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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(11)登録

 セイチュンに集まったロマン達を含む冒険者たちは、それぞれの役割を果たすために行動を起こし始めた。
 それを見送ってから、考助達も行動を開始することとなった。
「それじゃあ、頼んだよ」
 馬車に乗り込む前に、考助がコウヒにそう言った。
 それを受けてコウヒも頷いた。
「はい。こちらの事はお任せください」
 コウヒとて滅多なことでは暴走したりはしない。
 というより、考助の事が絡まない限りは、暴走することは無いのだ。
 この街で考助の事を正確に知っている者は存在しないため、コウヒが暴走する確率は限りなく低い。
 勿論、考助もそれを見越してコウヒに任せたのである。

 ギルドの拠点は馬車が止まれるスペースがあるのだが、考助達はそこで話をしていた。
 挨拶も適当に切り上げて考助達がその場所から表通りへと馬車を向けると、様々な視線が突き刺さって来た。
 そのほとんどが、新しくできたギルドの内情を探ろうとするものだ。
 此方の様子をうかがっている者達の視線を感じた考助が、馬車内でぼそりと呟いた。
「いやー。皆、そんなに暇なのかな?」
 勿論そんなわけがないと分かっていて、考助もそんなことを言っているのだ。
 そんな考助に、セシルが小さく笑顔を見せた。
「いきなりこんな建物を建てたギルドが気になるんでしょうね」
「でも、放置していて大丈夫なのでしょうか?」
 そう疑問を口にしたのは、リリカだ。
 そんなリリカに対して、考助が首を傾げた。
「あれ? 気づいてなかったの?」
「コウスケ様。普通はあると言われないと気づきません。私達も最初からあると予想していたから気付けましたから」
 そう言ってリリカをフォローしたのがアリサで、セシルは首を上下に振っている。

 そんな三人の様子を見て、リリカが首を傾げている。
「リリカさん、ギルドのあの建物はコウスケ様が作られた魔道具で守られています」
「正面の受付に入るならともかく、それ以上は不審者扱いで進入禁止になります」
「えっ!?」
 それぞれ、セシルとアリサに言われたリリカは、思わず考助を見た。
 そんな仕掛けがあるとは全く気付いていなかったのだ。
 建物を結界などで守る魔道具は全くないわけではないのだが、リリカにとってここまで違和感を感じさせないものは初めてだったのだ。
「全く気付きませんでした」
 そう言ったリリカに、考助が肩を竦めて答えた。
「まあ、気付かれないように作ったからね。そのための魔道具だし」
 考助はさらりとそう答えたが、ギルドで使われている魔道具をもし商売するとすれば、相手は間違いなく国になるだろう。
 それほどのレベルの出来なのだ。
「あっ、もしかして、歓迎会の時に出されたカードが?」
 歓迎会の時に、全員に対してカウンターに手を当てるように指示されていたことを思い出したリリカが、そう言って考助を見た。
「ああ、そうだよ。あれが建物に自由に入れるようにするための認証」
「・・・・・・全然気づきませんでした」
 考助にあっさり頷かれて、リリカは落ち込んだように項垂れた。
 シルヴィアの片腕として時に身分の高い者達を相手にすることもあるリリカだったが、こうした顔を見せるのは非常に珍しい。
 といっても、昔の仲間達が見れば、相変わらずだな、と笑われているだろう。
 そんなリリカをセシルとアリサが慰めながら、考助達を乗せた馬車はガゼンランの塔へと進むのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助達を見送ったコウヒは、すぐにセイチュンのもう一つの顔である闘技場へと足を運んだ。
 相変わらず人の注目を浴びているが、それに対して全く頓着せずにコウヒは真っ直ぐに闘技場の受付へと向かった。
 流石にコウヒの名前そのままで登録するつもりはない。
 普段使っている偽名の「コリー」の名で登録するつもりだ。
 闘技場の受付に座っているのは、いかつい顔をした男だった。
 顔の頬には大きな傷が付いている。
 周囲の注目を浴びながら順番が回って来たコウヒがカウンターに来るのを見て、その頬を引き攣らせた。
「おい、嬢ちゃん。ここは出場者の受付カウンターだぜ。賭けの受付はあっちだ」
 そう言いながら、男とは対照的にきれいな女性が座っているカウンターの方を指した。
「こちらが出場者を受け付けているカウンターなら間違っていません」
 男の言葉に特に表情を変えずにそう言ったコウヒに対して、逆に男が表情を変えた。
「おい。あんた正気か? 闘技場のルールを分かってきているのか?」
 男としては親切心で言った言葉だった。
 何しろ普段のコウヒは、着ているメイド服のおかげか、全く実力者には見えない。
 勿論、コウヒがそう見えるように実力を隠しているのもあるのだが。
 そのことに気付いたコウヒが、一つだけ頷いた。
「ああ、そうでしたね。では・・・・・・これで、どうでしょう?」
「なっ・・・・・・!? ググッ!?」
 時間にすればほんの一瞬だったので、そのやり取りは周囲の者は誰も気付かなかった。
 だが、その一瞬だけで、受付の男の表情が驚愕のものに変わった。
 その男を見て、コウヒは首を横に傾げた。
「これでも、まだ不満ですか?」
「あ、ああ。いや、済まなかった。・・・・・・ちょっと待ってくれ」
 何もなかったかのように立っているコウヒを見て、男は一瞬だけ呆けた顔になったが、すぐに視線を下に向けて何かを書き始めた。

