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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(23)お話し合い

 バイブロは、今までの態度を一変させて、考助をギロリと睨んだ。
「それは、<神狼の牙>が塔攻略ギルドに対して脅しをかけるというわけか」
 バイブロの言葉に、考助は肩を竦めた。
「なぜ脅しになるのですか?」
「なぜって・・・・・・」
「私達が要求しているのは、この建物は私達の拠点です。その中では私達のルールに従ってください、と言っているだけです」
 考助の言葉にバイブロが何かを言おうとしたが、考助はそれを遮ってさらに続ける。
「もしそれでもなお、貴方が私達のルールを変えろと要求するのであれば、それは塔攻略ギルドが私設ギルドに対して干渉してくるという事になるのですがいいのですか?」
「馬鹿な。なぜそんな大げさな話になる」
「ですが、貴方が我々に対して先ほどから要求していることはそう言う事ですよ?」
 そんな考助に対して、バイブロは鼻先で笑った。
「フン。口は達者なようだが、詰めが甘いようだな」
「ええ。そうですね。貴方がわざとそういう態度をとっているのがばれているのと同じように、ですけれどね」
 ここで、バイブロと周囲にいた者達の顔色が少しだけ変化した。

「・・・・・・なに?」
「まさか、ばれていないとでも思っていたのですか? わざわざ貴方のような立場の人が、こんな所まで来ているのです。あからさまな態度をとって視察するのが目的なのでしょう?」
 考助がそう言うと、バイブロは口を閉ざして考助をじっと見た。
 考助が先ほどからわざとらしく挑発するような態度をとっていたのも、バイブロの目的がわかっていたからだ。
 勿論、その上で<神狼の牙>としてのルールを知らせるということもある。
 少しの間口を閉ざしていたバイブロは、やがて考助を見据えて言った。
「いつから分かっていた?」
「最初からです」
「なに?」
 少しだけ驚いた表情を見せたバイブロに、考助は肩を竦めた。
「塔をこれまでにない速さで攻略しているギルドだからと言って、ただ脅しを掛けに来るだけにしてはメンバーが大げさすぎますよ」
 代表であるバイブロをはじめとして、副代表のアルタ、それ以外にも塔攻略ギルドの幹部らしき者達が数名。
 考助が言った通り、余りにも大げさすぎるメンバーだった。
 塔攻略ギルドの立場を利用して、<神狼の牙>を頭から押さえつけるつもりならバイブロ一人だけでも十分なのだ。
「ハアア・・・・・・」
 考助の話を聞いたバイブロは、大きくため息をついて深々と椅子に腰かけると、態度ががらりと変わった。
 今までのような軽い印象が抜けて、組織のトップに立つ者としての威厳が滲み出している。
「なんだ。噂を確かめに来ただけだったんだが、それ以上じゃないか」
「褒め言葉として受け取っておきます」
 そう返した考助に、バイブロはクククと笑い返した。

「お前さんを相手に妙な駆け引きは無駄だろうから単刀直入に聞くが、どうやって攻略した?」
 バイブロがそう問いかけて来たが、考助は意味が分からずに首を傾げた。
「どう言う意味ですか?」
「先日うちの受付が話を聞いたら、既に第四十六層まで行っているらしいじゃないか。こんな短期間でどうやって攻略したんだ?」
 考助がとぼけるつもりで聞き返したのかと考えているのか、バイブロはジッと見ながらそう聞いてきた。
 だが、塔の攻略に関しては、隠すことなど何もない。
「どうもこうも。特に特別な何かをしているつもりはないですよ? 先日そちらの副代表にお話しした通りです」
「あのなあ。塔の中はモンスターが出てくるんだぞ? ただ通り抜けるだけならお前が言った方法もとれるだろうが、そんなことは不可能だろうが」
「そう言われましてもね」
 考助は一度言葉を区切ってから、肩を竦めて続けた。
「馬車が特注といえば特注ですが、あれは移動を快適にするためのものなので、モンスターをどうこうする力は無いです」

