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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(35)カードの意味

 第五十九層へ移動した考助たちは、そのままその階層の泉を調べることにした。
 結果として、第五十九層にあった泉は全部で五個。
 その全てが、ただの水だった。
「第五十八層が偶々だったのかな?」
 第六十層へと続く転移門の前で、考助が首を傾げていた。
「どうでしょうか~?」
「もう一度きちんと他の階層を調べないと分からないでしょうね」
 同じように首を傾げているピーチとリリカがそう言った。
 一応今まで通って来た階層で、泉がある場所はきちんと記録してある。
 見つけた泉の全てをくまなく調べても数か月単位で時間がかかるわけではない。
「まあ、いいか。ここで悩んでいてもしょうがないから、先に進もう」
 そう言った考助は、まずは当初の目的通り第六十層を越えて第六十一層へと向かった。

 第六十一層を目指すといっても第六十層の泉を調べないわけではない。
 他の階層と同じように階層をくまなく調べたが、第六十層にあった泉の数は全部で三つだった。
 ただ、これもまた第五十九層と同じように空振りで、全てただの水だった。
 その同じ結果に、考助は再び首をひねった。
「うーん。偶々第五十八層に特殊な泉が偏っていたのかな?」
 他の階層も調べてみないと分からないが、つい気になってそう言ってしまう。
 もっとも、気になっているのは考助だけではなく、他のメンバーも同じだ。
「いまいちよくわかりませんね。泉の数自体も各階層でバラバラですし」
「なにかの法則があるというわけではなさそうですね~」
 リリカもピーチもそんなことを言いながら、なにか見落としていないかと色々考えていた。

 今のところ分かっているのは、泉が分布しているのは第五十二層から第六十層までの全ての階層であるという事だ。
 その数は、リリカが言った通りまちまちで特に共通して存在しているわけではない。
 さらに言えば、今分かっているのは、第五十八層に二つ特殊な効果を持つ水が取れるという事だけだった。
 ついでに考助にしてみれば、二つの水を使って何か面白い道具が作れないかなどと考えている。
 もっとも、どちらも道具用というよりも薬用と言った方が近いかもしれない。
 今のところ使い道が思い浮かぶのは、汲んできた水を使ってお茶にするとどうなるかということくらいである。

 そんなどうでもいいことを考え始めた考助は、首を左右に振った。
「駄目だね。思考がそれてきているや。まずは、第六十一層に向かおう」
 考助がそう声をかけると、それぞれが移動のために持ち場に付いた。
 持ち場と言っても馬車の中に入ったり、御者台に着いたりするだけだが。
 考助だけは、転移門を動かすために馬車には乗っていない。
 転移門のあるところまで馬車が進んだのを確認した考助は、自分も門の中に入るようにしながら転移門を動作させた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 第六十一層へと着いた考助たちは、すぐに第一層へと転移した。
 当初の目的が達成できたかを確認するためだ。
 塔の外に出てすぐにカバーを外して記載されている内容を確認すると、考助の希望通りの結果となっていた。
 塔の最高到達階層は、第五十六層のままで表示されていたのだ。
 この結果自体は、下層で確認していたので予想は出来ていたが、問題は次である。
 またカードをカバーで覆って、再び塔の中へととんぼ返りをしてその階層に飛べるかを確認しに行った。
 その結果は、第六十層に飛ぶことが出来る、というものだった。
 それもある程度考助の予想の範疇だった。

 だが、考助の横ではリリカが首を傾げていた。
「カードが第五十六層で止まっているのに、第六十層には飛べるんですね?」
「そうだね。要するに、転移門の動作とカードの表示はあまり関係が無いというわけだね。いや、厳密に言えば関係しているんだけど」
「・・・・・・どういう事ですか?」
 考助の言ったことがわからずに、リリカは首を傾げていた。
 ちなみに、今考助たちは第六十層にいるので、周りには他の冒険者たちは誰もいない。
 塔の秘密に関わる話をしていても、誰も聞きとがめる者はいない。

