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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第1章 タウゼン王国編

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(18)面会(後編)

 国王との面会が続いているが、本来であれば商隊のリーダーだったレネーが、代表して国王とのやり取りをするべきなのだが、既に考助が代表のような形になっている。
 レネー自身が、考助にお任せする様子を見せている上に、国王も考助を相手に話を進めているためだ。
 特に考助もそれに対してどうこう言うつもりはない。
「まあ、討伐の件は良いとして、本題は輸送の最中に起こったことについてだ」
 国王がそう言った瞬間、傍に控えていた者達の何人かが反応したのが分かった。
 どういう立場で反応したのかは分からないが、ミツキにははっきりわかったようで、心話で教えてくれた。
 ただ、考助はそれには気づかなかったふりをして、首を傾げた。
「何かございましたか?」
「・・・・・・ふむ。あれだけのことが起こって、そんなことを言うのか?」
「我々冒険者というのは、過程よりも結果が求められる仕事だと理解しております」
 さらりと答えた考助に、エルネスト国王はわずかに口元の両端を上げた。
 考助の言葉は、途中で起こったことなどどうでもいいと言っているのに等しい。
 事実、冒険者というのは依頼の失敗・成功だけの成果を求められる仕事だ。
 多少乱暴な言い方ではあるが、考助の言い分は間違っていないのだ。
 ついでに、今回の件については、自分たちはきっちりと仕事をしたのだからその他の事まで押し付けてくるなと言っているのだ。
 具体的に言えば、自分達を勢力争いに巻き込むな、ということになる。

「確かにその通りであろうな。だが、時に其方らの意見が必要な場合もある」
「意見、ですか。我々の意見を全く無視して、簡単に襲撃者を解放するような組織に、ですか?」
 直接的な考助の言葉に、周囲の者達が唖然とした表情になった。
 それには、レネー達も含まれている。
 表情を変えていないのは、言った本人である考助、コウヒとミツキだけだった。
 今の考助の言葉は、まんまと犯罪者を釈放してしまうような組織なのに、何のために意見を聞くのか、と言っているのに等しい。
 皮肉を通り越して、国王に対して直接批判しているのと同じことになる。

 流石のエルネスト国王もその言葉には唖然とした表情になっていた。
 そんな中、一人の男が口を挟んできた。
 本来であれば国王の言葉に口を挟むなど不敬に当たる可能性があるのだが、言葉を止めた国王に丁度いいタイミングだと判断したのだろう。
「貴様、先ほどから聞いていれば、無礼がすぎるぞ!!」
「無礼、ですか」
 考助は、一つため息を吐いてからそちらの方を見た。
「どこが無礼なのでしょうか?」
「なっ、なんだと?!」
「我々の意見は既に、あの町の警邏の者達に伝えてあります。それを判断したうえで釈放をされたのでしょう? つまりはそれが国としての判断なのではないですか? 国家としての判断がされていることに、さらに我々が口出しできるはずがないでしょう」
 考助の最後の言葉は、エルネスト国王に向けて言っていた。
 考助としては、国として判断したこととは逆になるようなことをこの場で言って良いのかと聞いているのだ。
 無礼だと噛みついてきたのは、考助にしてみれば全くの的外れな意見なのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助のその視線を受けながら、エルネスト国王は内心で驚いていた。
 ここまで見事に話を組み立ててくる相手だとは思っていなかったのである。
 はっきり言えば、心のどこかで冒険者風情と考えていたのだ。
 だが、その考えは今までの話で吹き飛んでしまった。
 下手をすれば、良いように話の流れを持って行かれてしまう。
 そう考えたエルネスト国王は、すぐに思考を切り替えた。
 どこか遊びの気分で行っていた面会だが、国の重要な話し合いに立ち会っている気持ちに変えた。

