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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 セウリの森編

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(17)締め

 セウリの森のエルフ達は、目の前で繰り広げられている光景に困惑しきりだった。
 彼らは、アマミヤの里との転移門の設置の話し合いで、シオマラの屋敷を訪ねていた。
 ちなみに、アマミヤの里とは南の塔にあるエルフの里の事である。
 これまでは単純にエルフの里と呼んでいたのだが、それだとセウリの里との区別がつきづらくなるためそう呼ぶようにしたのだ。
 正確にはエルフの里があるのは、アマミヤの塔ではなく南の塔なのだが、既にセントラル大陸では大陸内にある全ての塔を指してアマミヤの塔あるいはアマミヤの塔群と呼ばれている。
 そこから引用すれば、アマミヤの里でも間違いはないのである。

 それはともかくとして、シオマラの屋敷を訪ねていたエルフ達が見て戸惑っている光景とは、コレットが考助に甘えている様子だ。
 既に慣れてしまったシオマラとロマナは、諦め顔で見ている。
 なるべく目立たないようにと気配を殺すように過ごしていたコレットが、こんな顔になること自体が彼らにとっては信じられないのだ。
 それどころか、異性に対して積極的にアプローチをしている。
 戸惑うなと言う方が無理な光景だった。
「なあ、コレット。頼むから話し合いの最中くらいは、抑えてくれないか?」
 集まったエルフ達の一人が、そんなことを言いだした。
 他の者達も口には出してこなかったが、同じような表情になっていた。
 気持ちは同じという事なのだろう。
 だが、そう言われた本人はというと。
「なぜ?」
 考助の首に縋りつきながら短く聞いてきた。
 そのあまりにもあまりな返事に、エルフ達はなぜか返答することが出来なかった。

 それを隙と見たコレットが、ここぞとばかりに撃して来た。
「そもそも、昔っから閉じこもっていただけのこの里が、転移門と言う特殊な状況とはいえ、外との道を開くことになった原因をお忘れですか?」
「ぐっ」
 コレットの第一撃に、集まったエルフ達は口ごもる。
「そうです。そもそも『真のふれあいとは、身体ではなく心にある』とか気取ったことを言っていますが、結局のところ臆病なだけですよね?」
「ぐぐっ」
「そして周りの視線を気にしてばかりになるから、家に入っても肝心の行為が出来なくなるんですよ」
「うぐぐっ」
「だから、上に立つ私が率先してこうして見せつけているんです」
 器用にも考助に縋りつきながら、胸を張ってそう言ったコレットに、エルフ達は撃沈することになった。
 何故か、シオマラとロマナもコレットから視線を外している。
 どうやらコレットが言ったことに思い当りがあるらしい。
 勿論、そんな単純な理由だけでエルフ達の出生率が落ちているわけではない。
 だが、コレットの見せている態度とその勢いに押されてしまったのである。

 そんな様子を苦笑しながら見ていた考助だったが、ペチリとコレットの額を叩いた。
「見せつけるのはいいけれど、いい加減話を進めたらどう?」
 見せつけるのも駄目です、と言いたげなエルフ達を無視して、考助は話を続けた。
「僕らは、明日にはこの里を発つんだから、それまでに大まかな話を決めるんじゃなかったの?」
 そんな考助に、コレットは不満げな表情になった。
「むー。もっとのんびりして行けばいいじゃない」
 既にこの里とは関係ないと公言しているにも関わらず、コレットはここがまるで自分の家のように言い放った。
 だが、<活霊の儀>において、精霊神を降神したコレットに強く言えるような者は、この里には居なかった。
 唯一対抗できる存在は、同じ世界樹の巫女であるシオマラくらいだが、そのシオマラも考助がここに滞在している分には何の問題もない。
 考助達のエルフの里の滞在がずるずると伸びた理由には、シオマラの歓待もあるのだった。
 そんなコレットに、考助は首を左右に振った。
「この里に来てもう一週間がたつからね。今日、門を設置したらいい加減、旅に出るよ」
 セウリの里とアマミヤの里を転移門でつなぐことが決まってから、色々とバタバタとしてきたがそれも大分落ち着いてきた。
 後の実務的なことは、里の者同士で話して行けばいいと考助は考えているのだ。
 そのためにも、転移門だけは設置して行かなければならない。
 それさえ終われば、自分達は旅立つと宣言しているのだった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 結局、その日のうちに転移門が設置されることになり、翌日には考助達は旅を再開をすることになった。
 里から街道までは、来た時と同じように里のエルフ達に案内してもらう事になっている。
 既に考助が現人神であることは里の者達に知られているので、見送りの人数はそれなりの数になっている。
 ほとんどが今まで里をつなぐことについて話をしてきた代表者達だった。
 何処となく考助が旅立つことについて、安心したような表情を見せているのだが気のせいではないだろう。
 彼らの視線の多くは、不満たらたらの表情を見せているコレットをチラチラと見ていた。
 要するに、考助がどうこうというわけではなく、コレットが甘々な表情を見せ無くなることに安心しているのだ。

 何とも不思議な見送りだなと、考助は内心で苦笑していた。
 そんな思いは表には出さず、考助はコレットへと視線を向けた。
「じゃあ、そろそろ行くから、後は任せたよ」
「はい~」
 不満顔になりながらも頷くコレットの頭に、考助はポンと手のひらを乗せた。
「そんなに心配だったら、シルヴィアあたりでも呼ぼうか?」
 その考助の言葉を聞いたコレットは、すぐにいつもの真面目(?)な顔に戻った。
「問題ないわよ」
「そうか。じゃあ行ってくる」
「はいはい~。気を付けてね」
「ああ」
 一瞬で表情を変えたコレットに、唖然とした表情を見せるエルフ達を余所に、考助達は案内役のエルフ達に先導されて里を去って行った。

 考助達を見送ったシオマラは、いきなり真面目モードになったコレットに首を傾げながら聞いた。
「シルヴィアというのは、どなたですか?」
「私達の仲間で、私と同じようにコウスケ様のお相手の一人」
 考助に、まだ他にも相手の女性がいたことには特に不思議に思わなかったシオマラだったが、その説明では先ほどの態度の変化が分からずに相変わらず首を傾げている。
「そのシルヴィアさんを呼ばれると困ることでもあるの?」
「呼ばれて困るのは、私じゃなくてシルヴィアよ。シルヴィアは、今とても忙しいの」
 子供たちが成長してきているために、いや、成長してきているからこそ今のシルヴィアは、コレットとは比べ物にならないくらい忙しくしている。
 とてもではないが、コレットの仕事の補佐のために、一々この里まで来ている時間はない。
 だが、敢えて考助がシルヴィアを引き合いに出したのは、もし本当に考助がシルヴィアに要請すれば、間違いなく彼女はコレットの補佐のために里まで来るだろう。
 自分のわがままのためにシルヴィアにそんな迷惑を掛けたくないコレットが、見事に考助の術中にはまったといえる。

 話を聞いて事情を察したシオマラが、一度コレットを見てから頷いた。
「なるほど。ずっと押されっぱなしなのかと思っていましたが、締める所は締められるのですね」
 誰の事かは、敢えて言う必要はないだろう。
「当たり前じゃない。そうじゃなければ、コウヒとミツキの二人を連れて、旅なんかできないわよ」
 何とも説得力のあるコレットの言葉に、シオマラは大いに納得して頷くのであった。
考助の意外な(?)一面で締めてみましたw

セウリの里を出た考助達ですが、セウリの森編はもう一話だけ続いて最後の話となります。
馬車を取りに行かねば!
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