 そんな状況なので、考助は何の気兼ねもなくリリカに話をしていた。
「そもそも他の塔を見ていてもそうだけど、基本的に塔の攻略をするには本人達だけがいればいい。塔の転移門はあくまでも攻略者の魔力だけで動いているんだ」
 塔の攻略をするのに、カードを使うといった手法を使っているのは、今考助たちがいるガゼンランの塔とクラウンカードを使っているアマミヤの塔だけだ。
 アマミヤの塔は、クラウンカードが無くとも塔の攻略自体はすることが出来る。
 クラウンカードがあれば、ガゼンランの塔と同じように今まで攻略した階層からやり直すことができるというだけだ。
 そう言う意味では、クラウンカードとセイチュンの塔攻略ギルドのカードは同じような機能になっているといえる。
「ただ、クラウンカードもそうだけど、必要なのは当人の魔力だけなんで、本当はカードは必要ないんだよ」
「え!? そうなんですか?」
 今まで知らなかった事に驚いたリリカに、考助は頷いた。
「あれはね。転移門というか塔自体が、個々の攻略者の魔力を登録していて振り分けているんだよ。カードはあくまでもクラウンの管理上分かりやすくするためあるんだ」
「そうだったんですか」
 納得したような表情になったリリカに、考助がさらに続けた。
「だから、多分ここの塔も同じなんじゃないかな? アマミヤの塔の場合、ショートカットが使えるのはクラウンカードを持っている者だけに限定しているけど、こっちは全員が使えるようになっているとかね」
「なるほど。よくわかりました」
 考助の説明に、リリカが大きく頷いた。

 その話を聞いていたピーチが、とある質問を考助にぶつけて来た。
「だとすると、ガゼンランの塔のこのカードは何のために作ってあるのでしょうね~?」
 もっともなピーチの疑問に、考助も頷いた。
「それはよくわかんないんだよね。単純に、攻略者に分かりやすくするために作ったのかもしれないよ」
 長期間塔の攻略をしていると、似たような風景が続くために自分達がどの階層にいるのか分からなくなる時がある。
 そうしたことを防ぐために、階層表示されるカードが出来たのかもしれない、と考助は予想している。
「え~? でも、今いる階層は表示されないですよね、これ」
「だから、長い間にその表示は無くなってしまったんじゃないかと。不自然に空欄があったりするし」
 考助の言う通り、最高到達階層と使用可能短縮転移門の間に不自然な空欄がある。
 最初からそう言う物だと言われればただの空欄にも見えるが、改めて言われてみればそこに何かの表示がされていたとしてもおかしくはない幅が空いている。
「なるほど~」
「ま、完全にただの予想だけどね。本当にそうだとしたら、多分無くなったのが古すぎて、資料も残ってないとかじゃないかな?」
「それはありえますね~」
 今話したのは、あくまでも予想でしかないが、ある程度は当たっていると考助は考えている。
 その方がカードがある意味もしっくりと来るのだ。

「取りあえず目的も果たしたし、ギルドに戻ろうか」
 考助がそう声をかけると、色々と思う所があったのか、考え込んでいたメンバーたちが動き始めた。
 作った道具の効果を調べるという目的以外にも、予想外の結果が付いてきたため意外に時間がかかってしまった。
 コウヒの対戦もあと一週間後に迫っている。
 その間どうするかはまだ決めていないが、考助たちもその対戦は観戦することを決めているのだ。
 今回の攻略で、塔の攻略状況を誤魔化す道具もしっかりと機能することが確認できた。
 お陰で周囲の目を気にせず、本格的に高階層の調査に乗り出すことができるようになるのであった。
本格的に塔の調査を行うための準備が完了した考助たちでした。
ただし、本格的な調査が始まる前に、コウヒの対戦があります。
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