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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(33)攻略準備と次の対戦相手

 第五十六層へ到達した考助だが、その先の調査は一旦保留となっていた。
 というのも、考助が用意する物があるといって、アマミヤの塔の管理層に引きこもってしまったのだ。
 先日のコウヒの闘技場での戦いのようなイベントがあるときはセイチュンに来ることもあるが、基本的には管理層に入り浸っていた。
 その間、集めた情報を纏める必要があるピーチやリリカたちは、セシルやアリサと共に塔での魔物の討伐に勤しんでいた。
 第五十六層から先の攻略は行っていない。
 考助に止められているためだ。
 第五十六層から先の攻略を止めているのと、考助が作ろうとしているものには関連性があるのだ。
 要するに、今は考助が作っているアイテムが出来るのを待っている状態というわけだ。

 コウヒの闘技場での活躍を筆頭に、考助たちの第五十六層への到達、その他のメンバーの活動などから<神狼の牙>の影響力は確実の大きくなっていた。
 唯一のネックとなっていた人数の少なさも、クラウンから人が補充されたことにより解決している。
 クラウン側もセイチュンの活動を補佐するように動いているので、そろそろ<神狼の牙>の後ろ盾にクラウンがあることを公表することも考えている。
 発表するタイミングとしては、考助たちが第六十層を越えてからが良いのではないかという事になっている。
 現状、第六十層を越えて活動できる冒険者がほとんど皆無に近いため、多少強引なことをしても許される状況にあるためだ。
 だが、肝心の考助が何かをやっているので、今はまだ公表については控えているのである。

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 考助が管理層へと戻っているのでミツキは一緒に付いて行っているのだが、コウヒはひとりでセイチュンに残っていた。
 何かがあったときに管理層から戻ればいいと主張したのだが、考助が認めなかったのだ。
 今はまだ、クラウンのことを正式に発表していないので、突っ込まれる要因をなるべく少なくした方が良いという配慮だ。
 その配慮が効いたのか、そのコウヒは今、ギルドで訪問者と会話をしていた。

「貴方が直接こちらに来るとは思っていませんでした」
 エクが用意した飲み物を一度口に含んだコウヒが、訪問者を前にそう言った。
 その相手が、コウヒの言葉にわずかに笑顔を見せて頷いた。
「そうでしょうねえ。私もこんなことをすることになるとは思っていなかったもの」
 コウヒを訪ねて来た相手とは、先日戦ったばかりのジアーナだった。
 そんなジアーナに対して、コウヒは目を細めた。
「という事は、誰かに言われてこちらに来たと?」
「半分正解で半分は不正解ね」
 そう答えて来たジアーナに、コウヒは首を傾げた。
「確かにカルメンとかヤーナ辺りに言われてきたというのはあるけれど、貴方が思っているような所からは何も言われていないわよ」
 コウヒが警戒したのは、ジアーナの背後関係、具体的にいえば闘技場ギルドから何かを言われてきたのかと疑っているのだ。
 先日の戦闘に関して、コウヒやジアーナにすれば言いがかりとしかいいようがない、いちゃもんが付けられてる事は既に耳にしている。
 それに関して、何か取引でも持ちかけて来たのかと考えているのだ。

 コウヒが自分をじっと見ているのを感じながら、ジアーナは肩を竦めた。
「まあ、貴方がどう思っていようと、今日の私の話には関係が無いから話すわね」
 そう前置きをしたジアーナは、コウヒが何も言わないのを見てそのまま話し続けた。
「今日私が来たのは、忠告と激励をするためよ」
「激励?」
 忠告はまだしも、激励される意味が分からずにコウヒは首を傾げた。
「忠告の方は、貴方も分かっているでしょうけど、戦いのたの字も知らないお馬鹿が貴方を潰そうとして動いているわ。まあ、こっちの方は勝手に自滅するでしょうから、ほっといてもいいけれどね」
 そう言ったジアーナに、コウヒが視線だけで先を続けるように促した。
「激励のほうは、次の貴方の対戦相手が決まりそうってことを知らせるついでにね」
「そうでしたか」
 ようやく納得したコウヒがうなずいた。
 この話の流れで、ジアーナが何を言いたいのかようやく理解したのだ。
「あら。驚かないのかしら?」
「何となく予想はしていましたから」
 短く淡々と答えたコウヒに、ジアーナは目を細めてじっと見つめてきた。

