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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(8)別働隊

 アマミヤの塔の第五層にあるクラウン本部は、既に何度改築を行い今ではかなりの大きさの建物になっていた。
 初めてクラウン本部に来たものであれば、まず間違いなく迷ってしまうような規模の大きさになっているのだ。
 とはいえ、クラウンに来て一番最初にメンバー登録をする場所は、一番分かりやすい所にあるので迷うことは無いのだが。
 そんなクラウン本部の建物には、いくつもの会議室が設けられている。
 会議室は、外部から来た者との話し合いにも使われているのだが、その多くは指名依頼を受ける者たちと話し合いをするために使われている。
 そんな会議室の一つに、ロマンをリーダーとしたパーティメンバーが集まっていた。
 ロマン達は既に何度も指名依頼を受けている立場なので、この会議室に来るのに迷うことは無かった。
 もっとも、ロマン達がその会議室に入る前に、廊下でうろうろしているパーティメンバー達がいた。
 何とも見覚えのある懐かしい光景に、ロマンたちが助け舟を出したのは言うまでもない。
 ついでに言うと、向かう会議室も偶然にも同じ場所だった。
「本当にありがとうございます!」
 迷っていたパーティのリーダーが、ロマンに向かって礼を言って来た。
 ちなみに、既に何度も同じ礼を貰っている。
 ロマンは、少しだけ笑みを浮かべながら、右手を振った。
「だからもういいって。次来た時に誰かが迷っていたら、その時は助けてあげるといい」
 そんなことを言ったロマンだったが、このセリフは実はロマンも昔先輩冒険者に言われたことがある言葉だった。
 チラリと視線を仲間たちへ向けると、どことなくニヤいている。
 昔の事でも思い出しているのだろう。
 後でいじられるのが確定したな、と心の中でうんざりしていると、目的の会議室へと着いた。

 会議室には、既にもう一つのパーティも集まっていた。
 前にも何度か依頼を一緒に受けたことがある中堅クラスの冒険者パーティだ。
 クラウンの大規模輸送はともかくとして、指名依頼で三つのパーティが集まることはそれなりに珍しい。
 パーティの数が増えれば、それだけ大きな規模の依頼だという事になるためだ。
 これは気合を入れなおさないと駄目かな、とロマンが考えていると、更に二人の冒険者が入って来た。
 入って来たのは二人の女性だったのだが、その二人に対してその場に集まっている全員が驚きの顔になった。
「セシル先生!」
「アリサ先生!」
 ロマンたちはアリサのことを見て驚いていたのだが、先に来ていた冒険者パーティはもう一人の女性を見て驚いていたようだった。
 ロマンたちより先に来ていたパーティは、学園でセシルに教えてもらったことがある生徒たちだったのだ。

 そんな彼らを見てセシルとアリサもそれぞれ挨拶を交わしていたが、それもすぐに終わった。
 さほどの時間も経たずに、二人の女性が入って来たのだ。
 一人はクラウンの事務の制服を着ていたので、依頼の説明をする職員だという事がわかる。
 ただし、もう一人その職員と一緒に付いてきた女性が問題だった。
「リリカ様!」
 集まったメンバーの内、神職にある者達がその女性に反応したのだ。
 同時にその名前を聞いて、その場に集まったほとんどの者達が反応した。
 ラゼクアマミヤでは確固たる地位を確立しつつある現人神コウスケ。
 彼の神の巫女としてシルヴィアは、多くの者達に知られているが、更にそのシルヴィアの補佐役としてリリカの名前も神職にある者達には広まっているのだ。
 セシルやアリサだけではなく、リリカまでも集まったという事で、全員の視線が今回の情報を持って来たであろう職員へと集まった。
 それらの視線を受けて、女性職員は若干頬を引き攣らせつつ、今回の依頼の説明を始めるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 セイチュンの街から少し離れた場所で、エクは転移門が作動するのを待っていた。
 街の中では気軽に転移門を使えないので、わざわざこうして街の外で作った。
 ただし、こうして街の外で待つようなことになるのは最初で最後になる。
 この先の予定では、<神狼の牙>が大きくなって転移門の使用も普通に出来るようになるはずだからだ。
 あくまでも予定なのだが、エクはこの案件が失敗するとは欠片も考えていなかった。
 何しろ、エクにとっては最強の三人が動いているのだ。
 あの三人であれば、どんなことが起こっても笑ってやり過ごす気がする。
 そんな事を考えていたエクの目の前で、転移門が動き出すのであった。

 転移門から現れたのは、ロマンをはじめとした本部で指名依頼を受けていた者達だった。
 エクは始めに、彼らを連れて来たクラウンの職員に話しかけた。
「ご苦労様。貴方はもう向こうに戻っていいわ」
「はい。では、こちらにサインをお願いします」
 職員から一枚の紙を差し出されて、エクはその紙に自分のサインをする。
 それを確認した職員は、再び転移門へと戻りすぐに動作をさせてクラウン本部へと戻った。
 職員を見送ったエクは、すぐに転移門をいじって、証拠隠滅とばかりにそこにあったはずの転移門を消してしまった。
 転移門が無くなるところなど滅多に見ることが無い一同は、目を丸くしてその作業を見守っている。
 当然ながら転移門の解体は、管理者としての権限が無いと出来ない作業となる。
 解体作業が出来るのがごく少数しかいないため、ほとんど見ることが出来ないのだ。

 そんな彼らの視線を感じつつ、エクは解体作業を終えて彼らの方を向いた。
「では、話に聞いていたと思いますが、この近くにあるセイチュンに向かいます。そこで貴方たちは、ギルド<神狼の牙>の一員として動いてもらいます」
 ここにきているメンバーは、クラウン本部でどのような活動をするのか聞いている。
 早い話が、セイチュン内で<神狼の牙>のメンバーとして動いていくのだ。
 ギルド<神狼の牙>は、クラウンの正式な出先機関(?)のようなものとなる。
 ただし、セイチュン側に警戒されないように、しばらくクラウンの事は伏せて活動することも話として聞いていた。
「当分の間は依頼を受ける先が、セイチュンの公的ギルドになるだけで活動そのものはクラウンで行っていたものと変わりません」
 道すがら復習のような感じでエクからそれらの話を聞いた一同は、本部で聞いたことと変わりがないことに同意した。

 そんな中で、ロマンが疑問に思ったことをエクに聞いた。
「具体的に、どのような依頼を受ければいいのかとかはありますか?」
 その質問にエクは首を振った。
「いえ。特にはありません。もしかしたら、活動場所を限定するように言われるかもしれませんが、それは街に着いてからになります」
「言われる? 貴方からの指示に従うのではないですか? 本部ではそう言われてきたのですが?」
 エクの言葉に疑問に思ったリリカがそう聞いてきた。
 リリカもそうだが、セシルやアリサもセイチュンの街に考助がいることは知らないのだ。
 ちなみに、エクの立場も濁して教えられている。
 流石にセシルやアリサ、それにリリカは何度か会ったことがあるので分かってはいるのだが、他の者達には知らない体で接していた。
 だからこそ、エク以外の者から指示されると聞いて、訝しく思ったのだ。
「基本的には間違いではありません。ただ、セイチュンにいる者から指示があった場合は、そちらが優先になります」
 エクがはっきりと、優先順位を示したことでセシルとアリサは顔を見合わせた。
 この時点で、セイチュンにいる者というのが誰であるのか、何となく想像がついたのだ。
 同時に今回の依頼の重要性を察して、心の中でため息を吐くのであった。
こ、考助が出てきませんでしたw
たまにはいいですよね?
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