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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(20)二戦目

 考助の予想は突拍子もない物で、流石にシルヴィアでも答えられることがほとんどなかった。
 そもそも神話よりも古い時代の記録など、全くといっていいほど残っていない。
 そうした時代の事に関しては、下手をすると女神達にも答えられる者は少ないかもしれない。
 この辺りの事は当然すべて推測になるのだが。
 勿論、考助にはそうしたことにも答えられる存在にも心当たりがあるが、敢えて聞きに行こうとは考えていなかった。
 考助としては、神々が存在している世界にも関わらず、神話よりも古い時代の記録が残っていないことには何か意味があるような気がしている。
 単純に神々が聞かれていないから人々には知らせていないのか、あるいはもっと何か理由があるのかは分からないが。
 そんなわけで、当初の物見遊山の塔の見学から大きく目的がずれてきているが、これもまた旅の醍醐味だと考えている考助であった。

「そうだ。ピーチ、一緒に来てくれないか?」
 くつろぎスペースでだらだらしていた考助が、たまたま顔を見せていたピーチにいきなりそんなことを言いだした。
「私がですか~? 私は神話とかの話は詳しくないですよ?」
 首を傾げながらそう言ったピーチに、考助が手を左右に振った。
「ああ、いや。そっちの事じゃなくて、ギルドの方だよ。街でサキュバスに動いてもらえないかと思ってね」
 コウヒの闘技場の活躍を始めとして、既に<神狼の牙>の噂は広まりつつある。
 どういった情報が流れているのか、ある程度把握する必要があるのだ。
 本来であれば、考助の手駒に近いサキュバスではなくクラウンが組織として動くべきなのだが、今はまだクラウンが表だって動くのには時期尚早だ。
 そのため、考助の個人的なつながりとして、サキュバスたちに働いてもらおうというわけだった。
 ピーチはサキュバスのリーダーとして取りまとめをしてもらうつもりだ。

 考助の言葉を聞いて、考えるような仕草を見せたピーチだったが、すぐに頷いた。
「そう言う事でしたら、分かりました~。里との話し合いもあるので、一緒に向かうのは無理ですが」
「それはそうだよね。今日明日のはなしじゃないから、それはいいよ」
「ありがとうございます~。でも、出来るだけ急いで決めますね」
「ああ、そうしてもらえると助かるよ」
 ピーチの配慮に、考助も有難くそう返答した。
 サキュバスたちがいるのといないのでは、今後の動きに大きな差が出てくる。
 早く来てもらえるにはそれに越したことはないのだ。
 何気にサキュバスが直接考助の指示の下で動くのは久しぶりの事になるのだが、この時の考助とピーチはそのことを全く意識していなかったのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 サキュバスたちについては、ピーチから神力念話で連絡を貰った後に連れていくと言う事になり、考助たちは予定通り二日の休暇を終えてセイチュンへと戻った。
 セイチュンへ戻る方法は、考助が送還陣を使ってギルドの拠点へと直接移動した。
 神域へ直接移動できる手段を持つ考助の本領が発揮されたわけだ。
 もっとも、送還陣を駆使すれば世界中のどこにでも一瞬で移動できるため、旅行としての楽しみは半減してしまうのだが。
 そのため、考助も送還陣を使っての移動は、旅行の際には使わないようにしているのだった。

