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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(34)手がかり

 対戦相手が決まったコウヒだが、相手が相手だけに実際の対戦が行われるのはかなり後になっている。
 注目される対戦になるのは分かりきっているので、闘技場ギルドでも十分な準備を行うのだ。
 というのは建前で、実際のところは賭けの収益を上げるためにある程度の期間が設けられるのである。
 今一番注目されている闘技者のコリーとランク一位の対戦とあって、ジアーナ戦で不正が行われたのでは無いかという意見は一蹴されていた。
 ここ最近ではなかった大型の対戦に水を差すような真似をすれば、たとえ幹部であっても首が吹き飛びかねない。
 それほどまでにこの対戦で多くの金が動くと予想されているのだ。
 結果としてセイチュンの街は、リークという名の事前告知によって、この対戦の話でもちきりになるのであった。

 そんな周囲の反応を余所に、当のコウヒはというと考助の塔の攻略に同行していた。
 正式な日程は決まっていないが、十分に期間が設けられることがわかっているので、喜び勇んで考助の護衛をしているのである。
 当然ながら(?)、対戦に向けて事前調整をするなどという事は全く考えていなかった。
 たまたまギルドを尋ねてきてそのことを知ったジアーナが、呆れたようにため息をついていたのはまた別の話だ。
 もっとも考助も考助で、こうなることはきちんと予想していて、コウヒが使う道具もしっかりと用意してあった。
 コウヒが付いて行くといった段階で、道具を渡したのだ。
 結果として、コウヒも同行したうえで考助たちは、第五十六層からの攻略を再開するのであった。

 まず最初に確認したのは、考助が作った魔道具がきちんと目的通りに動くかどうかである。
 第五十六層を越えて、第五十七層に入ってからすぐに、考助たちは一旦ガゼンランの塔から外に出た。
 そこでカードの表示を確認したのだが、全員のカードの到達階層が「第五十六層」で表示されていた。
 考助の意図通りの結果になったのだ。
 後は、その状態で第六十一層を越えたときにどうなるかを確認するだけだ。
 カードの到達階層が第五十六層のままで第六十層へのショートカットを使えればそれでいいし、使えなかったとしても第五十六層からもう一度調査を仕直せばいい。
 第五十六層からになったとしても、手間はかかるがそれはそれで仕方ないと諦めた。
 それに、コウヒの対戦が終わってから、どちらにせよ第六十一層への階層到達は公に報告するつもりでいるのだ。
 しばらくの間は不便ともいえるが、それくらいは誤差の範疇と考えていた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 取りあえず第六十一層を越えるつもりで塔を攻略していた考助たちだが、それぞれの階層の調査もある程度は進めていた。
 調査がある程度で終えているのは、第六十一層に向かう事を優先していたのもある。
 だが、それ以外にも他の階層で見つけていた泉の発見する頻度が、階層が上がるほどに多くなっていったのだ。
 第五十八層に上がった考助たちは、真っ直ぐに次の階層に行くための転移門を目指したのだが、その途中で探すつもりもなく見つけることが出来たほどだ。
「うーん。なんだろうな? 段々とあからさまになっている気がするんだけれど?」
 泉の前で首を傾げる考助の隣で、ピーチが頷いていた。
「そうですよね~?」
「むしろ、見つけてください、と言っていますよね。これ」
 リリカが泉の水を手ですくいながら、そんなことを言っている。
 例によって、この泉の周りにはモンスターの姿は全く見えない。
 ここまで考助たちは、転移門までの最短距離を進んできていたのだが、他の冒険者達がこの泉を見つけていないとは思えなかった。

 泉を前にして首を傾げる一同だったが、やがてコウヒが口を開いた。
「もしかしするとですが・・・・・・」
「ん? 何か思い当たることあったら言って」
「はい。この泉の水に何らかの効果があって、秘匿されているという事はありませんか?」
 コウヒの言葉に、考助は虚を突かれたような顔になった。
「え? でも、左目で確認したけれど、特に何もなかったよ?」
「それは、他の階層で、ですよね?」
 コウヒが言っているのは、泉の中には特殊な効果がある水がある場合があるのではないか、ということだ。
「はっはっは。いや、まさかそんな」
 考助も全ての泉ごとに水を掬って調べたりはしていなかったので、そんなことを言いながら目の前にある泉の水を調べてみることにした。

