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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 セウリの森編

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(18)通せんぼ

 エルフ達に案内されて結界を抜けた考助達は、無事に馬車を預けてある村へと着いた。
 料金は余分に払ってあったので問題なく回収することが出来た。
 エルフの里で大分時間を取られたのと、特にこの村自体に用事があるわけではないので、すぐに馬車に乗り込み次の目的地に出発しようとしたところ、馬に乗った者に通行を止められてしまった。
 突然止まった馬車に驚いて、考助が馬車の車体から正面を見ると、そこには以前見たことがある隊長がホッとした表情で馬に乗っていた。
「よかった。間に合いましたね」
 そう言った隊長に、考助は顔をしかめて抗議をした。
「良くないですよ。いくらなんでも馬車の進路を妨害して止めるとは、どういうことですか?」
「申し訳ない。其方らの馬車を止めるには、どうしてもこうするしかなかったのだ」
 隊長も無茶をしたことは自覚しているのだろう。
 すぐに頭を下げて謝罪して来た。

 ここは怒るべきだろうか、と考えた考助だったが、その場合はさらに面倒事になりそうだったので、さっさと隊長の用事を済ませることにした。
「もういいです。それで? どのようなご用件でしょうか?」
 御者台にいて馬車を動かしていたミツキが不満げな表情になっていたが、考助はそれを視線で抑えながらそう切り出した。
 考助にそう聞かれた隊長は、一つ頷いてから話し出した。
「例の件についての話なのだが、ここでするような話ではないので、付いてきてもらえないだろうか?」
 そう言って来た隊長に、考助はこう即答した。
「お断りします」
「そうか。では・・・・・・何?!」
 思ってた答えが返ってこなくて、隊長が目を見開いて問い返して来た。
「お断りします、といいました。それでなくともあの件で旅の日程が長引いているのに、これ以上出発が遅れるのは困ります」
 実際は急ぐ旅ではないのだが、日程を理由にして急いでいることにした。
 そんな考助に対して、隊長は困ったような表情になった。
 最初の自分の対応がまずかったことは理解しているので、これ以上強くも出れなくて実際に困っているのだろう。

 仕方ないと言った表情で、隊長が切り出した。
「其方は、事の結末が知りたくないのか?」
「特には。僕が関わったのはあくまでもエルフ側の事です。エルフ側は既に終わったことになっていますので、そちら側がどう対処されたかは気にしていません」
 突き放すようにそう言った考助だったが、実際にそれぞれの国側がどう対処したのかは全く興味が無いのだ。
 警備にあたっていたのは複数の国家のようだが、実際に人さらいに関わっていたのが一つの国だけなのか複数なのかは分かっていない。
 はっきり言えば、考助にとってはどうでもいいことなのである。
 考助が手紙をコウヒに持たせたのは、セウリの森が少しでも静かになればいいと思っての事だ。

 考助の言葉に、隊長が益々困った顔になった。
 彼の様子を見る限りでは、上から連れてくるようにとでも言われているのだろう。
 だが、残念ながら考助はそんなことに従うつもりはなかった。
「それとも、貴方の持つ権限で僕らを連行でもしますか?」
 そんな権限が無いことを分かった上で、考助はそう言った。
 そもそもセウリの森は、何処の国にも属していない緩衝地帯になっている。
 森の中に存在している村は、どこかの国に税を納めているわけではないのだ。
 今回の森を巡回していた軍が複数の国で構成されていたのには、そういったわけがある。
 一つの国の軍で動いてしまうと、緩衝地帯であるセウリの森を侵略する意図があるとみなされてしまうのだ。
 そんな状況だからこそ、今目の前にいる隊長が考助を連行する権限など有しているはずもない。
 勿論、村の者達に捕まえてくれ、と言われたりすれば別なのだが。

 困った表情をしている隊長を見ながら、考助は内心でため息を吐いていた。
 別に考助が隊長に対してつんけんした態度を取っているのは、別に先ほどの進路妨害の事だけではない。
 考助が気づいているのだから、コウヒやミツキも当然気づいているだろう。
 先ほどから考助達の様子を窺っている者がいるのだ。
 その者が、隊長の状況を察したのか、ようやく姿を見せた。
 家の物陰に潜んでいたのか、建物の陰から馬に乗って現れたのは、いかにも貴族といった服を着た男だった。
「まあ、待ちたまえ。少しぐらいは話を聞いてもらえないだろうか?」
 隊長の態度から、この目の前の男が何かを指示していたことがわかる。

