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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 セウリの森編

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(3)結界とエルフの集落

 村を離れて森の中に入ってから二日がたっていた。
 エセナの指示に従って動いてはいるが、既にどこに向かっているのか考助には分かっていなかった。
 コウヒやミツキは、どの方向に村があるかわかっているようだが、考助は既に村の位置すら分からなくなっている。
「兄様、大丈夫?」
 考助の横をぴったりと付いて来ながら、エセナが心配そうな表情で見て来た。
「ああ、体力的には大丈夫だよ? どこに向かっているか分からないから不安なだけで」
「・・・・・・ごめんなさい」
 考助の言葉に、エセナが沈んだ表情で俯いた。
 実はエセナもはっきりとした理由は分かっていないそうなのだが、何かが待っていると感じているとのことだった。
 もう少し近づけばわかるかもと言っていたのだが、一向に分からないと焦りも見せていた。

 俯くエセナに、考助は慌てて両手を振った。
「いやいや。エセナは何も悪くないから。こんなことで不安になる僕の方が駄目なんだよ」
 自分で言ってて悲しくなってきた考助だったが、概ね間違ってはいない。
 現人神であるにもかかわらず、森林の中をうろついているだけで不安になるのはどうなのか、と自分でも思っているのだ。
 どうにもこの辺の感覚は、まだ以前の物を引きずったままでいるようだった。
 現人神が、自分の足だけで森の中を移動しているのはどうなんだ、という話もあるのだが、そこはあえて無視をしている。

 俯くエセナを何とかなだめようとする考助だったが、別のところから助け舟が入った。
 少し前を歩いていたミツキだ。
「エセナ、自分を責めるのは止めなさい。貴方の力不足だけが原因じゃないみたいだから」
「何か見つけたの?」
 進む先を見ながらそう言ったミツキに、考助は首を傾げた。
 ミツキの言い方は、何か感じている気がしたのだ。
「ええ。といっても、当たり前といえば当たり前なのかもしれないわね。・・・・・・少し前から結界の中に入っているみたいだわ」
「結界?!」
 全く気付いていなかった考助が、驚いた表情になった。
 流石に魔道具の製作を通して、魔法的な分野に関しては自信が付いていたのだが、全然役にたっていなかった。

 考助の表情を見て、コウヒが周囲を見渡しながら補足して来た。
「この辺りにあるのは、結界と言っても考助様のように魔道具や魔法陣で創る物ではありません。木や岩、川の流れなど、自然に存在する物を使って溶け込ませているのです」
「勿論、魔法的な物もそれに含まれているけれどね」
 コウヒの説明に続いて、ミツキもさらにつけ加えて来た。
 要するに、魔法陣や魔道具で作られる結界と違って、この辺り一帯で自然の物を配置することにより迷いやすくしたり目標を見失わせたりするようにしているのだ。
 勿論それだけではなく、魔法的な結界も作られているのでより分かりにくくなっている。
 自然の配置と魔法的な物で互いに補い合い、より高度な結界が張られているというわけだ。
「この種の結界の場合、自然由来の物が年月によってより強固になるので、何があるのかエセナが気づきにくくなっているのも当然です」
「エセナもこの辺りの木々に比べたら、生まれたばかりだからね。いくら前の世界樹の知識があると言っても、こればっかりはね」
 コウヒの言葉にさらにフォローを加えつつ、ミツキがエセナの頭をポンポンとたたきながら慰めていた。
「こんなことを偉そうに言っている私達も、結界があることは分かっていても、全体がどんな物かは分からないからね」
 ミツキがさらに続けた言葉に、考助が驚いた。
「え?! 二人も全容は分かってないの?」
 それは流石に、考助の予想の範囲外だった。
 二人の事だから、完全に分かった上で話しているのかと思っていたのだ。

