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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 ガゼンランの塔

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(5)疑念

 塔から外に出た考助達は、例によって露店を覗きつつ宿へと戻った。
 ギルド開設の手続きなどは翌日に行う予定だ。
 セイチュンの街でのギルド開設の手続きは、他と違って面倒なことがある。
 まずは塔の運営を行っている塔攻略ギルドでカードの更新を行って第二十一層を間違いないく越えていることを証明してもらった後に、公的ギルドに行って本来のギルド開設を行うのだ。
 ガゼンランの塔の第二十一層への突破が条件になっているために必要な手続きなのである。
 流石に塔から戻ったばかりのその日のうちにこれらの事務手続きをするのは、面倒極まりないので翌日という事になったのである。

 そして、ガゼンランの塔から出て来た翌日。
 考助達は予定通りに、塔の麓にある塔攻略ギルドを訪れた。
 勿論目的は、第二十一層を越えたことを証明してもらうための手続きに来たのだ。
 受付してくれたのは、偶然にも一番最初に受付してくれた女性だった。
「はい? ギルド開設証明、ですか?」
 何を言われたのか分からないのではなく、言ったことが間違いではないことを確認するように、その女性が聞いてきた。
 考助も笑顔のまま間違いではないと、頷いた。
「ええ。折角ですからギルドを作りたいと思っていますので」
「そうですか」
 考助の言葉に、いつもの流れで営業スマイルを浮かべた女性は、その表情のままピシリと固まった。
 その視線の先には、考助が差し出した塔攻略用のカードがある。
 考助も改めて確認したが、間違いなく最高到達階層が第二十一層になっているので問題ないはずだ。
「? 階層はきちんとクリアしているので、問題ないはずですが?」
 首を傾げてそう言った考助に、受付の女性はようやく動きを再起動させた。
 ただし、その笑顔は固まったままである。
「え、ええ。問題はないのですが・・・・・・しょ、少々お待ちください」
 女性はそう言って、そのカードを持ったまま小走りに部屋の奥へと向かった。
 それを見た考助は、ちょっとまずかったかなと、頭の中に疑念が過ったが、今更どうしようもない。
 女性が戻ってくるのを大人しく待つことにしたのだった。

 女性が奥へ消えてから数分後。
 如何にもやり手といった風貌の女性を伴って、受付の女性が戻って来た。
「お待たせいたしました。申し訳ありませんが、私どもの代表が話があると申しております。一緒に来ていただいてもよろしいでしょうか?」
 受付の女性はそう言ったが、考助は首を傾げてそれを止めた。
「何かありましたか? こちらとしては特に問題があるとは考えていないのですが?」
 ここまでくれば、考助としても何が問題なのかは大体わかっている。
 とはいえ、このまま唯々諾々と従うつもりもなかったので、そう聞いたのだ。
 考助の言葉に答えようとした受付の女性を制して、やり手風の女性が代わって話した。
「私どもも何か問題があったとは考えていません。いくつかお聞きしたいことがあるだけです。ただ、その中には個人的な内容も含まれますので・・・・・・」
 多くの人が集まるこの場所では聞きづらい、という事を匂わせてその女性は周囲を見渡した。
 考助としては、その言葉が聞ければ十分だったが、その上で次の問いかけを重ねた。
「そういう事ですか。でしたら、他の二人も当然付いて行った方が良いですよね?」
 確認の体で聞いているが、連れて行かないのであれば一緒にはいかないと匂わせて聞いている。
 相手の女性もそのことがわかったのだろう。
 一瞬だけ視線をさまよわせたが、すぐに頷いた。
「ええ。勿論です。ご一緒にどうぞ」
 女性はそう言って、考助達が付いてくる仕草を見せると、奥の部屋へと歩き始めた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 案内された部屋は、高級な調度品が揃っている部屋だった。
 ガゼンランの塔が西大陸にとって重要な位置を占めている塔である以上、一定以上の身分の者を迎え入れることもあるのだろう。
「どうぞ、こちらにお座りください」
 女性はソファーを示しながらそう言った。
 そのソファーには丁度三人が腰かけられるくらいの広さがあったので、真ん中に考助、右側にコウヒ、左側にミツキが座った。
 三人が腰を落ち着けるのを見てから、案内して来た女性が話し始めた。
「まずは自己紹介からさせていただきます。私の名前はアルタと申します。このギルドの副代表をしております」
 考助がやり手と思ったのは間違いではなかったようで、何と女性は塔攻略ギルドの副代表だった。
 名前を言われた考助が、自分も名前を名乗ろうとしたが、アルタはそれを手で止めて続けて話した。
「貴方達のお名前は既に存じておりますので、大丈夫です」
「そうですか」
 調査済みですと言われても、考助としては何と言って良いのか分からなかったので、それだけ答えた。