 翌日。考助たちは、出場者特権を使って確保した席に座って、コウヒの戦いぶりを見ていた。
 といっても戦い自体はすぐに終わってしまった。
 対戦相手のペトルは、魔法を主体に戦いを進めていた。
 上位ランカーだけあって、手数と威力で次々と魔法を放っていたが、それらの攻撃はコウヒには全く通用していなかった。
 今回のコウヒは、前のように一撃で仕留めようとするのではなく、同じような強さの魔法を放っていたためにより派手な展開になった。
 結果として前回とは打って変わって、魔法が飛び交う派手な展開に観客は沸いていた。
 最後はコウヒが派手な一撃で、ペトルの結界をつき破って終了という、魔法を使う者同士の戦いとしては一番見ごたえのある戦いであった。
 観客を沸かせる展開に、闘技場ギルドとしては大満足の試合だっただろう。
 考助は、試合を見ながら観客の様子を見ていたが、まだコウヒの評価は二分しているようだった。
 特に、今回は前回のように一撃で沈めたわけではないので、きわどい戦いに見えていた。
 そのために、余計にコウヒの実力が拮抗しているように見えたというのもあるだろう。
 もっとも、そんな評価を下しているのは、戦いを専門にしている者ではない。
 さらに言えば、魔法を専門にしている者の中でも上位にいる者にとっては、驚異の存在に見えただろう。
 何しろ今回のコウヒは、強い結界で襲って来る魔法を防いだわけではないのだ。
 律儀に全ての魔法を他の魔法で叩き落としていた。
 あれだけの数の魔法を、一瞬で判断して、更にそれに対処するための魔法を自分で打ち出して、正確に打ち消して行ったというのは、明らかに格の違いを見せつける戦い方だった。

 基本的に妖精に頼んで、ひたすら防御だけしている考助には今回のような細かい技術(?)は分からない。
 一緒に見ていたミツキからそうしたことを教えてもらっていた。
「観客には沸かせる方法で、強い人には強さを見せつける戦い方をしたってことかな?」
「そうね。きっと、下位のランクからの戦闘申し込みを抑えるつもりでそうしたんでしょう」
 自分の実力を見せつけておくと、下位ランカーからの申し込みを抑えることができる。
 勿論、そんな抑え込みが出来るのは、ある程度の見極めが出来る目を持っている者でないと駄目だろう。
「抑えられると良いけれどね」
 考助は、観客の湧き方を見ながらそう言った。
 コウヒの実力を正確に分かっていない観客たちを見ていると、平気で申し込みをしてくる者も出てきそうだ。
「その辺は、闘技場ギルドにかかっているんじゃないかしら? 片っ端から試合を組んで連勝していくと言う手もあるわけだし」
「それもそうか」
 当然ではあるが、考助もミツキもコウヒが負けるなんてことはかけらも疑っていない。
 逆にコウヒが負けるようなことがあれば、神々の介入を疑うレベルだ。
 もしそんなことがあれば、それはそれで面白い展開になるが、まずあり得ないだろう。

 そんな考助たちと同じような予想を立てている者達が、別の場所で会話をしていた。
「やってくれるわねえ」
 コウヒの試合を見ながら、どこか楽しそうにそう呟いたのは、ランク四位のジアーナだ。
 彼女は、たまたま闘技場で鉢合わせになったカルメンに誘われて、試合を見に来ていた。
 ジアーナの隣では、カルメンとヤーナが同じようにコウヒの試合を見ていた。
「おお。ジアーナもついに興味を示したか」
「遂にとはなによ。私がコリーの試合を見たのはこれが初めてよ?」
「それは勿体ない。是非ともオスモとの戦いは見てほしかったな」
 楽しそうな表情になりながらカルメンがそう言うと、ヤーナもそれに追随した。
「あれは、今回とは別の意味で傑作だったわね」
「あらあら。貴方達が、そろってそんなことを言うとはね。是非とも見てみたかったわ」
 肩を竦めながらジアーナがそう言ったが、表情はそこまで残念そうではなかった。
 ハッキリと興味が無いと書いてあった。
 ジアーナにしてみれば、オスモ自体が興味の範疇外で、その男が行う戦闘もどうでもいいと考えているのだ。
 もっとも、今回の対戦相手であるペトルも、ジアーナにしてみれば興味の範疇外なのだ。
 二人に言われなければ、間違いなくこの試合も見に来てはいなかっただろう。
 これはジアーナに限ったことではなく、上位ランク五位に入っている者達は誰もが似たり寄ったりだったりする。
 強い者に興味はあっても、自分の視界(ランク五位以内)にいないと興味の範疇外という狭い範囲でしか見ていないのである。
 コウヒの登場によってそれが変わるのか。
 それはまだ誰にも分からないのであった。
うーん。
次の試合のために会話を挟みましたが、必要なかったですかね?
いきなり第四位を出しても良かったのですが。
ランカー五位に入っている者達は、他人にはほとんど興味がありません。
自分が強くなることにしか興味が無い人たちですから。
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