 そんな貴族を横目で見て、一つため息を吐きながら考助はもう一度同じセリフを言った。
「お断りします」
「な、何?」
 まさか断られるとは思っていなかったのが、その貴族は驚いた表情になる。
「どうせ『王の褒章』を持つ人間に目を付けたとかそんなところでしょうが、僕らは貴方の部下になるつもりも指示に従うつもりもありません」
「な、何だと?!」
 まさか、たかが冒険者にそこまで言われるとは思っていなかったのか、その貴族は顔を真っ赤にしてそう言って来た。
「き、貴様! この私を誰だと思っている!?」
 そうがなりたてる貴族に、考助ははっきりと言ってやった。
「知りませんし、興味もありません。貴方こそ、『王の褒章』を国外で一冒険者が自由に使っているという意味をもう少しきちんと考えてはどうでしょうか?」
「な、なんだと?!」
 考助が言ったことの意味が分からなかったのか、その貴族は顔を赤くしたままそう言った。
 だが、わざわざ考助がその意味をきちんと教える義理は無い。
 わざとらしくため息を吐いた考助は、最後にその貴族へ向かってこう言った。
「意味が分からないのであれば、周りのお友達にでも聞いてみるのですね」
 考助の言葉に、更に顔を赤くした貴族は、だがそれ以上何も言ってこなかった。
 言えなかったというのが正しいのかもしれない。
 何しろ考助が『王の褒章』を持っていることを知っているのだから。

 そんな貴族をもはやどうでもいいと思って見ながら、考助はミツキへ指示を出した。
「ミツキ、もういいよ」
「わかったわ」
 考助から指示を貰ったミツキは、ようやく馬車を動かした。
 今まで動かしていなかったのは、考助からの指示を待っていたためだ。
 考助の了解さえもらえれば、問題はない。
 目の前にいる隊長を迂回して、考助達が乗る馬車はようやく次の目的地へと進みだした。
 後ろで何かあの貴族がわめいているようだったが、もはや考助達には何の関係もないことなのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ちょっとした騒動はあったが、村を離れてしばらく経った頃には考助達は既に貴族の事は忘却していた。
 馬車の中で寛いていた考助は、のんびりとナナの背中を撫でながらコウヒと話をしていた。
「うーん。ようやくガゼンランの塔へ向かえるかな?」
「どうでしょうか?」
 含みを持たせたコウヒの言い方に、考助はナナの背中を撫でるのを止めてコウヒを見た。
「どういう事?」
「いえ。主様の引きの強さなら、この森でまだ何か騒動があってもおかしくはないかと」
「うわっ、ひどい」
 こんなことを言っているコウヒだが、勿論冗談だ。
 普段のコウヒは、これ位の冗談を言ったりもする。
 もっとも、ミツキ以外のメンバーがいる場所では、こんな冗談を言う事もない。
 管理層では大抵他のメンバーがいたりするので、滅多に聞けなくなっている。
 この旅ではこうしたコウヒの冗談も聞けるので、考助としては十分楽しんでいるのであった。
どうしてこうなった?
本来の考えていたのは、考助の手紙に感謝した隊長の所属している国の国王が、エルネスト国王と同じように考助達に『王の褒章』に代わる物を渡して終わり、となるはずだったのですが・・・・・・。
もう一度言います。どうしてこうなった?w

♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦
おまけ

貴「何をしている! 追いかけんか!」
隊「追いかけていいんですか?」
貴「なんだと?」
隊「いえ。ここでさらに追いかけたら下手をしたら国際問題になるのでは?」
貴「・・・・・・」
隊「相手はタウゼン国外でも堂々と使える『王の褒章』を持っていますからね。
  あの冒険者もそういう事を言っていたんだと思いますよ?」
貴「・・・・・・」

♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦
本文にいれるのも馬鹿馬鹿しいので、おまけにしましたw

今話でセウリの森編は終わりになります。
次からいよいよガゼンランの塔です。
でも、塔の攻略話を書いたらあっという間に終わってしまうんですよね。
別に終わってもいいのですがw
どうしようかな~。
もっとも、皆様がこの話を読んでいる頃には、既に何話か予約で上がっていると思いますがw
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