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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第5章 塔のメンバーと仲良くしよう

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(2) 新たな住人

 エルフ族と吸血一族の今後を決めたところで、ピーチが若干緊張した面持ちで話しかけてきた。
「あの~。一つ相談があるんですが、良いでしょうか~?」
「相談? 何の?」
「サキュバスの一族も塔のどこかの階層に、住まわせてもらえないでしょうか?」
 ピーチの突然の申し出に、考助は首を傾げた。
「それは・・・なんで?」
「はい~。実は、私達の一族は、ある時までとある王国の裏の仕事を請け負ってました」
 ピーチの身体能力の高さは、その一族の中で訓練を続けてきた賜物である。
 そして、考助はその前振りで、嫌な予感を覚えた。
「あ~・・・。もしかしなくても、任務失敗したとかで、その王国から追われるようになったとか?」
「・・・・・・あれ~? ご存知でしたか?」
 ピーチのその答えに、考助は苦笑いを浮かべた。
 まさか、定番の設定です、とは言えない。
「いや。うん、まあ・・・よくある話かな、と思って聞いてみた」
「そうなんですか~。それで、今は隠れ里的な所に里を作って住んでいるんですが、そこもいつまでも安全とは限りませんので、いつでも移動できる状態になっているんです」
 過去の経験で、王国の者にすぐに見つかってしまうので、逃げる準備はいつでも出来ているとのことだった。
 かと言って、簡単に国外に逃げるということもできない。
 現在は板挟みの状態になっているとのことだった。
「なるほどね。それだったら、いっそのこと塔の方に逃げて、定住したほうがいいと?」
「はい、そうです~」
 考助は腕を組んで考えた。
 といっても、この話は塔にとっても悪い話ではない。
 今後のことを考えると、そういった仕事が出来る者達を手駒に出来るメリットは大きい。
 きちんと確認しなくてはいけないが、ピーチから聞いている限りでも一族の戦闘能力も魅力的である。
 デメリットとしては、王国に睨まれる可能性があるという所だろう。
 とは言え、すぐに塔に逃げたと気づかれる可能性の方が少ないので、大したデメリットにはならないだろう。ピーチの一族の者からその話が漏れない限りは、だが。
「・・・こっちとしては、受け入れるのはいいんだけど、いきなりその話を持って行っても大丈夫なの?」
「そうですね~。恐らく大丈夫とは思いますが、一応話し合いとかは必要かもしれませんね」
「まあ、そうだろうね」
「ですので~、どなたかを連れて、一度里の方へ行きたいんですが?」
 ピーチは転移の魔法を使えないので、転移で一緒に里まで移動するという方法は取れない。
「ああ、それなら私が一緒に行くわ」
 話を聞いていたミツキが、立候補してきた。
「転移は出来るの?」
「転移先を知っている人がいれば、問題ないわよ。今回はピーチがいるしね」
 一番最初の考助と出会ったときは、三人の内の誰も街のことを知っている者がいなかったので、転移は使えなかった。
 今回は、里を知っているピーチがいるので問題ない、ということだった。
 後は、転移先に関わる物を持っていれば、触媒として使えるので、なお良しということだったが、流石に故郷だけあってピーチがその品を持っていた。
 まあ、品と言っても里で作られた小物なのだが、今回はそれで問題がないとのことだった。
 そういうことで、ミツキとピーチの二人を送り出した後は、帰ってくるのを待つことになったのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ミツキとピーチの二人が、サキュバスの隠里に向かってから三日が経った。
 たとえピーチがいたとしても、いきなり隠里へ着くことはできないということだったので多少の時間はかかる。
 とはいっても、塔との位置関係を考えると、信じられないくらい早いのだが。
 残念ながらこの世界では、目的地を知っている人の記憶を読み取って、その場所に転移をするといった方法は取れないのだ。
 そういうわけで、今回ミツキは、触媒の品を使いながら何度か転移を繰り返して、徐々に隠里に近づいて行く方法を取った。
 その方法で目的の隠里に着けたのが、三日後だった。
 あとは、ミツキが転移で塔に一気に戻ってきて、考助とコウヒを里へと連れていったのである。