 そんな考助に、ミツキが申し訳なさそうな表情になって答えた。
「私がわかっているのは、この辺りのことくらいです。下手をすれば、この森全体が結界の全部という事もあり得ます」
「そうよね。これだけ広大な土地に、こんなことが出来る存在なんて、一つくらいしか思い当たりが無いけれど、ね」
 ミツキがニコリと笑いながら考助を見た。
 流石にここまで言われれば、考助にもその存在が何であるかは思い当たる。
 視線をエセナに向けた考助は、元気を取り戻しているエセナの頭を再び撫でた。
「まあ、決めつけるのは止めておこうか。先に進めば答えがわかるだろうしね」
 考助の言葉に、コウヒとミツキの二人は頷いてさらに先に足を進めるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 結界の存在に気づいてから更に三時間ほど進んだ先で、ちょっとしたイベントが起きた。
 コウヒやミツキがいるので、いきなり周囲を固められたわけではなく、数人のエルフに丁重に出迎えられたのだ。
 最初から敵意が無いのがわかっていたのか、ナナも反応していなかった。
 彼らの存在に気付いてはいたのだろうが、敢えて無視していたのだ。
 それはともかく、考助達を出迎えに来たエルフ達は、いきなり頭を下げてこう言って来た。
「コウスケ様御一行で間違いないでしょうか?」
 彼らが現れてから何となく予感があった考助は、隠すことなく頷いた。
「ええ。間違っていませんよ」
 考助がそう言うと、エルフ達の間にあった若干ピリピリとした空気が弱まった。
 彼らもエルフ狩りがこの森に出没している事は、知っているのだろう。
 多少固い空気が弱まったと言っても、まだ完全に警戒は解いていないように見えた。
 彼らがそうした態度をとる理由も理解している考助は、特に気にしていない風を装うことにした。

 そんな考助の思惑を見抜いているのかいないのか、エルフの一人がさらに続けた。
「恐らく目的地が同じだと思うのだが、一緒に来てもらっていいだろうか。我々の里で、貴方達をお呼びしている方がいる」
「ええ。わかりました」
 そのエルフの言葉に、考助は頷いた。
 それを見たエルフ達が、今来た道を戻り始めた。
 それは考助達が向かおうとしていた先と同じ方向だった。
 どうやら、この先にエルフ達の里があるらしい。
 ちなみに、エルフ達が近づいてきていると分かった時点で、エセナは姿を消していた。
 彼女の中でどういう基準があるのかは分からないが、姿を見せる相手を決めているらしい。
 今のところは、塔の管理者メンバーだけに姿を見せている感じだった。
 後は、塔のエルフの里のごく一部の者達だ。

 エルフ達に前後を挟まれる形で、考助達は移動していた。
 前だけにいないのは、やはり考助達を警戒してのことだろう。
 考助達もコウヒが前、ミツキが後ろを歩いているのだから、お互い様というべきだろうが。
 そんな裏側のやり取りはともかくとして、エルフ達と出会った場所から小一時間ほども歩くと、集落らしきものが見えて来た。
 塔にあるエルフの集落と、どことなく似た感じがするのは、やはり森に囲まれた生活をするエルフだからこそなのだろう。
 そんな考助の感想を余所に、一行は集落の入口へと着いた。
 最初から予定されていたのか、入口で揉めることもなくそのまま集落に入ることが出来た。

 里へと入った考助達は、そのまま案内役のエルフ達に一つの建物の前まで連れて行かれた。
 ここまで通ってみた中では、一番大きな建物だった。
「こちらで、とある方がお待ちです」
 案内役の一人がそう言って、建物についている呼び鈴のような物を鳴らす。
 すると、中から声が聞こえて来て、案内役のエルフがそのまま考助達を連れて来た事を伝えた。
 ここでも考助達のことはしっかりと伝わっていたのか、すんなりと建物の中へと入ることができた。
 さらに、ここで案内役のエルフ達とはお別れになる。
 案内役のエルフ達は、一瞬ためらうような表情を見せたが、出迎えた者に遮られてそれ以上は何も言ってこなかったのだ。
 そして、いよいよ考助達に迎えを出した者と対面を果たすことになるのであった。
エルフの里に入りました。
ここまでくれば、エセナが何を感じたのか分かるでしょうか。
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