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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(14)対戦カード

 コウヒは現在悩んでいた。
 考助から闘技場で知名度を上げるという役目を貰ったのはいいが、どうやってそれを達成するかまでは指示を受けていないためだ。
 勿論、闘技場という性質上、勝ち続ければ近いうちに名を上げることは可能だろう。
 ただ、それだと短期間で名声を上げるのは難しくなる。
 上級ランクの試験に合格したと言っても、現在同じランクには百名近くが在籍している。
 その中でも上位三十名はランク付けがされているのだ。
 そのランク持ちを相手に勝利が出来れば、手っ取り早くランクインすることが出来る。
 問題はどうやってそのランク持ちと対決するか、ということだ。
 闘技場のシステムは、基本的には主催者が戦闘のカードを組む権限を持っている。
 場合によっては出場者同士の希望で対戦することもあるが、八百長に繋がる可能性もあるのでほとんど採用されることはなかった。
 ただし、何事も例外はあるもので、ランク持ちに限っては相手を指名する権限がある。
 その権限は、ランクが上になるほど強くなるのだ。
 主催者が対戦カードを組むのを待つのもいいが、出来ることならランク持ちから指名されれば簡単にランク持ちになることができるのだ。
 コウヒとしてはそれを狙っているのだが、伝手も何もないのでそうそう簡単に指名されることなどない、というのが今のコウヒの悩みだった。

 出場受付のカウンターの前で、主催者任せの一般出場のカードを出すべきかどうか悩むコウヒだったが、ふと周辺のざわめきに気付いた。
 その時初めて、自分が注目を浴びていることに気付いた。
 いつもの自分の顔を見て驚く視線とは違う。
 そして、その理由が自分の足元に蹲っている者にあると気が付いた。
 蹲っているのは、筋骨隆々の大男だった。
 そんな男が何故蹲っているのか、コウヒはすぐに原因に思い当たった。
 もともとコウヒは、一人で街中を出歩けば男達に囲まれることが目に見えている。
 それが面倒なので、音を遮断する魔法と不用意に自分に触れようとした場合に電撃を流す結界のような魔法を常に発動しているのだ。
 蹲っている男も不用意にコウヒに触れようとした結果、こうなったのである。

 音を遮断する魔法を解いた結果、周囲の者達のざわめきから何となく事情を察したコウヒは、どうでもいいとばかりに踵を返そうとした。
 だが、それは失敗することになる。
「ま、てや! てめえ、こら!」
 蹲っている男が、そう言って来たのだ。
 その声に、思わず動きを止めてしまったのだ。
 別に男に脅されたからというわけではない。
 コウヒが張っている護衛用の結界は、それなりの強さがある。
 普通の冒険者程度では、その攻撃を食らうとそうそう簡単には起き上がれないはずなのだ。
 大男がどれくらい蹲っていたのかは分からないが、普通で考えればこれほどの早さで復活はしないのだ。
 それから考えれば、コウヒの目の前で強面を作っている大男は、かなりタフだという事がわかる。

 ようやくコウヒが自分に注目したことに気付いたのか、蹲っていた大男は強面をさらに強めて言い放った。
「てめえ、その態度は、この俺様がランク十八位のオスモと知っての事だろうな?」
 コウヒが首を傾げて黙ったままなのを見て、オスモはさらに続けた。
 まさかコウヒがランクの事を聞いて、チャンスだと考えていることは露ほども知らずに。
「お前が持ってるその紙は、上位ランクの申請書じゃねーか。丁度いいからこの俺が相手してやるよ!」
 目ざとくコウヒが持っている申請書を見つけたオスモは、得意げな表情でそう言った。
 勿論、見た目だけならただの美女にしか見えないコウヒを、見せしめにしようとしていることは間違いなかった。
 オスモの性格を知っている周囲で見ていた者達は、ざわめきを強くした。
 間違いなくコウヒが痛めつけられることを想像してのことだ。