 ついでに、この部屋へと呼んだ理由を聞いてみることにした。
「それで? わざわざこのような部屋に呼んだ理由を伺っても?」
 考助の言葉に、アルタは首を縦に振った。
「勿論です。それが目的ですから。それで、お伺いしたい事ですが、ギルドを作られたいという事で間違いないですか?」
「そうですが?」
「確かにカードでは第二十一層を越えられているようですが、いつ越えられたのでしょうか?」
「昨日ですね。塔から出てくるところは、先ほどの方が見ていたはずですよ?」
「ええ。そのことも伺っております」
 アルタと会話をしながら、考助は彼女が何を知りたいのかと考えていた。
 今まで聞かれたことは、わざわざ自分から情報を仕入れなくともわかることなのだ。
「その彼女から聞いたのですが、貴方達が此方に来てカードを作られたのは半月ほど前とか?」
「ええ。間違いありません」
 これも隠すことではないので、素直に頷いた。
「という事は、貴方達はこの半月ほどで第二十一層まで行かれたという事になりますね」
 アルタがそう言うと、考助にもようやく彼女が何を疑っているのか理解できた。

 確かに彼女たちの立場ではそのことは疑わないといけないと理解できた考助は、自分から話を切り出すことにした。
「ああ、そういう事ですか。貴方は私達がカードを偽造したのではないかと疑っているのですね」
 考助は笑いながらそう言いいつつ、アルタの表情を注意深く見つめる。
 考助から注目されていることを理解しているのか、アルタの表情はほとんど変わらなかった。
 その上で、首を左右に振りながら答えた。
「流石にそこまでは疑っていません。ここで作っているカードは、塔で作られる物をそのままお渡しししています。いわば神具に等しいのです。そんな物を簡単に偽造できるとは思いませんから」
「あ、そうなんですか、ではなぜ?」
「単純に、どのようにこの短期間で第二十一層まで行かれたのかをお伺いしたかっただけです」
 あっさりとそう言ったアルタだったが、それでも考助はその言葉を鵜呑みにはしなかった。
 ここで出しているカードが神具と言うのは初耳だったが、それを本当の事だと信じる必要もないのだ。
 とはいえ、アルタの言いたいことも理解できたので、素直に自分達が実行した攻略方法を話すことにした。

 考助達の攻略方法を聞いたアルタは、一応納得したような表情で頷いていた。
「パーティの能力によっては出来ないわけではないという事は理解しました」
「それはよかったです」
「ですが、いくらCランクとはいえそこまで簡単にモンスターの処理が出来るのでしょうか?」
「それは、そうです、と納得していただくしか・・・・・・ああ、そうか」
 考助が思い出したように手を打ったのを見て、考え込むような仕草を見せていたアルタが視線を合わせて来た。
「何でしょうか?」
「僕らは元々、セントラル大陸の冒険者です。このランクもセントラル大陸でのものです」
 考助のその言葉を聞いて、アルタもようやく納得したような表情になった。
 セントラル大陸と他の大陸でのランクの差の話は、どうやらここにも届いているようだった。
「そういう事でしたか。それでしたらまだ納得はできますね。長々と拘束してしまって、申し訳ありませんでした」
「いえ。こちらとしては、納得いただければいいです」
 思った以上にセントラル大陸の冒険者が評価されていると知れただけでも考助としては十分だ。

 その後は、特に何か突っ込まれて聞かれるわけでもなく無事に証明書を発行してもらい、考助達は塔攻略ギルドを後にするのであった。
セントラル大陸の冒険者の評価がしっかりと世界中に広まっていることを伝える回でしたw
少なくとも、これで考助達は塔攻略ギルドから注目されることになります。
明日は公的ギルドになります。
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