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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(12)戦闘試験

 コウヒは、受付の男に指示されたドアの先にある部屋に入った。
 そこはちょっとした広さのスペースになっていて、部屋のわきにテーブルとイスがありそこに女性が一人座っていた。
 女性は、入って来たコウヒに気付かずに一心不乱に下を向いて何かを書いている。
「ああっ! 畜生! 何だって書類整理なんてもんがあるんだい!?」
 そんなことを呟きながらまさに書類と格闘していた。
 部屋に入って来たコウヒには全く気付く様子が無かった。
 いつまで待っていても無駄だと察したコウヒが、話しかけた。
「あの・・・・・・」
「何だい!? ちょっとまっておくれよ、今・・・・・・って。 おおっ!?」
 声を掛けられてようやく顔を上げたその女性は、視線の先にコウヒがいるのを見て驚いた表情になる。
「何だいあんた。間違えて入ったのかい? こっちは上級用のコースだよ? 初級は・・・・・・ん?」
 このまま話し続けられると時間の無駄だと考えたコウヒは、話を進めようとする女性に受付の男からもらった紙を差し出した。
 言葉を止めてその手紙を受け取った女性は、さらっとその内容を確認した。
「へー。あいつのお眼鏡に叶うとはねえ。まあ、そう言う事ならいいか。んじゃ、おっぱじめっか。おっと。あたいの名前はカルメンだよ。これからあんたの試験を担当する」
 そう言ってさっさと部屋の中央へと歩き始めようとしたカルメンを、コウヒは呼び止めた。
「あの?」
「なんだい」
「試験というのは分かったのですが、先ほどの上級とは?」
 首を傾げたコウヒに、カルメンはため息を吐いた。
「なんだい。あいつ、また何も説明していないのかい」
 そう言ってドアを睨み付けたカルメンだったが、反応があるはずもなかった。

 仕方ないといった表情で、カルメンがコウヒに説明を始めた。
 今いるこの部屋は、闘技場で実績を積んだ者達がランクを上げるために受ける試験会場になっている。
 ただし、物事に例外はあって、本来は闘技場での実績が無いとこの部屋で試験は受けられないのだが、受付で認められれば上級の試験を受けられるという事だった。
 早い話が飛び級制度という事になる。
 もっとも、時に命のやり取りが絡む可能性もある闘技場なので、滅多に認められることは無い。
「・・・・・・はずだったんだが、あんたは認められてここにいるってわけだ。おっと、ちょいと待ってな」
 一通りの説明をしたカルメンだったが、懐に手を入れて何かを取り出した。
 するとすぐに、コウヒが入ってきたドアとは別の場所に付いているドアが開いて、女性が一人入って来た。
「カルメンさん、どうしまし・・・・・・あら。失礼いたしました」
 職員の制服に身を包んだその女性は、コウヒに気付いて一礼をしたあとに、カルメンへと視線を向けた。
「試験ですか?」
「そうだよ。あいつご指名の試験だ」
「それはまた珍しいですね」
「ま、あいつの目が正しいかはこれから確認するんだがな。見届け役頼むぞ?」
「畏まりました」
 そんな感じでカルメンと女性職員の二人で話が進んで行き、その間コウヒは手持無沙汰状態で話が終わるのを待つのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「おお。済まなかったな」
 しばらく女性職員と話し込んでいたカルメンが、ようやくコウヒへと視線を向けた。
 二人の会話の後半は、コウヒとの試験のことではなくカルメンが格闘していた書類の事を話していたが、コウヒは気づかなかったふりをしていた。
 誰にでも苦手なものがあることは、コウヒもよくわかっているのだ。
「いえ」
 短く答えたコウヒに、カルメンが部屋の一角に並んでいる武器を指した。
「悪いが試験なのであそこに並んでいる武器を使ってくれ。あそこにあるものであれば得物はなんでもいい」
「分かりました」
 コウヒは、スタスタと武器がある場所に歩いていき、オーソドックスな片手剣を手に取った。
「それでいいのかい?」
「ええ。構いません」
「それじゃあ、始めるか。おっと、その前に。これはあくまでも試験だから、相手を殺したりするような攻撃は禁止だ。それだけ気を付けてくれればいい」
「わかりました」
 カルメンの注意に同意して、コウヒはカルメンの傍まで近づいて行った。
 三メートルほどまで近づいたコウヒはその場で止まった。
 それを見たカルメンは、視線を一度女性職員へと向けて再びコウヒへと戻した。
「それでははじめ!」
 カルメンの視線を受けた女性職員がそう声を掛けると、次の瞬間、場の空気が固まった。