 男は小さく折りたたんだ紙をコウヒへと差し出して、先程とは違った方向を指した。
「あの五番の数字が書かれたドアから入ってくれ。中に人がいるからこれを渡してくれればいい」
 そう言った男に、コウヒは小さく首を傾げた。
「名前とかは書かないのですか?」
「ああ、そういう手続きは試験に通ってからだ。まあ、あんたなら大丈夫だろうが」
「そうでしたか。ありがとうございます」
 コウヒは、そう言って頭を下げてから男に言われた番号へ向かって歩き出した。

 そんな二人のやり取りを興味深げに見守っていた職員の一人が、受付の男へと囁いた。
「あそこは、高ランク者の試験場だぜ? 良いのかよ?」
 そんな職員に対して、受付の男が苦笑しながら答えを返した。
「ああ、良いんだよ。ったくよお。職員が賭け事御法度だと決めたのは誰だよ。俺だったら、間違いなくあの嬢ちゃんに賭けるんだが」
「あんたみたいのがいるから、禁止になったんだろう?」
「チッ、つまんねーな」
 舌打ちをする男を見てその職員も興味を持ったのか、もう一度コウヒが消えたドアへと視線を向けた。
「そうか。あんたにそこまで言わせるか。なあ、『剛力』の」
 『剛力』と呼ばれた受付の男は、フンと鼻を鳴らした。
「こんな有様になった俺にそんなことを言っても何もでねーぞ?」
 そう言いながら男は足を擦った。
「もったいねーよなあ。足さえやらなければ、あんたは間違いなく最強まで上り詰めただろうに」
「ははっ。最強か。・・・・・・あんなのを見た後だと、とてもそんなことは言えないな」
 そんなことを言いながら、受付の男はコウヒが消えたドアを見つめるのであった。

 職員と受付の男のやり取りは、他に聞かれることは無かった。
 その後は、後ろに並んでいた新しい登録者の受付に追われることとなったのだ。
 だが、この二人が熱狂した観客の口からコリーの名を聞くことになるのは、そんなに遠い未来ではないのであった。
はい。いよいよコウヒが闘技場デビューを果たします。
といっても次回は定番通り、デビュー前の試験です。
ついでに第一回戦の模様もさらっと流すかもしれませんw

※コウヒの偽名は今回初めて出てきました。
以前の話で出ていたかと探さないようにお願いしますw
いずれはミツキの偽名も出せればいいですね(棒)
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