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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(9)歓迎会

 ロマン達は、セイチュンの街の検問を普通に通り抜けて街に入った。
 この検問を行うために、わざわざ街の外で転移を行ったのだ。
 街に入った一行は、真っ直ぐギルドの拠点へと向かう。
 一度街に入ったにもかかわらず、塔がある街の外れに向かうエクに一同は訝しげな表情を浮かべていた。
 だが、拠点の前に着いてエクから説明を受けると納得したような表情になった。
「ここが活動の拠点となる建物です。街中の宿に泊まるかどうかは自由ですが、こちらの部屋でしたら無料で使うことが出来ます。どちらでも好きにしてください」
 冒険者として活動するうえで一番かかる経費は、当然ながら宿泊費だ。
 宿に泊まるにしろ賃貸を借りるにしろ、かなりの負担になるのだ。
 ギルドの拠点が宿泊所として使えるとなれば、その負担はかなり軽減されることになる。
 目の前にある建物は、ここにいる全員が泊まっても余りあるだけの部屋数がある。
 勿論、こうなることを見越してエクが発注したのだ。

 エク達が建物の中に入ると、そこでは考助が寛いでいた。
 建物の入口から入ってすぐは、本来はギルド員達が依頼を受けるスペースになっている。
 だが、そもそもそれだけの数のメンバーがいるわけではないので、今は単純にちょっとした食事処といった場所になっているのだ。
 考助がこの場所にいたのは、エクが今いるメンバー達を連れてくるのを待つためだ。
「やあ、来たね」
 考助がそう言うと、真っ先にリリカが反応した。
「コウ・・・・・・様!」
 危うく本当の名前を言いそうになったリリカだったが、寸前で踏みとどまった。
 少しばかり迂闊な所は、以前と変わっていないのだ。
 もっとも、リリカがそんな顔を見せるのは、ごく一部の人間の前だけだが。
 リリカの勢いにロマン達が戸惑っている隙に、セシルとアリサも挨拶を済ませてしまう。
「コウ様。お元気そうですね」
「また一緒にお仕事が出来るとは思っていませんでした」
 自分に挨拶をしてきた三人に、考助も笑顔を見せて頷いた。
「ああ。皆久しぶり。また力を貸してもらう事になったよ。といってもリリカとは一緒に仕事をするのは初めてだね」
「はい」
 リリカのその態度に驚く一同だったが、さらに驚くことが起こった。

 彼らが今いる場所から少し奥まった場所にドアがあるのだが、そこから二人の美女が現れたのだ。
 その姿に、異性は勿論の事、同性の者も目を奪われた。
 勿論、二人の美女とはコウヒとミツキのことだ。
「再会を喜ぶのは良いですが、今は食事を運ぶのを手伝ってもらえませんか?」
 コウヒがそう言うと、昔の名残なのかすぐにセシルとアリサが反応した。
「分かりました」
「私も」
 そう言ってコウヒに誘われるように奥の部屋へと向かった。
 それを見て慌ててロマン達もついて行こうとしたが、ミツキに止められた。
「セシルとアリサがいれば十分よ。取りあえず今は、席に着いて待っていなさい」
 その迫力に圧されたのか、それとも美人の言う事に従っただけなのか、ロマン達は素直に備え付けられた椅子に座った。
 その時、パーティ同士で固まっているのは、当然の事といえば当然のことだった。

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 セシルとアリサの手によって次々と運び込まれる料理に、一同は唖然としていた。
 量もそうなのだが、一流の料理人が作った料理と言われても遜色がない程の出来に見えたためだ。
 一通りの料理が出そろったのか、今まで給仕もどきをしていたセシルとアリサが席に着いた。
 それを見た考助が、一同に向かって話し始めた。
「皆様が、この地で活動を始めるにあたって、ささやかですが料理を用意しました。流石に何度もとはいきませんが、今は楽しんでもらえればと思います。この後、それぞれのパーティにやってもらう事を話しますが、まずはこの料理で英気を養ってください」
 考助は一度話を区切って、テーブルの上に乗った飲み物を手にした。
「それでは、今回の依頼が成功することを願って。乾杯!」
 考助がそう言うと、それぞれの口から乾杯の声が聞こえて来た。
 ただし、中に入っている飲み物は、アルコールではない。
 それが終わると、お預けを食らっていた食事の開始となる。
 何かを口にするたびに上がる歓声に、考助は食事を用意してよかったと思った。
 料理を作ったのは、ミツキなのだが。