「・・・・・・確かに、其方の言う通りだ」
「なっ?!」
「お、王!」
 周囲がざわめくのを軽く右手を上げて抑えながら、エルネスト国王は視線だけは考助から離さないようにしていた。
 考助もまた正面からその視線を受け止めていた。
 受け止めると言っても、強い視線で見返すわけでもなく、ただ普通に相対しているだけだ。
 ただ、二十年以上王者としての地位に立ち続けた国王の視線を真正面から受け止められるものなど、ごく一握りの者達だけだ。
 ある意味で、威圧ともなり得るその視線に耐えられるだけの者は、同じ立場に立っているような者達だけである。
 だが、考助はその視線をごく自然体で受け止めていた。

 先程までとはまるで違った雰囲気に、他の者達は静まり返っていた。
 この場に居るのは、それなりに空気を読むことに長けた者達である。
 考助とエルネスト国王の間にある緊張感に気づいているのだ。
「ふむ。其方が持っている懸念はもっともだ。では、この場において我が宣言しよう。今この場で其方が発した言葉によって、国から責任を追及されることは無い」
 限定的ではあるが、これで考助が何を言おうと罪に問われることはないという言葉に、周囲の者達は目を剥いていた。
 そのようなことが許されることなど、例え非公式の場でも滅多にあることではない。
 それこそ、相手が国王と対等と認めたような時か、あるいは、今回のような非常にごくまれに発生する特別な時だけだ。
「王の格別のご配慮に、感謝申し上げます」
 その雰囲気を感じ取ったのか、考助はそう言ってゆっくりと頭を下げるのであった。

 その後は、ただ淡々と考助と国王の話が続いた。
 話の内容としては、考助側から見た移動中の出来事を客観的に話した。
 その時に感じた考助の考えなどは排除している。
 個人的な意見などこういう場で言っても意味がないと分かっているからだ。
 後はそれを聞いてどう考えるかは国王次第、という事になる。
 それこそ自分が口を挟むことではないと、考助は考えていた。

「・・・・・・ふむ。其方の意見は、大いに参考になった。改めて礼を言おう」
「いえ。お役に立てたのでしたら、幸いです」
 相変わらず緊張感を保ったまま、両者の会話は続いている。
 最早二人の会話を邪魔しようとする者は誰もいなかった。
「うむ。ところで、部下の手前聞いてみるが、其方吾の下で働かないか?」
「折角のお誘いですが・・・・・・」
「そうであろうな」
 周囲の者にとっては重要な話が、二人の間でさらりと話題に出され止める間もなくあっさりと終ってしまった。
 国王が考助を誘ったのは本心からだ。
 とはいえ、それを考助が受けるとも考えていなかった。
 部下になるように言ったのは、それを求めている者がいることを理解してのことだ。
 あわよくば、という考えもなくは無かったが、十中八九は断られると分かったうえでの言葉だった。
 同時に、考助が断ったのを見て安堵の表情を浮かべている者もしっかりとチェックしている。
 エルネスト国王にとっては、考助との話も重要だが部下たちの反応もまた重要なのだ。
 そのためにこの場を設けたと言ってもいい。
 それを考えれば、この話し合いで上々の結果が出たと言ってもいいだろう。

 口を挟むことも出来ずに、淡々と進行していく話し合いに王国側の者達もレネー達もただただ両者の話し合いを見守るだけだった。
 特に国王の雰囲気が変わってからは、両者がどういった思考を挟んで会話をしていたのか、しっかりと付いてこれた者はいなかった。
 それほどまでに高い次元でのやり取りをしていたのだが、それはどこか傍観者のような立場で見ていたからだ。
 ようやく終わりが見えたこの面会だったが、最後の最後に罠が待っていたとは、当人を除いて誰も予期していなかったのであった。
面会というタイトルは終わりますが、最後の報酬の話だけもう少し続きます。

なろうコンのサイトで、応援メッセージが出されたようです。
早速読ませていただきました。
今月末まで期間があるようなので、メッセージお待ちしております。
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