 そんな二人を遠巻きに見ていた観衆の中から一人の女性が出て来た。
「そりゃいいや。あんたと彼女の対戦、是非とも見てみたいな」
 ランク持ちの中でも注目株の女性が出てきて、周囲の者達のざわめきがさらに大きくなった。
 その女性を見て、オスモが表情を若干引き攣らせた。
「お、お前は、カルメン・・・・・・!」
「なんだい、その顔は。失礼な奴だね。まあ、いいや。それはとにかく、さっさと申請を済ませたらどうだい?」
 カルメンがそう言うと、オスモがチッと舌打ちをした。
「てめーにそんなことを言われる筋合いはねえ!」
 そんなオスモを見て、カルメンが嘲笑うような表情になった。
「なんだい。さっきのは、ただのブラフかい。こんなお嬢さんを相手に怖じ気づくなんて、如何にもあんたらしいね」
 わかりやすいカルメンの挑発だったが、結果としてオスモは青筋を立てることになる。
「誰が怖じ気づくか!」
「だったら問題ないじゃないか。さっさと出したらどうだい?」
 ほらほら、とカルメンは窓口を指さした。
「コリーも問題ないだろう?」
 カルメンの確認に、コウヒはコクリと頷いた。
 コウヒにしてみれば、まさしく棚から牡丹餅といった状況だ。拒否する理由など欠片も見当たらない。
「ちっ! ・・・・・・覚悟していろよ!」
 オスモはそう捨て台詞を吐いたのち、受付で手続きを済ませてその場から離れて行った。

 それを見送ったカルメンは、ひとしきり笑った後でコウヒを見た。
「余計なことをしたかい?」
「いいえ。助かりました」
 コウヒはそう言って、カルメンに向かって首を振った。
 それを見たカルメンは、豪快に笑った。
「ハッハッハ。だろうね。あんただったら、良い感じに上まで駆け抜けていきそうだ」
「貴方がそれを言うのですか?」
 試験で対戦したコウヒは、カルメンが実力者であることは分かっている。
 決して他の者達にも引けを取らないだろうと。
 だが、そんなコウヒの考えを見抜いたのか、カルメンが首を左右に振った。
「まあ、確かにあたしだってそれなりにやるつもりだけれどね。ここの上位五者だけは別だ。今のあたしじゃあ、どうあがいたって勝てないね」
「そこまでですか」
「そうさ。だからあんたがあいつらを相手に、どうやって勝つのか、是非とも見せてもらいたいね」
 そんなことを言ったカルメンに、コウヒは首を傾げた。
「負ける、とは言わないのですか?」
「勘弁してくれ。あんたが負けるようだったら、どうあがいたってあたしがあいつらに勝てる目はないじゃないか」
「私に勝てる、とは言わないのですか?」
 そう言ったコウヒに、カルメンは若干呆れたように首を左右に振った。
「止めてくれ。あたしはそこまで己惚れていないつもりだ」
「・・・・・・そうですか」
 どういうつもりでそんなことを言ったのかコウヒには分からないが、少なくともカルメンは絶対にコウヒには勝てないと判断しているようだった。
 これだけ周囲に人がいる場所で言うという事は、それを隠すつもりが無いということだ。
 カルメンにはカルメンの考えがあるのだから、コウヒにはそれをどうこう言うつもりはない。
 それよりも、先ほどのカードを組んでくれた礼をいうべきだろう。
「とにかく、貴方のおかげでランク持ちとの対戦が出来るようになりました。ありがとうございます」
 そんなコウヒに、カルメンは手をひらひらと振った。
「いいさ。さっきも言った通り、突き進んでくれ」
「はい」
 短く答えたコウヒに、カルメンは笑いながらその場を去って行った。
 それを見送ったコウヒも手続きを済ませてギルドへと戻った。
 後には二人の会話に聞き耳を立てていた観衆とそのざわめきだけが残されるのであった。
さて、いよいよコウヒの第一回戦が始まります。
考助達の攻略はしばらくかかるので、次はコウヒの第一回戦の模様を・・・・・・かければいいんですが、大体闘技場のシステムに関しての説明だけで終わりそうな予感ですw
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