 しばらくそうしていたジアーナだったが、全く変化を見せないコウヒに苦笑を返した。
「貴方の事だから心配なさそうね。それよりも、あの勘違い野郎の鼻っ柱をへし折ってあげて」
 いきなりそんなことを言いだしたジアーナに、コウヒが再び首を傾げた。
「勘違い、ですか?」
 今更誰のと的外れなことは聞かない。
 わざわざジアーナがこんなことを言い出したのだから、次の対戦相手に決まっている。
「そう。勘違い野郎よ。あのバカ、自分が世の中で一番だと勘違いしているからね」
「実際一番だったのでは?」
「貴方と戦う前だったら私もそう思っていたでしょうけれど、今はもうそんなのはただの妄言としか思えないわね」
 そうキッパリと断言したジアーナは、コウヒを見て小さく笑った。
 彼女が既に誰が一番かと考えているのかは、その態度を見れば明らかだ。
「そうですか」
 そう言って小さく頷いたコウヒを見て、ジアーナは「フフフ」と小さく笑った。
「?」
 そんなジアーナを見て、コウヒが首を傾げる。
「いえ。まさか私がこんな考えを持つことになるなんて、貴方との戦いの前は欠片も思っていなかったわ。・・・・・・ありがとう」
 小さく、けれど確実に言われた感謝の言葉に、コウヒは小さく頷き返すのであった。

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 そんなコウヒとジアーナの会話があった数日後。
 考助がアマミヤの塔の管理層から戻って来た。
「お待たせ。ようやくできたから攻略再開するよ」
 戻って来た考助は、部屋で休んでいたリリカを呼び出してそう言った。
 その手には、板状の物が握られている。
「それを作っていらっしゃったのですか?」
「うん、そう」
 リリカの問いに頷いて、考助はその板状の物を配り始めた。
 ピーチやリリカは勿論、コウヒにもだ。
 ミツキは既に管理層で渡してあった。
「一応コウヒにも渡しておくね。使うかもしれないし」
「はい」
 そう言ってコウヒは素直に頷いて考助から受け取っていた。

 しばらく受け取った板状の物を見ていたピーチが、考助に聞いた。
「それで、これは一体なんでしょう~?」
 考助が作った物なので、何かの魔道具だというのは分かるが、何の目的で使うかは分からない。
「それはね。こうやって使うんだ」
 考助がそう言って、懐からガゼンランの塔を攻略するときに使っているカードを取り出して、その魔道具に挟んだ。
 するとピタリとカードが隠れるように収まった。
「こうやって、この道具でカードを覆うと、転移門用のカードとしてしか機能しなくなるんだ」
 要するに考助は、ガゼンランの塔の攻略状況を隠すための道具を作っていたという事になる。
 カードを携帯したままガゼンランの塔に入ると、攻略階層がきっちりと記録されていくことになるが、この道具に挟んでおくとその記録がされなくなるというわけだ。
 今のところ最高到達階層を越えるつもりはあるが、公表するのは第六十五層くらいが妥当ではないかと考えている。
 そのために作った道具である。
 その前にきちんと動作するかを確認するために、第五十六層を超えたところでこの道具を作ったというわけである。
「なるほど~」
 考助の説明に、ピーチとリリカが頷いた。

「考助様」
 同じように考助の説明を聞いていたコウヒが、ひと段落したところで考助に話しかけた。
「ん? どうしたの? 聞いていておかしなところがあった?」
「いいえ。そうではなく、次の対戦が決まりました」
「お。決まったのか。今回は早かったのかな、それとも遅かったのかな? まあ、それはいいや。それで相手は?」
「ハルトヴィン。ランク第一位です」
 コウヒは特に気負うことなく淡々とそう言った。
 だが、その表情とは裏腹にようやくこの時が来たという思いが見て取れた。
「そうか。ようやくか」
 そんなコウヒを見ながら考助はそう言ってそれ以上は何も言わなかった。
 事戦闘に関しては、考助がコウヒに言えることは何もないのである。

 塔を攻略するための道具の準備が出来て、コウヒもまたついに第一位との対戦も決まった。
 セイチュンにおける歴史の転換点は、間違いなくすぐ傍まで来ているのであった。
考助が攻略用の道具を用意している間に、コウヒの次の対戦相手が決まりました。
相手が相手なので、十分に宣伝期間を取った上での対戦となります。
ので、次は考助たちの塔の攻略になります。
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