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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

533/1218

(15)圧勝

説明回。
 セイチュンの闘技場は、闘技ギルドが運営を行っている。
 主な業務は、出場者の管理と試合ごとに行われる賭けの胴元である。
 出場者の管理は、登録や試合のマッチング、あるいはトーナメントの開催などがある。
 闘技場に出る出場者を、セイチュンでは闘技者と呼んでいる。
 全体で千人をを越える闘技者の全てを闘技ギルドが把握していることになる。
 闘技場内で行われている試合は、全て闘技ギルドで管理されているのだが、大まかに二つの種類がある。
 一つは、トーナメントで上位入賞者には賞金なども出る。
 もう一つは、トーナメントに関係のない闘技者のランキングを競うものだ。
 全ての闘技者は、初級・中級・上級ランクに振り分けられている。
 初級・中級で勝率の高い者が、それぞれ上のランクに上がることが出来る。
 それぞれのランクには人数制限はない。
 ただし、ほとんどのトーナメントはランクの制限が設けられているので、下手に上位ランクに上がると稼ぐことが出来なくなる可能性もある。
 もっとも、上位ランクに入らないと賞金だけで生活するのは厳しいので、ほとんどの者は冒険者としても活動している。

 闘技ギルドが行なっている賭けは、中級ランクの試合からで試合に出ると報酬が出るのもこのランクからになる。
 初級ランクの闘技者で報酬が貰えるのは、たまにある初級ランク専用のトーナメントの賞金だけだ。
 それゆえに、初級ランクで登録した闘技者は、早くランクを上げようと躍起になるのである。
 また、上級ランクはさらに細かな区分けがされている。
 上級ランクの上位二十名に入ると、大きな優遇措置が取られることになる。
 その中で一番大きいのが、定期的な収入が得られるという事だろう。
 もっとも、上位二十位に入れるような実力者は、その収入よりも大きな金額をトーナメントで獲得できたりするのだが。
 収入はともかくとして、コウヒが一番重要視しているのは、二十位以内に入ることで得られる名声の方だろう。
 上位二十位に入ることが出来れば、セイチュン内でも大きな影響力を持つことが出来るのだ。
 自分が所属しているギルドの名声も高めることが出来るというわけだ。

 闘技者のランクを決める試合は、必ずどこかしらで行われている。
 ただし、下位ランクの者達は観客席のない小さな訓練場のような部屋で行われることも珍しくはない。
 というよりもほとんどがそういった訓練所での戦闘になる。
 通常の観客付きの施設で行われるのは、上級ランクに位置する闘技者の場合だけである。
 まさしく、今から行われようとしているコウヒとオスモの試合のように。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 オスモは現在の状況にいらだっていた。
 ランクを決める試合が行われること自体はいい。
 そもそも、自分自身でそれを狙っていた。
 だが、こうなった状況にカルメンが絡んできたことが気に食わない。
 先日の会話で、如何にも自分が負けることが確定しているような内容もその状況に拍車をかけていた。
 何より気に食わないのが、いま自分の目の前に立っている美女コウヒだ。
 受付の前で迷っているコウヒを見つけた時は、チャンスとばかりに話しかけた。
 周りにいた有象無象が、同じようにチャンスを狙っていたのが分かったので、まずは自分の物にしようとしたのだ。
 だが、コウヒはその尽くを無視して、あろうことか攻撃まで仕掛けて来た。
 自分が不用意に触れようとしたことは既に忘却の彼方になっている。
 後から考えれば、防御結界のようなものが張られていたことは明白だったのだが、あの時の自分は全く気付いていなかった。
 それもまたオスモの苛立ちを強くしている原因のひとつだ。

 だが、試合の判定員が会場に向かって話している長々とした口上を聞くうちに、オスモの表情は落ち着きを取り戻して行った。
 この辺りは、上位二十位に入れる実力者といえるだろう。
 自分の感情に振り回されるだけではない実力を持っているのだ。
 一方のコウヒといえば、会場に登場してから欠片も表情が変わっていなかった。
 目の前にいるオスモの事も、試合自体の事もどうでもいいといった表情で立っていた。
 そして、実際にそう思っているのだ。
 いまコウヒの心の内を占めているのは、ガゼンランの塔を攻略している考助の事と、今後はどうやってランクを上げて行こうかという二点だけである。
 今から行われる試合のことなど、何の憂いもないコウヒなのであった。

