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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 セウリの森編

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(4)招き

 案内役のエルフは、とある扉の前で止まった。
「シオマラ様。お連れしました」
「お通しして」
 部屋の奥から女性の声が聞こえて来たのを確認した後、案内役は扉を開けた。
「私が案内できるのはここまでです。奥である方が貴方達をお待ちしております」
 そう言った後で、右手で部屋に入るように示した。
 考助達は、それを見て部屋の中に入るのであった。

 部屋の奥に行くと、巫女服を着た一人の女性エルフが待っていた。
 ただ、その尖った耳は明らかにエルフなのだが、エルフと言われてどこか違和感がある。
 それを感じて内心で首を傾げる考助に、その女性が感心したような表情になった。
「流石ですね。普通はエルフとは区別がつかないのですが・・・・・・。私はハイエルフのシオマラと申します」
 顔には出していないつもりだったのだが、考助の考えを見通したらしい。
 シオマラがそんなことを言いつつ、自分の名前を名乗った。
「・・・・・・失礼しました。僕がコウで・・・・・・」
 考助が名前を名乗ろうとした瞬間、シオマラはそれを右手で遮った。
「申し訳ありません。貴方の本名は、既にお聞きしております。そちらのお二方も」

 その言葉に対して考助が疑問を口にする前に、エセナが姿を現した。
「兄様、ごめんなさい。私がお姉さまに話しました」
「お姉さま?」
 考助が一度エセナを見た後シオマラを見たが、エセナは首を左右に振った。
 考助は、それでエセナが言う「お姉さま」が誰であるかを察した。
 エルフの里に来て、以前シェリルが着ていた巫女服と似たような服を着ているのだ。
 推測は簡単に出来る。
「・・・・・・なるほどね。そういう事なら、気にしなくていいよ」
 落ち込むエセナをなだめながら、考助がそう言った。
 どうにもこの森に近づいてから、エセナを宥める回数が増えている気がする考助であった。

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 エセナが落ち込みから回復するのを確認してから、考助はシオマラに向かい直した。
「申し訳ありませんでした」
 放置していたことに頭を下げる考助に、シオマラはニコニコと笑いながら手を振った。
「いえ。いいんですよ。お二人が、とても仲が良いことを知れてよかったです」
「いや、まあ、そうですか」
 ここで否定するのもおかしいと思い直したため、考助の返事は微妙になってしまった。
 それを誤魔化すために、いささか早口になって考助はさらに続けた。
「それで、何かご用があるのでしょうか?」
「いえ。用があるのは私ではなく、別の者です」
 シオマラはあえて口を濁してそう答えたが、考助にもそれが誰かはすぐに分かった。
 エセナの言う「お姉さま」の事だろう。
「そうですか。それは、ここで会うのですか?」
 首を傾げて言う考助に、シオマラは首を振って答えた。
「いくら私が巫女とはいえ、あの方が本体から離れて出てくることなどできませんよ」
「え?!」
 思ってもみなかったシオマラの言葉に、考助は驚きの声を上げた。
 今までエセナは当たり前のように考助の傍に出てきたりしている。
 当然他の世界樹の妖精も同じようなことが出来る思い込んでいたのだ。
 エセナを見ながら驚いている考助を見て、シオマラは苦笑していた。
「貴方とそちらのお方は、特別な絆で結ばれているようです。詳しくは私にもわかりませんが。そのおかげでしょうね」
 シオマラもエセナがどういった存在であるかは、きちんと理解しているようだった。
 その上で、考助とエセナの関係が特別な物であると話してくれた。
 今更ながらに知ったその事実に、考助はため息を吐いた。
「何とも・・・・・・今更そんなことを知ることになるとは思ってもいませんでしたよ」
「自分自身のことは分かりにくいのでしょうね」
 自分自身に呆れている考助に対して、シオマラは笑いながらそう言った。
「さて、いつまでもここにいると、あの方がやきもきしてしまうかもしれません。そろそろ移動しましょうか」
 シオマラはそう言って、考助達が入ってきたドアとは別の入口を差した。
「あ、はい。わかりました。・・・・・・ナナもいいんですよね?」
「勿論です。貴方の眷属を拒否する理由はありません」
 その言葉で、しっかりとナナの事まで把握されていると理解できた考助は、何も言わずに頷くのであった。

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 別のドアはすぐ外に繋がっていた。
 靴は日本式のように、脱いで上がるタイプの建物だったのだが、きちんと外来用の履物が用意されていた。
 その道は神社の境内のようになっていて、しっかりと整備されている。
 この道は、シオマラ一人で管理しているそうだが、基本的には精霊たちの働きもあって寂れたり(?)することは無いらしい。
 建物を出てから十分ほど進むと、考助が予想した通りの光景が目の前に現れた。
 エセナの本体である世界樹よりもさらに大きな巨木が出て来たのだ。
 勿論、この目の前にある巨木もまた世界樹の一本だ。
 以前、考助がこの世界に来たばかりの頃に見た別のエルフの里と同じように、結界か何かで自分の姿を見えないように隠しているのだろう。
 ただ、今考助の目の前にあるその巨木は、あの時に見た物よりも遥かにその存在感を示していた。
 こうして見比べてみて初めて分かったことだが、あの時に見た世界樹は明らかに存在感を失っていたのだろう。

 考助はしばらくの間、目の前にある世界樹とその周りを飛び回る精霊たちの姿に圧倒されていた。
 エセナの本体も何度も目にしているが、目の前の巨木と比べると確かにエセナはまだ若木だということがわかる。
 まさしく世界を支えている樹木と言って良い威容だ。
 あるいは、考助自身が神となっているからこそ感じ取れている物もあるのかもしれない。
 それが何かは本人も把握はしていないのだが。
「・・・・・・コウスケ様?」
 佇んだままの考助に、シオマラが首を傾げつつ声を掛けて来た。
 名前を呼ばれた考助は、ハッとした表情になった。
「いえ。済みません。これが成長した世界樹の姿かと圧倒されていました」
 慌ててそう言った考助に、シオマラがフフフとほほ笑みつつ、エセナを見た。
「いずれ其方の方も、このように成長するのでしょう。楽しみですね」
「ええ。そうですね」
 考助が知るエセナも当初から比べれば、格段に成長している。
 だが、今目の前にあるような姿に成長することを考えると、シオマラの言う通り楽しみになって来た。

 そんな会話をしながらシオマラと共に歩みを進めていく。
 巨木が目の前に見えているにもかかわらず、その麓に着くまでには十分ほどの時間を要した。
 林に囲まれた参道を進むように足を動かしていくと、やがて巨木の麓が見えてきた。
 その根元は、その一本一本が周囲にある木と同じような太さの根が多数見えている。
 周囲にある木々とて、年数で言えばかなりの年数が経っていると思われるほどの樹なのだから、その大きさが途方もない物であることがわかる。
 そんな根の間にぽかりと空いた空間があった。
 その空間に、考助達をここに呼び寄せた張本人が佇んでいた。
 近づいてみてみると、ただの偶然なのかあるいは必然なのか、エセナとよく似た顔立ちをしていることがわかる。
 シオマラが来ている巫女服と似たような服を着ているその女性は、まさしく考助達の目の前にそびえたつ世界樹の妖精本人なのであった。
考助がこの世界で見る三本目の世界樹の登場です。
この世界樹は、ドリーの時と違って、きちんと現役で(?)世界樹の役目をはたしている存在になります。
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