 本気で首を傾げている考助に、傍で話を聞いていたリリカが口を挟んできた。
「コウ様。ミリー様の事を話されては?」
 考助はそう言われて初めて気付いたように、右手で拳を作って左手にポンと当てた。
 ミリーというのは、ミツキの偽名である。
「あ、そうか!」
「なんだ、やっぱり秘密があるんじゃねーか」
「いや、秘密というか・・・・・・、うちのコリーは知っていますか?」
 考助の唐突な話題転換に、バイブロは一瞬目を瞬いた。
 だが、流石に最近話題になっているコウヒの事はすぐに分かったようで、大きく頷いた。
「ああ。闘技場で話題になっている美人のねえちゃんだろう? おい、まさか」
「ええ。そのまさかです。ここにいるミリーは、コリーと同じくらいの実力があります」
 考助のその言葉に、塔攻略ギルド側の者達が顔を引き攣らせた。
 闘技場での実力者というのは、それだけ発言権を持つことになる。
 それと同程度の力を持つ者が、もう一人いるという事実に驚いたのである。

 だが、考助はさらに予想外の事を言った。
「ああ、そうだ。ナナ、ちょっとおいで」
 考助の座っている場所から少し離れたところで寝そべっていたナナが、その言葉で身を起こして近付いてきた。
「塔の攻略中は、どちらかというとこの子の力のほうが大きいですかね」
「そいつが、か?」
「ええ。何しろ、馬車で移動中も勝手に飛び出して行って襲って来そうなモンスターを撃退してくれますから。ついでに言うと、第四十層くらいのモンスターはすぐに倒してくれますよ? とてもいいやつなんです」
 考助が、何ともない表情でそう言うと遂に塔攻略ギルドの一人が、わめきだした。
「いい加減なことを言うな! たかが狼の一種じゃないか! その程度の従魔に何が出来る! 何か他に秘密があるんだろう?!」
 そう言って来たのは一人だけだったが、バイブロとアルタを除く他の者達は似たような表情になっている。
 明らかに考助の言葉が信用できないと言っていた。

 考助はそれに気づいていながら、バイブロだけを見ていた。
 他の者達がどう言っていても、要は組織のトップがどう判断するかが重要なのだ。
 そのバイブロは、右手で頭をガシガシ掻きながら困ったような表情になった。
「そう言われてもなあ。普通に考えて、そんなことが信じられると思うか?」
「それこそ、そう言われても困ります。私は事実を話しているだけですから」
 まごうことなく本当の事なので、考助としてもそれ以上の事はなにも言うことが無い。
 正確に言えば、ミツキもナナも本来の実力よりも下方修正して話をしているが、そんなことを言っても猶更信じてもらえないだろう。
 知られたら知られたで面倒なことになるだけなので、わざわざこちらから言ったりすることはないし、言うつもりもない。

「だったら、そいつの実力を見せてもらう事は出来ないか? あんたの言うとおりだったら納得しよう」
 バイブロがそう言うと、考助がため息をついた。
「それこそ我々にどんなメリットがあるのでしょうか? さらに言わせてもらえれば、ギルドの戦力を根掘り葉掘り聞いているというだけで、ルール違反なのでは?」
 冒険者ギルドにしても塔攻略ギルドにしても、私設のギルドの戦力を探るような真似はご法度となっている。
 ただし、どちらもカードという存在があるためにある程度は知られるのだが、少なくとも建前上はそうなっているのだ。
「む。しかしなあ・・・・・・」
 そう言って渋るバイブロに、考助はため息をついた。
「仕方ありません。このカードだけは切りたくなかったのですが・・・・・・」
「なんだ。まだ何かあるのか?」
「ハンゲロの根は足りていますか?」
「何?」
 唐突な考助の言葉に、バイブロは首を傾げた。
 だが、考助はそれを気にした様子も見せずに、さらに続けた。
「ネローの皮もありますね。加工するには時間もかかるから足りなくなると大変でしょうね。ああ、あとはミニベアの胆とかヘビーサドンの舌なんてのもありますね」
 考助が次々と言葉を連ねていくと、バイブロの顔がだんだんと青くなっていった。
 隣に座っているアルタも似たような表情だった。
 他の者達は、よくわからないといった表情になっているので、考助が言った意味を分かっているのはその二人だけなのだろう。
「ま、待て。わかった。もういい。お前が言ったことを信じよう。だからそれ以上は言ってくれるな」
「そうですか。ご理解いただけたようで、安心しました」
 突然頭を抱えたバイブロに、考助は笑顔になってそう答えた。
 その考助の笑顔を見たバイブロは、盛大にため息をつくのであった。
いつまでたっても平行線になりそうな話し合いに、久しぶりに(?)黒い考助がさく裂しました。
最後に並びたてた素材が何なのかは、次の話で補足します。
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