 歓迎会もいよいよお開きという所になって、エクからそれぞれの役目を言い渡された。
 流石に会の最中は騒いでいた者達もこの時ばかりは神妙な顔で話を聞いていた。
 ただし、役目と言ってもさほど特殊な仕事というわけではない。
 ロマン達にはガゼンランの塔の攻略、本部で迷っていたパーティは公的ギルドで受けられる依頼を達成する、もう一つのパーティはフィールドに出て依頼を達成するという目標が掲げられた。
 何のことはない。
 普段冒険者として活動していることを、そのままこの街で行えばいいと言われただけである。
 勿論、ギルドのメンバーとして活動をするという制約がついているが、それ以外はほとんど何も違いが無いのだ。
 それらの話を聞いた一同は、拍子抜けした顔になっていた。
 セシルやアリサに加えてリリカまで集まっていたので、もっと大きな依頼でもあるのかと考えていたのだ。
 だが、ふたを開けてみればごく普通の内容に拍子抜けするのも無理はないだろう。
 そんな彼らの思いとは裏腹に、あとは自由に解散していいということとなった。

 未だに若干戸惑ったままの冒険者達を余所に、考助はセシルとアリサそれからリリカを別の場所に呼び出した。
 勿論、彼女らにはそれぞれの役目をこなしてもらうつもりなのだ。
 といっても基本的にやってもらうことは、他の冒険者達とほとんど変わらない。
「まず、リリカなんだけれど・・・・・・」
「は、ハイ!」
 他の冒険者達の視線が無くなって固い態度をとるリリカに、考助は苦笑した。
「まずはその固い態度はどうにかならない?」
「むむむ、無理です!」
 ロマン達がいる所では、ちょっとした目上に対する態度を取っていたリリカだったが、彼らの目が無くなると完全に神として敬う態度になってしまっていた。
 ここまで来ると、考助にしてみれば逆に器用すぎると思わなくもない。
「そうか。まあ、それじゃあしょうがないけれど、塔の攻略をしているときはその固さは取ってね」
 流石に塔の中でも緊張しっぱなしでいると、何があるかわからない。

 リリカにはある目的のために、考助達と一緒に行動してもらうつもりなのだ。
「はい! ・・・・・・え? 攻略?」
「そう。リリカには僕らと一緒に塔の攻略をしてもらうから」
「えええええ! こここ、コウスケ様と一緒にですか!?」
 今にも卒倒しそうな声を上げたリリカに、考助は本当に大丈夫かと不安になったが、こればかりは本人にどうにかしてもらうしかない。
「ちょっと下層を攻略していたときに気になったことがあってね。色々と聞きたいことがあるんだ」
 頷きながらそう言った考助に、流石のリリカも多少の落ち着きを取り戻したのか、首を傾げた。
「聞きたい事・・・・・・それは、他の神々に関係することですか?」
 自分が呼ばれるとすればそれくらいしか思い当たることが無い。
 リリカがそう考えて聞いてくるのは、当然と言えば当然だった。
「ああ。そうだね」
「わかりました。ですが、別に一緒に塔を攻略する必要はないのでは?」
 後から口頭で確認すればいいのでは、というリリカの問いに、考助は首を振った。
「どうしても現場で確認したい物とかもあるからね」
「そういう事でしたら、分かりました」
 完全に納得した表情でリリカは頷いた。
 それを確認した考助は、次はセシルとアリサへと視線を向けるのであった。
世にも珍しいミツキの料理を口にした一行でした。
もっとも、本人たちはその幸運を全くわかっていないですw
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