 考助が里に着いた時には、既にピーチが話を付けていたのか、里の長であるジゼルと話をすることになっていた。
 ちなみにサキュバスは、エルフほどではないが、ヒューマンより寿命が長くさらに老化の仕方も違っている。
 そして、今考助の目の前にいる長は、ニヒルさを感じさせるイケメン男子であった。
 考助から見れば、二十代後半にしか見えないが、長ということは、かなりの年になっているのだろう。
 そのジゼルは、笑みを浮かべて考助たちを迎え入れてくれた。
 ジゼルの隣には、ピーチも控えている。
「いやいや。ピーチから話は聞きました。何でも里の者達を塔に受け入れてくださるそうですな」
「ええ。まあ、其方がよろしければ、ですが・・・」
「それでしたら、何の問題もございません。是非ともお願いしたいですな」
「・・・・・・よろしいのですか? ピーチが里に着いてからさほど時間は経っていませんが?」
 里の者達と長時間話し合ったようには思えない。
「まあ、正直に申せば、そろそろこの里も限界でしてな。敵対している者達に、見つかりそうなんですな」
 あまりに素直な回答に、思わず考助はジゼルの顔色を窺った。
 とは言え、経験不足の考助に、表情から考えが読めるわけもない。
「・・・・・・ずいぶんと素直に話されるんですね」
 その考助の疑問に、逆にジゼルが不思議そうな表情になった。
「おや。ピーチから聞いてなかったんですかな?」
「? ・・・何をでしょう?」
「正直に申しますと、これまで逃げ延びてきた我々ですが、それもそろそろ限界なんですよ。追いつめられてると言ってもいいでしょう」
「・・・ということは、塔への受け入れは、そちらにとっても渡りに船、というわけですか?」
「そういうことですな」
 何か、ずいぶん都合よく話が進んでいる気がするが、考助にもその裏があるかどうかは読むことが出来ない。
 というわけで、助け舟を求めることにした。
「ミツキ、どう思う?」
「そうねぇ・・・。塔に行ったとしても結局、裏の仕事は続けることになると思うけど、その辺はどうなの?」
「問題ありませんな。むしろ我々の一族は、その辺しか売り込むところがないですからな」
「他のところと繋がってて、うちに探りを入れるため・・・というのは、考えられないかしら?」
 ピーチとの出会いを考えると、そもそもの発端は占いである。
 塔に食い込むための占いをしたということも考えられる。
「まあ、言いたいことは分かりますが、それをやっていない、ということを証明するのは、難しいですな」
 ほとんど悪魔の証明に近いものがある。
「そうよね」
「あの・・・それは、私ではダメでしょうか?」
 血の契約を結んでいるピーチであれば、考助の危険に対しての嘘を吐けない。
 その契約をもとに、証明できないかというピーチの提案であった。
「あれは、ピーチ自身が知っていないことには、反応しないからね。ピーチの知らない所でそういう工作が行われていたら、意味がないわ」
 ミツキの言葉に、ピーチが残念そうに、肩を落とした。
 しかし、その会話にジゼルが興味を引かれた様子を見せた。
「それはどういうことですかな?」
 ジゼルの疑問に、ミツキが血の契約について話すと、ジゼルが一つ頷いてこう申し出た。
「では、その血の契約とやらを、我々に使うのは如何かな?」
「それが出来たら問題ないんでしょうけど、血の契約もそこまで便利なものではなくてね。そうそう頻繁に使えるものではないのよ」
「・・・・・・そうですか」
 ミツキの言葉に、ジゼルが肩を落とした。
 だが、逆にそれまでの会話を聞いていた考助が、決断をした。
「いや、そこまで言われるのでしたら、貴方がたを塔へ受け入れましょう」
 突然の考助の決断に、ジゼルが不思議そうな顔をした。
「・・・よろしいのですか? はっきり言って、貴方から見て我々が胡散臭く見えるのは、承知していますが?」
「構いません。ですが、一つだけやってもらいたいことがあります」
「何ですかな?」
「移住先の階層の外に出る場合は、一人一人必ず契約をしてもらいたいです」
 この場合の契約とは、血の契約ではない。
 ただ、普通の契約と言っても、契約内容によっては行動を制限できる。
 例えば、外に出た者が塔にとっての裏切り行為をすれば、一族を階層に閉じ込めてしまう、などである。
 そこまで過激なものでなくても、契約で縛るというのはいい考えに思える。
 その考助の考えを聞いて、ジゼルも頷いた。
「なるほど。我々裏の者は、契約を重んじますからな。コウスケ殿がそれで良ければ、こちらとしても否やはございません」
 細かい話はこれから詰めて行かないといけないが、大まかな方向性はこれで決まった。
 事の大きさからすれば、あっさりと話が決まったような感じさえ受けるが、とりあえずの話し合いは、これで一段落である。
 これにより、ピーチの一族(デフレイヤ一族)が、塔の仲間として加わることになったのである。
裏切りに関しては、突っ込み足りないところが多々ありそうですが、これくらいでさくっと終わらせます。
ちなみにデフレイヤ一族は、契約を非常に重んじる一族です。

最初の方で受け入れ前提で話していますが、実際の対話の時に突っ込みを入れるのは、塔の安全管理から考えて当然だと考助は考えています。

2014/5/24 誤字修正
2014/6/11 誤字訂正
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