこか嬉しそうな表情になっている。
「そりゃあね。本当ならここにも温泉があれば、引き込みたいんだけど・・・・・・? あっ、そうか! 温泉か!」
 そう叫んだ考助は、つかえが取れたようなすっきりとした表情になった。
 そんな考助を見て、シュレインは首を傾げた。
「なんだ。何かわかったのか?」
「ああ、多分ね。ガゼンランの塔にある泉について、何故あんなランダムなのか分かったかも」
「ほう。それはよかったの」
 多少は考助から話を聞いていたシュレインがそう言った。
 だが、そのあとに考助は頭を掻いた。
「だからと言って発見しやすくなるとかそう言うわけじゃないんだけどね。まあ、それはいいや」
 取りあえず、特殊な泉の配置がランダムになっている理由について、恐らくと思われる理由を思いついた考助は、すっきりとした表情になった。

 そして考助は、胸のつかえがとれた開放感とともに、シュレインと一緒に入る風呂を楽しむのであった。
温泉の話を入れたいがために、わざわざ風呂のシーンを入れました。
・・・・・・今更過ぎて、需要があるかは分かりませんので、ドキドキしております。
温泉と泉については、次話で詳しく話します。
といっても、大体わかるでしょうが。
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