 ミツキから水を入れる器を出してもらってから水を調べた考助は、ガックリと肩を落とした。
 神の左目にはしっかりとただの水ではなく、<アエリスの水>と書かれていた。
「・・・・・・こんなミスをするとは」
 そう言って大きくため息を吐いた考助に、ミツキが慰めるようにポンと肩をたたいた。
「器というか、泉の形にばっかり注目していたから、仕方ないわよ」
「そ、そうですよ! それに、一般の依頼には出ていなかったのですから、気付かなくても仕方ありません!」
 ミツキに追随するように、リリカがフォローを入れた。
 一方で、ピーチは泉の水をすくって調べていた。
「ん~? この泉の水が何か特殊な水には見えないのですが? どういう効果なのでしょうか~?」
「何でも、飲料にしても化粧水にしても美容に効果が・・・・・・」
 あるみたい、と言おうとした考助だったが、それにピーチが思いっきり反応した。
「まさか、<アエリスの水>ですか!?」
 いつものおっとりとした反応とは全く違った様子に、逆に考助が驚いた。
「あ、うん。そうなっているけれど?」
 その考助の答えに、ピーチが大きくため息を吐いた。
「<アエリスの水>がまさか、ガゼンランの塔での採取物だとは思いませんでした。それは出回る数が少ないわけですね~」
 ピーチは、水そのものに心当たりがあるようで、そんなことを言った。

 考助は念のためリリカの方へと視線を向けたが、こちらは首を左右に振った。
「ピーチ、その水のこと知っているの?」
「はい~。といっても高貴な人たちだけに手が出せる、超高級な美容品と言うことくらいしか知らないですが。数が少なくて、一般には全く出回っていないそうですよ」
「ん~? と言う事は化粧水とかにして薄めて加工したりしているのかな?」
「恐らくそうでしょうね~。ただ、<アエリスの水>がここでだけで取れるとすれば、ですが」
 ピーチの言葉に、考助は一つ頷いた。
「それもそうだね。まあ、でも。そこまでの高級品ならあちこちで取れるとは考えづらいな。それに、最初に確認した泉みたいにただの水の可能性もあるし」
「そうですね~」
「という事は、これからは全部の泉の水を調べていくと言う事ですか?」
 リリカの疑問に、考助は頷いた。
「うん。まあ、大した手間ではないしね。それに、この泉で特殊な水が<アエリスの水>だけなのか、それとも他の水もあるのかも調べないといけないしね」
「そうでしたね。わかりました」
 その考助の意見には、リリカだけではなく、ピーチたちも頷いた。

 <アエリスの水>の泉をあとにした考助たちは、まずは第五十八層をくまなく調べてみた。
 すると、泉の数は全部で五カ所で、その内一つが<アエリスの水>で、もう一つが<ラスピカの水>となっていた。
 残りの三つはただの水だ。
 全ての泉に何らかしらの名前が付いているわけではなく、内心でホッとした考助だった。
 こうなってくると他の階層にあった泉がどうなっているかも気になってくる。
 だが、今はカードの確認をすることが優先なので、先を目指すことにした。
 今までの様子からすれば、この上の階層にも同じような泉は出てくるだろうと考えているのだ。
 ようやく何かの手掛かりになりそうなものを見つけた考助たちは、次の階層を目指して転移門へと向かうのであった。
考助のうっかりミス発覚!
本文にもありますが、最初に見つけたときの泉の水はきちんと調べていましたが、他の泉は飛び飛びでしか調べていませんでした。
調べた水の全てがただの水です。
それがどういうことなのかは、のちの話で判明します。
(突込みを受けそうなので先に書いておきました)
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