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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 セウリの森編

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(15)ユッタの大変革

 エルネスト国王への通信を終わらせた考助は、通信具をコウヒへと渡しながら言った。
「済まないけれど、あの隊長さんに手紙を渡して来てくれるかな?」
「かしこまりました」
 考助の意図を察したコウヒもすぐさま頷いた。
「ユッタ」
「何~?」
 考助が呼び掛けると、すぐにユッタが出て来た。
 名前を付けたのでもしかして、と思っていたのだが、やはりエセナと同じような状態になっているようだった。
「これからコウヒが転移を使うけれど、いいよね?」
「いいわよ」
「有難う。それじゃあ、今から手紙を書くから待ってて」
 ユッタの同意を得た考助は、すぐに手紙を書きはじめた。
 考助のやることを黙って見ていた塔組に対して、セウリの里組はただ呆然と見守っているのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「よし。これでお願いね」
「はい。では、行ってきます」
 考助から手紙を渡されたコウヒが頷き、すぐに姿を消した。
 ユッタの許可をもらっているので、特に結界に阻まれることなく転移の魔法を使う事が出来たのだ。
 コウヒが向かったのは、考助達がセウリの森に入る前に立ち寄った町だ。
 先日会った軍の部隊が、数日その町に泊まると聞いていたので、その隊の隊長に今回の事情を書いた手紙を渡しに行ったのだ。
 あの隊自体が今回の件に噛んでいる可能性もあるが、考助自身はその可能性は無いと考えている。
 それは単に考助の勘なのだが、ここ最近はこうした勘は外れなくなっている。
 それが現人神として付いた能力なのか、それとも元々そうした素質があったのかはまた別の話である。

 突然のタウゼン王国の国王との通信から始まった一連の流れに付いて行けないロマナやシオマラに、コレットがフォローをしていた。
 そのコレットから説明を受けて、余りにフットワークの軽い考助にロマナやシオマラは頭を抱えていた。
 それを見たコレットが一言。
「この程度で頭を抱えていたら、いつものコウスケには付いて行けないわよ?」
 からかうように言ったコレットの口調に、ロマナは目を見張り、シオマラは首を振った。
「残念ですが、この件が済めばあの方は里を出ていくのですよね?」
 恐らく次に関わるのはだいぶ先の話よ、と続けようとしたシオマラだったが、今度はコレットが首を振った。
「それはちょっと甘いと思うけれど?」
「どういう事?」
「だって、もうコウスケはユッタ様と縁を結んでしまったもの。このまま放置して、ハイさよなら、なんてことはしないわよ」
 コレットの言葉に、シオマラとロマナが顔を引き攣らせた。

「ついでに言えば、そのために今この里に起きている厄介ごとを片づけているんだし」
 そんな分析をしたコレットに、離れたところで手紙を書いていた考助が戻ってきた。
「コレット、正解!」
「そうよね。貴方はそう言う人だもの」
 コレットはそんなことを言ってから、考助の首に縋りついた。
「どうせだから、この里の問題の根本も解決しようとしているんでしょう?」
 思いっきり甘えた態度のコレットに、考助は苦笑して、ロマナが今まで以上に目を見開いた。
 シオマラは、既にお腹いっぱいという顔になっている。

 コレットに縋りつかれたまま、考助は首を傾げた。
「そのつもりだったけど、余計かな?」
「ん~。いいんじゃない? どうせ、この里はユッタ様のいう事には絶対従うだろうし」
「それじゃあ意味が無いと思うんだけど?」
「コウスケ、この里のエルフ達をあっちのエルフと比べたらだめよ。何しろ世界樹がいまだに現役なんだから」
 コレットの言葉に、考助は頷いた。
 そもそもこの里の事は、考助よりもコレットの方が遥かに詳しいのだ。
「いや、何も移住をさせるつもりだったわけじゃないんだけれどね」
「あら。じゃあ、どうするつもりだったの?」
「単に門を置くだけでも変わるんじゃないかと」
 考助の言葉に、コレットはポンと両手を合わせて大きく頷いた。
「なるほど。それは良いかもしれないわね」

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 何やら一方の当事者を抜かして、とんでもないことが進みつつある気配を察したシオマラが、慌てて二人の会話に入って来た。
 悲しいことに、この数日で考助とそれに同調するコレットの組み合わせの危険さがわかって来ている。
 何しろ、儀式をお願いすれば、世界三大神の一柱を降神してしまうのだから。
「ちょ、ちょっと待ちなさい、コレット。何かとんでもないことを話してない?」
 シオマラの何となく今までの落ち着いた態度から崩れてきていた。
 そのシオマラに対して、考助は首を傾げた。
「とんでもないかなあ」
「とんでもないわね」
 コレットは、あっさりとそう断言した。

 説明してほしいという表情になっているシオマラとロマナに、コレットが塔にある世界樹とセウリの里を転移門で接続しようとしていることを説明する。
「その、なんですか? 要するに、塔の里とこちらの里を自由に行き来できるようにする、と?」
 呆然とした表情になるロマナに、考助が頷く。
「いきなり里を解放して、ヒューマンと色々とやるよりもましでしょう? あちらにいるのもエルフだけですし」
 そう言った考助に、コレットが続いた。
「それに、出生率も改善するかもしれないし」
「何?!」
 コレットの言葉に食いついてきたのは、ずっと呆然としていたロマナだった。
 出生率の問題は、里の代表としてはどうしても見過ごすことが出来ない問題なのだ。
「コウスケ、いえ、現人神のおかげで、あちらの里の出生率は今とても高いのですよ」
 肩を竦めてそう説明したコレットに、考助が慌てて止めた。
「待って。僕は出生率まで操れないからね」
「あら。たとえ間接的でも、貴方のおかげで増えたのは間違いないでしょう?」
 そう言ってじゃれ合う考助とコレットに、ロマナが聞いてきた。
「詳しく話を聞いても良いでしょうか?」
 その顔は真剣そのもので、シオマラも口を挟むことが出来なかったのである。

 結局コレットが、塔の里の現状を細かくロマナに説明することになった。
 その話を聞いたロマナは深く唸った後、考助へと頭を下げた。
「申し訳ありません。事が事なので、門に関しては今すぐには許可は出せませんが、数日待ってもらえないでしょうか?」
「それはいいけど、大丈夫なの?」
 この場合の大丈夫というのは、反対されないのか、と言う意味だ。
 考助が、ユッタを使ってまで若干強引に話を進めようとしたのは、この里が閉鎖的すぎて反対する者が多いと思ったからだ。
 だが、考助の疑問に、ロマナは深く頷いた。
「恐らく、大丈夫です。・・・・・・正直言って、この里の出生率の問題は、それほど深刻なのです。皆が藁にもすがる思いになっているのは確かです」
 この状態で、改善する可能性があるという話が舞い込めば、賛成に回る可能性が高いということだ。
「それに、反対されたらされたで、今度こそ強引に門を設置してしまえばいい事ですし」
 最後にロマナは、悪い笑みを浮かべてそう言った。

 その笑顔を見て同じような表情になった考助とコレットを一歩引いた場所から見ていたシオマラは、後にこう語ることになる。
「ユッタの大変革を計画した時の三人は、間違いなく悪魔のような笑みを浮かべていた」

 こうして、塔にある里とセウリの森の里が、転移門で繋がれるという大変革が行われることになるのであった。
「ユッタの大変革」の中身でした。
塔とセウリの森を転移門でつないでしまえ、という事ですねw
今まで完全に孤立して単独でやって来たセウリの里が、転移門とはいえ外部と繋がることになるので、「大変革」と呼ばれるようになるわけでした。
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