 それを感じたカルメンは、内心で冷汗を流していた。
「なるほど。あいつがここに送って来るわけだ」
 そう呟いたカルメンは、ちらりと視線を女性職員へと向けた。
 女性職員は、カルメンが感じているような空気を感じ取れてはいないようだった。
 動かないカルメンを訝しげな視線で見ている。
 それを確認したカルメンは、視線をコウヒへと向けてこう言った。
「すまないが、これはあくまでも試験だからな。悪いが、付き合ってもらえるか」
 カルメンの言いたいことを察したコウヒは、すぐに同意した。
「ええ。わかりました」
「悪いな」
 短くそれだけを答えたカルメンは、直後、コウヒへ向かって走り出した。
 カルメンが持っている武器もコウヒと同じく片手剣だ。

 戦闘を生業にしていない普通の者では捉えるのが精一杯といったスピードでコウヒへと肉薄したカルメンは、そのまま片手剣をコウヒへと振り下ろした。
 傍で見ていた女性職員が、思わず目を見張ったその攻撃は、コウヒに完全に受け流されてしまった。
「ははは。この攻撃をここまで綺麗に受け流すか」
 嬉しそうな顔になったカルメンは、その後もコウヒに対して攻撃をし続ける。
 その全てを持っている剣で受け流したり、躱したりしながらコウヒは冷静に対処していた。
 普通に考えればとんでもない攻撃の数々なのだが、コウヒの身体には一度たりとも当たっていない。
 そんな中、カルメンが突然ほんの一瞬だけ攻撃を止めた。
 そして、次の瞬間、コウヒに向かってこぶし大の火の塊が飛んで行った。
 突然の魔法攻撃だったが、コウヒはそれにも特に慌てた様子を見せずに、向かって来た火の塊を持っていた剣で切り捌いた。
 それを見たカルメンは、攻撃の手を止めた。
「ははっ。あれまで完璧にしのぐか」
 コウヒはそれには答えずに、首を傾げていた。
「魔法攻撃も良かったのですか?」
「いんや。だが、あんただったらちゃんと防ぐだろうと思って使ってみた。ああ、勿論本番では普通にありだからな」
「分かっています」
「だったらいいさ。・・・・・・さて、もう充分だろ」
 頷くコウヒを確認したカルメンは、その視線を女性職員へと向けた。

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 コウヒの試験官を引き受けることになった女性職員は、二人の戦闘を驚きながら見ていた。
 職業柄、様々な戦闘を見て来たという自負がある女性職員だが、これほどの戦闘は高ランク同士の戦闘でないと見れないものだと断言できる。
 間違っても初めて試験を受けに来るような人間が出来るようなものではない。
 だが、コウヒはカルメンの攻撃をきっちりと受け流していた。
 遂にはカルメンが繰り出した魔法攻撃さえ、剣で切り落としてしまった。
 二人が何やら会話をして、自分を見ているが呆然としてしまってそれに応えることも出来ない。
 十分にも満たない戦闘だったが、試験としては十分すぎるほどの結果だった。
「おーい。いいかげん戻って来いよ」
 カルメンが女性職員の目の前で手を左右に行ったり来たりをさせて、ようやく女性職員がまともに応答した。
「はっ!? し、失礼いたしました」
「まあ、気持ちはわかるからそれはいいさ。それよりも結果は?」
 カルメンがそう聞くと、コウヒの視線も若干力がこもった。
「問題ありません。合格です。細かい話をしますので、あちらにいらしてください」
 女性職員がそう言って、最初に自分が入って来たドアを指した。
 コウヒが頷くのを確認したのち、女性職員はそのドアに向かって歩き出した。
 その女性職員の後ろをコウヒが付いて行った。

 それを見届けたカルメンは、コウヒがドアの先に消えたのを確認してから呟いた。
「やれやれ。とんでもないやつが入って来たもんだ。これから荒れるだろうねえ」
 口調とは裏腹に、そう呟いたカルメンの表情は楽しそうに笑っているのであった。
コウヒだけで一話使ってしまいましたw
この後、どうしましょうかね?
無双状態の話を何話も書き続けてもしょうがないので、コウヒの活躍は結果報告だけで終わりそうな気がしますw
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