 そんな二人の出場者の思いなど全く関係なく、周囲では大変な盛り上がりを見せていた。
 一応、上位二十位入りを決める試合とはいえ、上位二十同士でもない試合にここまで人が集まるのはそうそうないことだ。
 ではなぜここまで人が集まったのかというと、先日の騒ぎを見ていた者達の口からコウヒの美女っぷりが噂として広まったためである。
 そんな噂の美女を見ようと、観客たちが集まったのだ。
 しかも相手は『暴虐のオスモ』だ。
 場合によっては、一部の男達が喜びそうな展開になることを期待している者達もいる。
 そんな周囲の状況を余所に、判定員が淡々と両者の紹介を進めて行った。
 そしていよいよ戦闘開始となった次の瞬間、それまで最高の盛り上がりを見せていた観客たちのざわめきが一瞬で静まり返ることになった。

 オスモが使っている武器は、二メートルを超える体格を生かした筋力で振り回すハンマーだ。
 力任せに振り回すだけだが、オスモが持つ筋力と合わさると、相手がしている装備など何の意味もなさなくなる。
 そのオスモが渾身の力で振り回したハンマーがコウヒに襲い掛かった。
 当然のように手加減などしていない。
 先日の一件で、レベルの高い防御結界を張っていることは分かっているのだ。
 オスモには本人が掛けたのか魔道具の効果なのかは分からないが、そんな物は無意味だと言わんばかりにハンマーを振り回したのだ。
 そして、いよいよそのハンマーがコウヒの身体に到達すると思われた次の瞬間、オスモは驚きで目を見開いた。

 コウヒは、自分に襲い掛かってくるハンマーを右手だけで止めたのである。
 勿論、筋力だけで止めたわけではなく、魔力を使って強化をしてある。
 だが、いくら魔力で強化といっても限界はあるのだ。
 二メートルを超える大男の攻撃を、五十センチ近く身長差のある小柄な女性が腕一本で止めている異常な状況に、観客たちは息をのんでいた。
 そんな中、ごく一部の者達はそれぞれの視点でその状況を見ていた。
 知り合いと一緒にその試合を見ていたカルメンもその一人である。
「ハハハッ。何とも予想外なことをしてくれる。どうだい? あんたにあんなことが出来るかい、ヤーナ」
 水を向けられたヤーナは、肩を竦めて答えた。
「無茶を言わないで。あんな無駄な魔力の使い方、出来るわけないでしょう?」
「だよなあ」
 ヤーナの言葉に、カルメンも頷いている。
 二人共やれと言われれば、同じことは出来るだろう。
 だが、それ以外の事は全くできなくなる。
 ヤーナが言った「無駄」とはそう言う事だ。
「それに、あれ身体強化だけじゃないわね」
「・・・・・・みたいだね」
 ようやくそのことに気付いた二人だったが、未だ静まり返ったままの観客たちはその事実に気付いていなかった。
 そして、当事者であるオスモは、先ほどからあり得ない事実に驚愕しているのだった。

 動かない。
 圧しても引いても振り回そうとしても、どんなことをしてもハンマーがピクリとも動かないのだ。
 その事実に、オスモはようやく目の前にいるコウヒがとんでもない相手だと気が付いた。
「こんなものですか」
 最初から全く表情を動かさずにそう呟いたコウヒに、オスモの表情は醜く歪んだ。
「・・・・・・んだよ。何なんだよ、手前は!」
 そうわめくオスモを無視して、コウヒはさっさと決着をつけることにした。
 ハンマーを支えていた右手を外した次の瞬間に、オスモの懐までもぐりこんで、鎧で身を固めたオスモをそのまま殴りつけたのである。
 そして、その一撃を食らったオスモは「グフッ」と短く呻いた後に、その場に沈みこんだ。
 その一瞬の決着に、状況が分からなかった判定員は呆然としていたが、全く動く様子を見せないオスモを見て右手を上げた。
「決着! 勝者、コリー!」
 その判定員の宣言に、静まり返っていた観客たちが一気に沸き上がった。
 その圧倒的な実力に、新たに上位二十位に加わることになったコリーの噂話は一気に広まることになるのであった。
一応、コウヒが勝つところを書きました。
この後は、ほとんど同じような展開になるので、順位が上がった報告だけしていくことになると思います。
カルメンに言われた上位五名の化け物たちの時から書くかもしれませんw
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